福島[県](読み)ふくしま

百科事典マイペディア 「福島[県]」の意味・わかりやすい解説

福島[県]【ふくしま】

東北地方最南部の県。東は太平洋に面する。県庁所在地は福島市。1万3783.74km2。202万9064人(2010)。面積は都府県中では岩手県に次いで大きい。〔沿革〕 かつての陸奥(むつ)国の最南部にあたり,古代,奥羽への関門として白河関,勿来(なこそ)関が置かれた。平安時代は奥州藤原氏,鎌倉時代以後は岩城,結城(ゆうき),相馬,芦名,佐原,二階堂の諸氏らが割拠,戦国時代には伊達氏も進出した。江戸時代は松平氏の会津藩以外は天領,小藩に分割されていた。1871年平,二本松,若松の3県となり,同年平県は磐前県,二本松県は福島県と改称,1876年3県が合併し福島県となった。〔自然〕 東から阿武隈高地奥羽山脈越後山脈が南北に走り,これらの山地によって東の浜通り,中央の中通り,西の会津地方に分けられる。阿武隈高地は隆起準平原の低起伏の山地で,多くの小盆地をいだく。奥羽山脈に並行して那須火山帯に属する磐梯山吾妻(あづま)山安達太良(あだたら)山などがあり,猪苗代湖をはじめ多くの湖沼が点在。越後山脈は新潟県との境をなし,阿賀野川峡谷をつくって西流する。浜通りは太平洋岸の海岸平野と丘陵からなり,中通りには阿武隈川が北流し,須賀川郡山・福島各盆地がある。気候は浜通りは太平洋岸式,中通りは内陸性,会津地方は日本海岸式気候で,会津,猪苗代などの盆地部は夏高温,山地地域は積雪が多い。〔産業〕 産業別人口構成は第1次9.2%,第2次30.7%,第3次59.3%(2005)。耕地面積1540km2の70%が水田で(2003),会津・猪苗代・郡山の諸盆地,浜通りに米産が多い。阿武隈高地ではタバコ,コンニャク福島盆地ではリンゴ,ナシ,モモの産が多く,養蚕も行われ群馬県に次いで全国2位(2003)の収繭量がある。酪農は阿武隈高地で盛んである。野菜ではキュウリ,トマトの生産が全国でも上位にある。林野面積は県域の約7割を占めており国有・民有林ともに天然林が多く,阿武隈高地南部と八溝山地ではスギの造林地が広く〈東北の吉野〉と呼ばれる。水産業では浜通り南部の江名,小名浜などを中心に沖合・遠洋漁業が行われ,北部の松川浦ではカキ・ノリ養殖が盛ん。鉱業はいわき地区は1950年代まで常磐炭田の産炭地として繁栄したが,1976年閉山。常磐沖に海底ガス田がある。1964年常磐・郡山地区として新産業都市に指定され,化学,電気機器などを中心とした県内一の工業都市に発展した。福島,郡山はもと養蚕地帯を背景に製糸工業が盛んであったが,1960年代以降,重化学工業,食品工業が進展し,郡山,会津若松喜多方には電力利用の金属工業などが立地する。製造品出荷額では5兆2204万円(2003)を上げ,東北地方1位を占めている。保原,梁川のメリヤス,川俣の絹・化繊広幅物,会津若松の漆器,相馬の陶磁器などの特産物がある。会津地方の只見川水系の電源地帯に加え,浜通りの臨海部には火力・原子力発電所が立地し,福島は全国有数の電力供給県となった。また磐梯朝日国立公園に属する磐梯山,猪苗代湖,磐梯高原や,尾瀬国立公園に属する燧ヶ岳,尾瀬沼のほか飯坂,東山の温泉など観光資源に富む。〔交通〕 中通りに通じる東北本線・新幹線と,国道4号線,東北自動車道,浜通りに通じる常磐線と国道6号線が幹線であり,福島からは奥羽本線(山形新幹線),阿武隈急行が,郡山から磐越東線・西線,水郡線,会津若松から只見線,会津鉄道が分岐する。ほかに高速道路では茨城県と結ぶ常磐自動車道,新潟県と結ぶ磐越自動車道が通じる。また1993年福島空港が須賀川市に開港した。 2011年3月,東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生,浜通りを中心に県内の多くの地域で激しい揺れと巨大な津波により甚大な被害が出る。またこれに伴って発生した福島第一・第二原子力発電所の放射性物質漏えい事故により,発電所周辺自治体では避難を余儀なくされ,住民や自治体機能そのものを集団移転させる事態に陥った。
→関連項目東北地方浜通り福島盆地

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