福州(読み)ふくしゅう

精選版 日本国語大辞典 「福州」の意味・読み・例文・類語

ふくしゅう フクシウ【福州】

[一] 中国福建省の省都。閩江(びんこう)下流に位置する。馬尾を外港とする沿海貿易港で、茶、木材などを積み出す。旧名閩侯(県)。漢代、閩越王の都となった。
[二] 中国の唐代、現在の福州市を中心に、閩江下流一帯に置かれた州の名。

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デジタル大辞泉 「福州」の意味・読み・例文・類語

ふくしゅう〔フクシウ〕【福州】

中国、福建省の省都。閩江びんこう下流域に位置し、代から貿易港として発展。製紙・木材・機械などの工業が行われる。人口、行政区212万(2000)。フーチョウ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「福州」の意味・わかりやすい解説

福州
ふくしゅう / フーチョウ

中国、福建(ふっけん)省東部にある地級市で、同省の省都。略称は榕(よう)。台湾海峡に流入する省内最大の河川である閩江(びんこう)下流の両岸に位置する。5市轄区と6県を管轄し、福清(ふくせい)、長楽(ちょうらく)の2県級市の管轄代行を行う(2017年時点)。人口678万3600、市轄区人口199万9600(2015)。年平均気温は16~20℃、年降水量は900~2100ミリメートル。温暖な気候で夏が長く冬が短い。2000年代以降、都市化に伴うヒートアイランド現象がみられる。長崎市、那覇(なは)市と姉妹都市提携を締結している。

[青木千枝子・河野通博・編集部 2018年1月19日]

歴史

古く唐・宋(そう)代から対外貿易港として開け、南西180キロメートルにある泉州(せんしゅう)が衰えた明(みん)代以後発展した。清(しん)末には南京(ナンキン)条約により厦門(アモイ)とともに開港場となり、イギリスによって造船所や埠頭(ふとう)が建設された。

[青木千枝子・河野通博 2018年1月19日]

産業・交通

中国の重要な貿易港の一つで、1984年には沿海対外開放14都市の一つに指定された。ジャスミン茶の加工で知られるが、中華人民共和国成立後は工業化が進み、機械、化学、製紙、木材、食品などの工業が立地する。1991年に福州ハイテク産業開発区(高新区)が設置され、以後、電子情報産業やバイオ医薬品製造、新素材産業などが急速に発展した。また、華僑(かきょう)の出身地の一つであるため、華僑や、地理的に近い台湾からの積極的な投資が本市の経済発展を促している。2013年に「一帯一路構想が提唱されて以降、古代の海上シルクロード(海の道)の要地であった福州市は同構想に積極的に参画している。2015年福建省が「21世紀海上シルクロード」の中核地域に指定され、省都である福州市は重要起点とされた。伝統工芸としては、寿山石(じゅさんせき)彫刻、コルク細工、脱胎(だったい)漆器、角櫛(つのぐし)などが知られる。

 鷹厦(ようか)線(鷹潭(ようたん)―厦門)、温福線(温州(おんしゅう)―福州)、福厦線(福州―厦門)、峰福線(横峰(おうほう)―福州)のほか、2013年開通の杭福深旅客専用線(杭州(こうしゅう)―福州―深圳(しんせん))や向莆高速鉄道(南昌(なんしょう)―莆田(ほでん))、2015年開通の合福高速鉄道(合肥(ごうひ)―福州)が通じる。省内各地とは長距離バスで結ばれている。空路は国内各地のほか香港(ホンコン)へも直航便があり、沿岸定期航路も上海(シャンハイ)、広州(こうしゅう)などに通じている。

[青木千枝子・河野通博・編集部 2018年1月19日]

文化・観光

市区は古代からの城壁都市があった閩江北岸と、新市街の南岸に分かれる。北岸には三山鼎立(ていりつ)とよばれた鼓山(こざん)、烏山(うざん)、于山(うざん)があり、鼓山の1000年の歴史をもつ名刹涌泉寺(ようせんじ)や達磨洞一帯の鼓山十八景、烏山・于山の唐代から清代にかけての磨崖(まがい)石刻など、多くの名勝・旧跡がある。

[青木千枝子・河野通博 2018年1月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「福州」の意味・わかりやすい解説

福州 (ふくしゅう)
Fú zhōu

中国,福建省の省都。人口212万(2000)。東部沿海,閩江(びんこう)の下流域の福州平野の先端部分に位置する。全省の政治・経済・文化・交通の中心地。閩侯県など6県を管轄する。略称は榕で,漢代初めは閩越の王都冶城の所在地である。漢の武帝に征服されてから冶県といい,会稽郡に所属した。後漢には侯官と改名し東部都尉がおかれた。晋代に晋安郡の治所となり,隋代に閩県と改められたが,唐代に分離されて再び侯官県がおかれ,福州の治所としたのがその名の起りである。明・清代では福州府の治所であると同時に福建省の省都であった。1912年に閩県と侯官県が合併されて閩侯県となった。46年,古楼,大根,小橋,台江,倉山の5区をもとにして福州市が設置され,解放後市の範囲がしだいに拡大されて,今では馬江,北峰および南台島全部が含まれるが,新市街の発展がめざましい。古くから海港として知られたが,唐代以降著しく発達した。五代に王氏がここを都として閩国を建ててから貿易が盛んとなり,明代以降泉州港が土砂に埋まり浅くなったため,代わって繁栄した。南京条約で開港され,イギリス人により造船所や埠頭が建設され,植民地都市として拡大したが,近代的港湾施設には不適当なため南東の馬尾を外港とした。

 解放後,消費都市から近代的な工業都市に変貌し,鉄鋼,機械,自動車,化学肥料,化学繊維,農薬,絹織物,食品,製紙,木材加工などの工業が発達した。伝統工芸品では堆朱,木彫,石刻,木画,象牙細工,陶磁製品などが有名。福州は省内の交通・商業の中心で,かつて船運と道路に頼っていたが,現在は鉄道が閩江の本・支流に沿って建設され,大量輸送に便利となった。閩江流域の平地,山地で生産される福建茶,福州杉,クス,竹材,かんきつ類,リュウガン,レイシなどがここに集められ各地に送られる。名所,旧跡も多く,市街東方の江岸には名勝鼓山があり山中に寺院が多数ある。また市街北西の風光明美な西湖は公園になっている。
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百科事典マイペディア 「福州」の意味・わかりやすい解説

福州【ふくしゅう】

中国,福建省中東部,【びん】江下流左岸にある省都。略称は榕。来福鉄路(来丹〜福州)の起点で,同省の政治・経済・文化の中心。1842年の南京条約により開港。茶,木材,紙,皮革,果実(ミカン,リュウガン,レイシなど)などの積出港。製紙・製材・機械・化学工業が行われ,ことに茶の取引は中国三大茶市の一つとして盛ん。下流の馬尾,【かん】頭(かんとう)は外港で,造船所がある。193万人(2014)。
→関連項目三都澳中華人民共和国福建[省]

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旺文社世界史事典 三訂版 「福州」の解説

福州
ふくしゅう
Fúzhōu

中国福建省東部にある同省の省都
閩 (びん) 江河口付近の左岸に位置し,中国東海岸有数の海港。福建地方では最も早く開け,唐代から外国貿易も行われた。南京条約によって5港の1つとして開港。

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世界大百科事典(旧版)内の福州の言及

【福建[省]】より

…中国,南東部の行政区域。その名は福州と建州とを併せたもので唐代から始まり,別名の(びん)は古くこの地方にいた民族の名である。面積12万1400km2,人口3261万(1996)。…

※「福州」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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