空中写真
くうちゅうしゃしん
aerial photograph
空中のある一点である気球,人工衛星,航空機などから地表面に向け撮影した写真の総称。航空機から撮影した空中写真は区別して航空写真ともいう。測量用航空カメラによって一定の重複度で連続的に撮影された実体視のできる写真では,内部定位 (写真面に対する撮影中心の相対位置) がはっきり与えられている。空中写真は撮影角度によって,垂直写真と斜写真に区別され,前者は測量と図化に,後者は地上にあるものを判読するのにおもに使われる。どの場合も特殊な航空フィルム,すなわちベースの伸縮が小さく,高空の低温下でも地上の常温と同じ性能をもっているもので,幅 19cmと 24cm,長さが 60mまたは 120mのものが使用される。空中写真判読には単写真観察と 60%前後重複した2枚の写真を用いた実体視による観察がある。空中写真は地表面の,ある瞬間の形状を網羅的かつ正確に記録するものである。空中写真の概略の縮尺は撮影高度をカメラレンズの焦点距離で割った値を分母 (写真縮尺分母数 photographic scale numberという) とし,分子を1とした分数で表わされる。
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空中写真【くうちゅうしゃしん】
航空機などにより空中から地表あるいは地上の物体を写した写真。目的により二つに大別される。一つは地図を作るためのもので(写真測量),主として航空写真を用いる。立体視の原理を応用し,図化機やコンピューターを用いて地上の平面位置と高さを測定する実体写真測量,写真をそのまま地図の代用とするフォトマップなどがある。他は空中写真判読といい,目的にかなった種々の情報を写真から読み取るためのもので,たとえば,洪水・地すべりなどの災害調査,森林の材積や樹種を調べる森林調査,土地の高度利用を目的として行う土地利用調査,地下資源または考古学的遺跡の調査,開発計画の調査なども含まれる。人工衛星などからの映像を使用する場合(リモートセンシング)も空中写真測量に含めることもある。測量には一般にパンクロフィルムの白黒写真が用いられ,判読にはそのほかに,赤外線写真,カラー写真,赤外カラー写真が目的に応じて使い分けられる。
→関連項目地形分類図
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空中写真
くうちゅうしゃしん
aerial photograph
空中から地上を撮影した写真。航空機から撮影した航空写真がほとんどだが、ドローン(無人航空機)による撮影も増えている。日本では国土地理院をはじめ、各種の官民団体や個人により自由に空中写真が撮影され、公開・市販されている。
[尾崎幸男 2016年11月18日]
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くうちゅう‐しゃしん【空中写真】
〘名〙 飛行中の航空機から地上を撮影した写真。航空写真。
※作戦要務令(1939)二「而して此等の諸情報は空中写真等と共に
適時之を攻撃部隊に交付するを要す」
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くうちゅうしゃしん【空中写真 aerial photograph】
空中の1点から地表あるいはその他の物体を撮影した写真。撮影に航空機を用いたものは航空写真と呼ばれることも多い。上方からの撮影でも,山頂などの,地上から写したものは地上写真と呼ばれる。
[種類]
空中写真は撮影角度,カメラの性質,プリントの方法,感光材料の性質などにより次のように分類される。(1)撮影角度による分類(図1) (a)斜め写真 カメラの傾斜角(レンズの軸と鉛直線のなす角)が5度以上の写真で,画面に水平線の写らない低角度斜め写真と,水平線の写る高角度斜め写真などがある。
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デジタル大辞泉
「空中写真」の意味・読み・例文・類語
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世界大百科事典内の空中写真の言及
【ナダール】より
…ナダールのポートレート(肖像写真)は,単純な背景の中に全身の4分の3をストレートなライティングで写したものであるが,それは単なる人物の性格描写をこえ,これら芸術家自身の表現世界の広がりさえ感じさせるものであった。また58年には気球に乗り,世界最初の空中写真の撮影を試みたり,61年には3ヵ月をかけてパリの地下に発見されたカタコンベ(地下納骨堂)の撮影を,当時ようやく開発されたアーク灯による人工照明で撮影している。ナダールの波瀾に富んだ経歴はJ.ベルヌの《月世界旅行》の主人公のモデルとしても反映されているといわれる。…
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