空中写真(読み)くうちゅうしゃしん(英語表記)aerial photograph

精選版 日本国語大辞典 「空中写真」の意味・読み・例文・類語

くうちゅう‐しゃしん【空中写真】

〘名〙 飛行中の航空機から地上を撮影した写真。航空写真
作戦要務令(1939)二「而して此等の諸情報は空中写真等と共に適時之を攻撃部隊に交付するを要す」

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デジタル大辞泉 「空中写真」の意味・読み・例文・類語

くうちゅう‐しゃしん【空中写真】

航空写真

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改訂新版 世界大百科事典 「空中写真」の意味・わかりやすい解説

空中写真 (くうちゅうしゃしん)
aerial photograph

空中の1点から地表あるいはその他の物体を撮影した写真。撮影に航空機を用いたものは航空写真と呼ばれることも多い。上方からの撮影でも,山頂などの,地上から写したものは地上写真と呼ばれる。

空中写真は撮影角度,カメラの性質,プリントの方法,感光材料の性質などにより次のように分類される。

(1)撮影角度による分類(図1) (a)斜め写真 カメラの傾斜角(レンズの軸と鉛直線のなす角)が5度以上の写真で,画面に水平線の写らない低角度斜め写真と,水平線の写る高角度斜め写真などがある。山頂から平野を俯瞰(ふかん)するのと同様であり,比較的見慣れた視角で撮影されているので一般にわかりやすい。また,1枚の画面に包含される区域も広く,迅速に撮影するのに適しているため,報道写真は,ほとんど斜め写真である。(b)垂直写真 カメラの傾斜角が5度以内の写真で,傾斜角が0.2度以内のものを,とくに鉛直写真と呼んで区別することもある。空中写真の代表であり,一定の計画のもとに組織的に撮影されているので,地図作成など測量用や写真判読に最も広く使われている。一般に,空中写真という場合には垂直写真をさす。

(2)カメラの種類による分類 (a)普通角写真 画角(レンズの中心と画面の対角線の両端のなす角度)が60度内外の普通角カメラで撮影した写真で,レンズの焦点距離21cm,1枚の写真の画面の大きさは18cm×18cmのものが多い。(b)広角写真 画角が90度内外の広角カメラで撮影した写真で,最も広く用いられており,レンズの焦点距離15cm,画面の大きさ23cm×23cmのものが多い。なお画角120度前後の超広角写真もある。

(3)プリントの方法などによる分類 (a)密着写真 フィルムから直接印画紙にプリントした写真。(b)引伸し写真 任意の倍率で引き伸ばした写真で,一般には4~5倍ぐらいまでの引伸し写真が多く用いられている。また画面の一部を引き伸ばした写真を部分引伸し写真という。(c)モザイク写真 多数の写真を接合して,広い地域を1枚の写真としてまとめたもので,集成写真ともいう。集成された画像の位置,形などの精度で,厳密集成,略集成(略モザイク)などと区別することがある。

(4)感光材料の性質による分類 (a)白黒写真 一般の白黒写真と同様に,パンクロマティックフィルムを用いた写真で,測量用,判読用に広く用いられている。(b)赤外線写真 赤外線フィルムを用いて撮影した写真で,白黒の写真であるが,水湿部,植生,遠景などに対して特殊な効果をもつので,この分野での写真判読などに使われる。(c)カラー写真 一般のカラー写真と同質のフィルムを用いて撮影したカラー写真と赤外カラーなどがある。前者は白黒写真より一般にわかりやすく,後者は森林の樹種,病虫害,活力度など特殊な目的の判読に用いられる。

空中写真は,精密な大型カメラを航空機の床に据えつけ,床にあけた窓から地表を垂直に撮影するのが一般で,ロール・フィルムの長さは60~120mくらいある。撮影は雲や影を避けて,快晴の日の10~14時くらいの時間帯を選び,一定の高度で一定方向に直線的に飛行しながらすすめる。この場合,連続する写真間のオーバーラップを60%以上,また隣接コース間のサイドラップを30%前後とるのが原則である。撮影用の航空機としては,安定性のよい,視野の広い,上昇限度および上昇速度の大きいものが選ばれ,日本ではエアロコマンダー680F,ビーチクラフト45A,セスナTU206Fなどが使われている。また低空,静止の撮影にはヘリコプターや気球が,超高空,広域の撮影にはジェット機が用いられる。

