禅律方(読み)ぜんりつかた

精選版 日本国語大辞典 「禅律方」の意味・読み・例文・類語

ぜんりつ‐かた【禅律方】

〘名〙 室町幕府初期の職制一つ禅宗寺院の管理機関で、住持推挙、寺領訴訟処置などの庶務をつかさどった。建武四年(一三三七)にはすでに設置されていたとみられる。康暦元年(一三七九)に僧録制度が創設されて以後、その職務僧録司に吸収された。
※臨川寺重書案文‐坤・康永元年(1342)七月一〇日・大高重成奉書案「一備後国垣田庄、一通〈禅律方〉奉書」

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改訂新版 世界大百科事典 「禅律方」の意味・わかりやすい解説

禅律方 (ぜんりつかた)

室町幕府に置かれた禅宗・律宗寺院(個人としての禅僧律僧も含む)関係の訴訟等を取り扱った機関。室町幕府は禅律方を設けて禅律寺院を保護・統制したと推測される。禅律方の長官を頭人と呼称するが,この禅律方頭人の存在が確認できるのは,1337年(延元2・建武4)の細川和氏から79年(天授5・康暦1)の某まで(一時期中止される)である。頭人・奉行等で構成される禅律方の職掌は,訴訟当事者の一方が禅律寺院(僧)である所務訴訟(所領関係の訴訟)等の裁許を行うこと(判決は頭人の奉書で発給される),またこれら寺院の規式の作成等であった。禅律沙汰日(裁判を行う日)を月に6度(のち3度となる)設けたことは,禅律寺院関係の裁判を円滑ならしめるための優遇措置と思われ,一方寺院の規式作成等を通して統制もはかった。同時期室町幕府に存在した一般の所務訴訟機関引付方と同様に,康暦期(1379-81)以降は禅律方頭人の機能も管領のもとに吸収された。管領が禅律方頭人の機能を果たしたのは鹿苑僧録が成立する(1400年ころ)までとされる。
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