空・虚・洞(読み)うつお

精選版 日本国語大辞典 「空・虚・洞」の意味・読み・例文・類語

うつお うつほ【空・虚・洞】

〘名〙
① 中がからであること。中がからになっているところ。中がからなもの。うつろ。うろ。
今昔(1120頃か)二九「この唐樻(からひつ)をこそ心(にく)く思ひつれども、此も空にて物无かりけり」
② 岩や朽木などの空洞。ほら穴。また、岩や木などが組み合わさって、ほら穴のようになっている所。→空木(うつおぎ)。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※梵舜本沙石集(1283)二「大きなる木のうつほに、手負をばかくして」
上着だけで、下に重ねるべき着物を着ないこと。下着を重ねないこと。
源氏(1001‐14頃)玉鬘山吹の袿(うちぎ)の、袖口いたくすすけたるを、うつほにてうちかけ給へり」
④ (「うつおぐさ(空草)」の略) ネギをいう女房詞。〔海人藻芥(1420)〕
⑤ (形動) 衰えて弱々しいこと。また、そのさま。
日葡辞書(1603‐04)「Vtçuuona(ウツヲナ) ミャク」
[語誌](1)元来ウツホと発音されていたが、ハ行転呼音が一般化した一一世紀半ば以降はウツヲとなる。
(2)鎌倉時代から「うつほ」とほぼ同じ意味で使用され始めた「うつろ」が、口語として徐々に広く用いられるようになり、「うつほ」は、主として擬古的な文章の中に見られる文語となった。
(3)「うつほ」が古語となり、読み方が忘れられ、矢の容器の「空穂(うつぼ)」との混同も起こって、「うつぼばしら」「うつぼぶね」などのように、第三拍を濁音化する例も見られるようになる。

うつろ【空・虚・洞】

〘名〙
① (形動) 中身がなく、からっぽのこと。また、その箇所。うろ。うつお。〔名語記(1275)〕
② (形動) 外形だけで内容や実質の伴わないもの。
※玉塵抄(1563)二五「天子のみくらもなにもなう、うつろになったぞ」
③ 「うつろぶね(空舟)」の略。
浮世草子懐硯(1687)四「ありのままにかたるを其まま成敗にもすべきをそれさへ出家といへる徳にて、うつろにつくりて絞りながら乗せ」
④ (形動) 心のはたらきが鈍り、ぼんやりしているさま。また、声などに力がなく、頼りないさま。
野分(1907)〈夏目漱石〉四「痩せた両肩を聳やかして、又ごほんと云ふうつろな咳を一つした」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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