平たんで水平な土地の垂直写真は,ほぼ地表面と相似形であるが,一般には山や谷などの起伏があり,高い建物や樹木などさまざまなものがある。この場合には高い所ほど縮尺が大きく,また写真の縁辺部では高い所は外側にずれ出して写る。地図は無限遠の距離からの正射影で地表の物体の位置や形を正しく表現するのに対し,空中写真は有限の距離から,レンズを通して,中心投影で地表の物体を写し出すので,地表の物体の位置や形は,レンズの性質にもとづき一定のひずみをもって写し出されている(図2)。

 空中写真の縮尺は,地図のように厳密には決まらないが,撮影地区の平均の標高などを基準にして概略の数字で示されるのが一般である。垂直写真の場合は,カメラのレンズを中心にして,画像と地表を結ぶ線の作る三角形は相似形になるので,焦点距離と撮影高度との比が写真の縮尺となる(図1)。たとえばカメラの焦点距離が15.2cmで撮影高度が3000mであれば,写真の縮尺は約2万分の1である。また縮尺のわかっている地形図などが手もとにあり,地図上と写真上で明らかに対比し得る2地点があれば,両者の2地点の距離を比較しても写真の縮尺を求めることができる。

60%前後オーバーラップして撮影された2枚の連続写真を用いて,写真像を立体的に見ることができる。これを空中写真の実体視(立体視)と呼んでいる。肉眼で実体視する場合は,2枚の連続写真の両方に共通して写っている写真像を左右に5~6cm(自分の両眼の距離)離して,左眼では左の写真像を,右眼では右の写真像を同時に見つめれば,やがて両方の写真像が浮き上がるような感じで重なり合い,一つの立体像としてとらえることができる。肉眼で実体視するには多少の練習が必要である。これは私たちが日常の生活で左右の視線を一つの物体に注いで眺める習慣がついており,左右の視線を分けて(それぞれまっすぐにして)別々の像を眺めることに慣れていないためである。なるべく遠方をぼんやり眺めるような気持で練習すれば,早い人は1時間ぐらいで実体視できる。簡易実体鏡,反射式(または鏡式)実体鏡なども普及しており(実体鏡のことをステレオスコープともいう),これらを用いれば努力なしに左右の視線が分かれるので容易に実体視ができる。

 実体視の原理は,撮影機の飛行高度ぐらいの身長と,撮影基線長(連続する2枚の空中写真を写した撮影点間の距離)が眼基線(両眼の間の距離)に相当するような大きな顔をもつ巨人が,地表を見下ろしている状態を想像すれば理解できよう。私たちは,室内で,縮小した形でこの状態を再現しているわけである。この場合実体像(立体像)は実際より2倍くらい高さが誇張されて見えるが,これは私たちより眼基線が2倍くらい大きい状態で写真像を見ていることになるためである。高さが誇張されて見えることを過高感というが,これは地表のわずかの高低などの微地形の判読には有力な助けとなる(図3)。

空中写真は,地表および地表に展開する多くの事象に関する情報源として,広い利用分野をもつ。空中写真の利用を研究する分野は写真測量photogrammetry(広義)と呼ばれ,大別すると測量を主とする分野photogrammetry(狭義)と判読を主とする分野photointerpretationに分かれる。地形や地物(地表に分布する物)の位置,形を写真のもつ幾何学的性質を利用して明らかにしてゆくのが写真測量であり,地形や地物の性質,機能などを写真上の映像から実体視などにより判定してゆくのが写真判読であるといってもよいであろう。

 写真測量,写真判読,あるいはこの両者の組合せにより,空中写真はいろいろの利用分野をもつわけであるが,第1にあげられるのは地図の作成であろう。今日では縮尺1000分の1から2万5000分の1くらいまでの地形図はすべて写真測量によって作られている。またこれらの地形図を基図にした土地利用図,植生図,地形分類図,各種の防災地図などの作成は,その大部分を写真判読に依存している。さらにこれらの主題図ほどではないにしても,地質図,土壌図,各種の環境地図なども写真判読に依存する範囲が大きい。

 空中写真は,地図作成を伴わなくても,遺跡調査,交通量調査,災害調査,作柄や病虫害の調査などに使われ,また変わった利用としては,税務署の固定資産税のための調査などにも使われている。

 リモートセンシングと呼ばれる人工衛星などからの映像による調査も,広義の空中写真測量であるが,これはまた海象,気象,資源,環境などに関する地球の広範囲の観測に新しい利用分野を拓きつつある。

