積物(読み)つみもの

精選版 日本国語大辞典 「積物」の意味・読み・例文・類語

つみ‐もの【積物】

〘名〙
① 積み重ねてある物。船などに積みこんである荷物など。
庭訓往来(1394‐1428頃)「垸飯盛物積物以下」
② 積み重ねて飾る贈り物。祭礼飾り物や、開店や芝居興行などの際、祝儀とした蒸籠(せいろう)俵物酒樽(さかだる)菓子などを家の表や木戸の前などに高く積み上げたもの。
多聞院日記‐文祿二年(1593)一一月二五日「つみもの〈さくろ・きんかん・かき・いりかき〉くり小折」
③ (②から転じて) 贈り物。祝儀。
※咄本・千里の翅(1773)積もの「此たび出勤につきれんぢうよりのつみものに」

つもり‐もの【積物】

〘名〙
① かけ算。かけ算で計算すべきもの。
狂歌・後撰夷曲集(1672)四「冬はただどこもそろそろそろばんにをきそふ霜もつもり物哉」
② 人の心を推量して作った細工物。人の心理を推し量り、それにかなうように工夫して作った物。
浮世草子・俗つれづれ(1695)三「むかし唐人の細工に十分盃とて、人の心をつもり物(モノ)にして是をわたしぬ」
③ 見積もって注文を受けたもの。見積もり物。
※雑俳・柳多留‐八二(1825)「積りもの一夜に出来る駿河町

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デジタル大辞泉 「積物」の意味・読み・例文・類語

つみ‐もの【積(み)物】

積み重ねた物。
歌舞伎の興行や商店の開店のとき、祝儀の酒樽さかだる・俵物などを積み重ねて飾ったもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「積物」の意味・わかりやすい解説

積物 (つみもの)

贈物としての酒樽,菓子のせいろう,魚の盤台(はんだい)などを,家の前や道端に高く積み上げて飾ること。また,その品物のこと。祭礼や開業の際,および芸能界で贈主の宣伝と贈られた者のみえを兼ねて始まった風習である。後には,積み上げた頂上部に舟や切り松をのせたり,造花をあしらい,ちょうちんを仕掛けるなど,人目を引くための装飾が加わった。最近は広告の多様化に伴ってほとんどすたれたが,歌舞伎,相撲になごりをとどめている。なお,特殊なものとして,遊郭で新造出(しんぞうだし)の際に積物をし,また,なじみの客が遊女へ贈る夜具を遊女屋や引手茶屋の店先に飾った。これを積夜具(つみやぐ)(または飾夜具)といい,上下各3枚の厚い布団を二つ折りにして重ね,その上に夜着をのせた。客は,関係者に祝儀として,ゆかた,そば,手拭などを贈る習慣があったから,費用は多額であった。遊女にとっては積夜具の度数が多いのが誇りであり,待遇にも反映した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「積物」の意味・わかりやすい解説

積物
つみもの

贈り物を受けた側で、その品物をうず高く積み上げ飾って披露するもの。神社では拝殿の外に、酒造業者などの贈った菰(こも)かむりの四斗樽(しとだる)が山のように積んであるのをみかける。祭礼時の寄付を貼(は)り出すのと同様の心理である。商店の開店祝い、歌舞伎(かぶき)、相撲(すもう)界でも同様のことがあり、興行時などに酒樽のほかにも俵物(たわらもの)、菓子の蒸籠(せいろう)、魚の盤台(ばんだい)などを、家の表や木戸の前などに積み上げた。類似習俗としては、婚礼の衣装見せ、葬儀の際の一俵(いっぴょう)香典を積み上げることなどがある。吉原などの遊廓(ゆうかく)では、積み夜具とも飾り夜具ともいって、遊女となじみになったしるしに客が新調の夜具を贈り、それを店の前に積み上げ飾ることがあった。

[井之口章次]

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普及版 字通 「積物」の読み・字形・画数・意味

【積物】せきぶつ

たくわえ。

字通「積」の項目を見る

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