空中写真の判読には三つの段階があるといわれている。(1)私たちが空中写真やそのモザイクをみて,街の広がり,山と平地の分布,道路,河川や海岸線の形などを知ることは観察の第一歩であり,〈写真の内容をまず読みとるphotoreading〉(観察と認識)の段階である。(2)次に読みとった結果を確認し,分類する段階がある。たとえば土地の利用状況を,一定の分類基準,森林(針葉樹,広葉樹),耕地(水田,畑),集落(村落,商業地区,工業地区,住宅地区)などの区分で分類し整理してこれを地図上に示してゆこうと試みれば,これは〈写真の内容を確認し,分析,分類するphotoanalysis〉段階である。(3)さらに地形についても同様に一定の基準について分類し,両者を比較検討して,土地利用の現況の適否について,たとえば災害の危険の多い三角州地域や旧河道などに密集した住宅地区があり対策を要するなどの指摘を試みれば,これは一つの解釈であり,〈総合判断で解釈するphotointerpretation(狭義)〉段階であり,写真判読の最終目的を達成することになる(表1)。

 このように写真判読は(1)から(2)へ,さらに(3)へとすすめてゆくことになるが,場合によっては(1)だけで,あるいは(2)まででその目的を達成することもある。また(2)や(3)の段階では,現地のチェックを伴うことも多いし,無理な推測を戒めなくてはならぬ場合もある。元来写真判読だけの専門家というのはいないはずで,地形,地質の専門家が多数の写真に親しみ,また災害に関心をもつ者が写真を眺め,現地のチェックを重ねて,それぞれ地形,地質,災害などの写真判読のベテランになってゆくのが本筋である。この意味では,写真判読ということは,知識であるよりはむしろ知識,知見を基礎とする一つの技術である。

 初歩的な写真判読は1枚の写真,1枚のモザイク写真でもできる。(1)の段階ではこれで十分なこともある。しかし2枚の連続写真を実体視することによって著しく情報量が増えてくる。(2)および(3)の段階では実体視を欠くことはできない。また最近はカラー写真が多くなってきた。一般的にいえば,白黒写真よりカラー写真の方が判読が容易であり,とくに初心者には親しみやすい。また判読のテーマによっては赤外写真や赤外カラー写真などを用いることもあり,たとえば後者を用いれば,針葉樹と広葉樹の区別などは初めから写真にはっきりと表れていることになる。

 写真判読の鍵というか,判読をすすめるための手がかりとして,写真像の大きさsize,形shape,階調tone,色colour,きめtexture,模様pattern,陰影shadowなどがあげられる。写真上の物体の大きさは写真の縮尺から推測できる。形も線状,円または球状,整形または不規則形などさまざまであるが,垂直写真では,真上から見た写真像であることに留意すれば,大きさと形から地表の物体を推測できることはきわめて多く,かなりの情報が得られるので,大きさと形の検討が判読の第一歩である。階調,色は,白黒写真では白と黒とその間の濃度を異にする灰色で示される。この間の階調の区分は,私たちの眼で10ないし15段階くらいは可能であるとされている。また写真像の白黒の度合を測定する濃度計もあり,これを用いればより細かい区分も可能である。カラー写真の場合には,これに色の区分が加わり,いっそう判別が容易になる。階調や色彩は,被写体のもつスペクトル反射の光量やその波長帯によって決まってくるわけであるが,1枚の写真上でも部分ごとに異なり,また同一地域の写真でも季節や天候によって異なることが多いので,この点注意を要する。しかし一般に,大きさ,形につづいて色調がわかれば判読はかなりすすむ。写真の一般的な観察photoreadingではこのあたりまでがポイントになるであろう。〈きめ〉〈模様〉はさらに詳しく写真判読をすすめる上で重要な要素である。写真上では細かすぎて一つ一つの物体の大きさ,形が写っていないものもかなりある。これらの集合体が,全体としてはあたかも織り方が異なる布地などのように,特徴のある色調で写し出されていることが多い。ある種の作物の耕地,ある樹種の森林,あるいはある種の土壌の広がりなどは,写真上ではこのような〈きめ〉をたよりに判読してゆくことが多い。またこれらの一定の〈きめ〉をもついくつかの地区が組み合わさって,地表に規則的あるいは不規則的な配置状況を示しているのが一般である。さきの布地の例でいえば,これは織り出された模様とか柄(がら)のようなものである。これもまたその地域の特徴を推定してゆく大きな手がかりとなる。〈きめ〉や〈模様〉などの判読要素は,その地域の土地利用,土壌,地形,地質などの判読には欠くことのできない要素であり,写真上で,対象地域を,分析,分類してゆくには大切な鍵となる。〈陰影〉は,〈きめ〉を作る大きな要素となっていることが多く,また一般に被写体の輪郭を明らかにする役目も果たしている。

 以上,写真判読の手順を追いながら,判読の鍵となる諸要素について説明したが,これらの全体を,判読の目的に合わせて総合解釈して写真判読photointerpretation(広義)が完成する。

空中写真の画面の周辺には,写真を利用する場合に必要ないろいろなデータが写し出され,また記載されている。日本で現在,使用されているもののほとんどすべては,撮影高度,撮影時刻,カメラの傾き,カメラ番号,焦点距離などが自動的に記録されるようになっている。さらに画面の四隅または各辺の中央部に指標が写し出されており,これらを結ぶと写真の中心点が求められる。また同じく白ぬきの文字などで撮影地区,コース,写真番号,撮影年月日などが記入されているのが一般である。

 第2次大戦後,1946年ころ米軍が撮影した全国の空中写真から,74-79年の国土庁と国土地理院の協力による全国のカラー空中写真に至るまで,日本で体系的に整備,保管されている空中写真はすでに100万枚を超えているであろう。その中から必要な写真を検索するには,写真が体系的に整理され,その結果を示す図表が必要である。このような目的のために,標定図がつくられている。標定図には5万分の1地形図またはその縮図が用いられ,撮影コース,撮影地点(写真の中心点),写真番号,それぞれの写真のカバーする範囲などが記入されている。

私たちが高い山頂や航空機などから写すスナップ写真や記録写真は別として,地図作成や地表の事象の解明などに初めて空中写真を用いたのは19世紀の半ばごろといわれている。記録によるとフランスのトゥールナションG.F.Tournachonは,1858年にパリ近郊の鳥瞰写真(斜め写真)を気球から写し,これを利用して地形図の作成を試みたとされている。また同年にフランスのロスダーA.Lossedatもパリ上空で気球から空中写真を写し,パリ市街図の作成を試み,その地図を67年のパリ万国博覧会に出品したとされている。またアメリカにおいても62年キングA.KingおよびブラックJ.W.Blackが気球からボストン市街の斜め写真の撮影に成功し,また同年夏には,南北戦争のさなかに,北軍が南軍の陣地を空中写真で撮影したなどの記録がある。

 19世紀の終りのころには,レンズを通して写し,そのひずみをうけた写真像を,同じレンズを用いて逆に投影すると,ひずみが再び除かれた光像が得られるという原理(ポロ・コッペの原理Porro-Koppe's Principle)が発見され,1901年にはドイツで実体写真測定器が製作されている。その後第1次,第2次世界大戦などを契機にして,空中写真による測量,判読,各種の地図作成の分野は,フィルムの改良,航空機および撮影技術の進歩,精密図化機の開発などと相まって目ざましい進歩をとげた。

 日本でも第1次大戦後,地上写真測量や空中写真測量の研究が,陸地測量部などにより始められ,内地,外地の測量に使われた。とくに1937-38年ころから,満州(現,中国の東北地方)で,写真測量による地図作成が本格的にすすめられた。第2次大戦後の当初は米軍撮影のフィルムを用い,55年ころからは日本自らの撮影するフィルムを用いて,国土地理院などが中心となって,大縮尺の国土基本図の作成,5万分の1地形図の修正,2万5000分の1地形図の作成などが空中写真測量によりすすめられてきた。また第2次大戦後の空中写真利用の大きな特徴として,写真判読による地形,地質,土地利用,森林,防災などの調査がすすめられ,地形分類図,土地条件図,土地利用図,土地分類図(地形分類図,表層地質図,土壌図),防災地図など多くの主題図が作成されてきたことがあげられる。とくに74-79年には国土庁と国土地理院の協力によって,大縮尺カラー空中写真が,主として国土の実態を明らかにする写真判読のために撮影されている。

日本の空中写真は,主として国土地理院(全国,とくに平野部),林野庁(山林部),地方公共団体(都市計画,農地計画,道路計画用など)などにより,撮影されている。なかでも国土地理院と林野庁の写真は広域にわたり体系的に整備されていて(表2),それぞれ日本地図センターおよび日本林業技術協会を通して誰にでも入手できる。

 近ごろは,新・旧の地形図を比較するのと同様に,新・旧の空中写真を比較,判読して,その地域の発展傾向を解析したり,災害の要因を探求したり,環境アセスメントの手がかりとすることも行われるようになってきた。上記の空中写真は,平野部は3~5年,山地部は10年くらいの周期で繰り返し撮影されているので,このような利用も可能なことになる。また空中写真判読の分野でも,写真像の濃度,色調などを自動的に読みとり,数値として記録する画像解析器なども開発されつつあり,この分野での自動化もすすみつつある。一方,リモートセンシングによる人工衛星からの映像も,リモートセンシング技術協会などを通して入手できるので,将来はリモートセンシングによるマルチスペクトルの映像と空中写真の映像との相互補完的な利用も行われるようになるであろう。
写真測量
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百科事典マイペディア 「空中写真」の意味・わかりやすい解説

空中写真【くうちゅうしゃしん】

航空機などにより空中から地表あるいは地上の物体を写した写真。目的により二つに大別される。一つは地図を作るためのもので(写真測量),主として航空写真を用いる。立体視の原理を応用し,図化機やコンピューターを用いて地上の平面位置と高さを測定する実体写真測量,写真をそのまま地図の代用とするフォトマップなどがある。他は空中写真判読といい,目的にかなった種々の情報を写真から読み取るためのもので,たとえば,洪水・地すべりなどの災害調査,森林の材積や樹種を調べる森林調査,土地の高度利用を目的として行う土地利用調査,地下資源または考古学的遺跡の調査,開発計画の調査なども含まれる。人工衛星などからの映像を使用する場合(リモートセンシング)も空中写真測量に含めることもある。測量には一般にパンクロフィルムの白黒写真が用いられ,判読にはそのほかに,赤外線写真,カラー写真,赤外カラー写真が目的に応じて使い分けられる。
→関連項目地形分類図

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「空中写真」の意味・わかりやすい解説

空中写真
くうちゅうしゃしん
aerial photograph

空中のある一点である気球,人工衛星,航空機などから地表面に向け撮影した写真の総称。航空機から撮影した空中写真は区別して航空写真ともいう。測量用航空カメラによって一定の重複度で連続的に撮影された実体視のできる写真では,内部定位 (写真面に対する撮影中心の相対位置) がはっきり与えられている。空中写真は撮影角度によって,垂直写真と斜写真に区別され,前者は測量と図化に,後者は地上にあるものを判読するのにおもに使われる。どの場合も特殊な航空フィルム,すなわちベースの伸縮が小さく,高空の低温下でも地上の常温と同じ性能をもっているもので,幅 19cmと 24cm,長さが 60mまたは 120mのものが使用される。空中写真判読には単写真観察と 60%前後重複した2枚の写真を用いた実体視による観察がある。空中写真は地表面の,ある瞬間の形状を網羅的かつ正確に記録するものである。空中写真の概略の縮尺は撮影高度をカメラレンズの焦点距離で割った値を分母 (写真縮尺分母数 photographic scale numberという) とし,分子を1とした分数で表わされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「空中写真」の意味・わかりやすい解説

空中写真
くうちゅうしゃしん
aerial photograph

空中から地上を撮影した写真。航空機から撮影した航空写真がほとんどだが、ドローン(無人航空機)による撮影も増えている。日本では国土地理院をはじめ、各種の官民団体や個人により自由に空中写真が撮影され、公開・市販されている。

[尾崎幸男 2016年11月18日]

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世界大百科事典(旧版)内の空中写真の言及

【ナダール】より

…ナダールのポートレート(肖像写真)は,単純な背景の中に全身の4分の3をストレートなライティングで写したものであるが,それは単なる人物の性格描写をこえ,これら芸術家自身の表現世界の広がりさえ感じさせるものであった。また58年には気球に乗り,世界最初の空中写真の撮影を試みたり,61年には3ヵ月をかけてパリの地下に発見されたカタコンベ(地下納骨堂)の撮影を,当時ようやく開発されたアーク灯による人工照明で撮影している。ナダールの波瀾に富んだ経歴はJ.ベルヌの《月世界旅行》の主人公のモデルとしても反映されているといわれる。…

※「空中写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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