祥啓(読み)しょうけい

精選版 日本国語大辞典 「祥啓」の意味・読み・例文・類語

しょうけい シャウケイ【祥啓】

室町時代後期の画僧建長寺の僧で書記役にあったことから啓書記ともいう。字(あざな)は賢江。相模(神奈川県)の人。水墨画真芸芸阿彌)に学ぶ。周文や阿彌派の様式を受け、明快単純な筆法と画体をもって山水花鳥道釈人物を描いた。作品に「山水図」「瀟湘八景画帖」など。生没年未詳。

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デジタル大辞泉 「祥啓」の意味・読み・例文・類語

しょうけい〔シヤウケイ〕【祥啓】

室町中期の画僧。あざなは賢江。号、貧楽斎。祥啓はいみな。建長寺の書記を務めたことから啓書記ともよばれる。芸阿弥に水墨画を学び、山水画にすぐれた。生没年未詳。

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朝日日本歴史人物事典 「祥啓」の解説

祥啓

生年:生没年不詳
室町後期の画僧。鎌倉建長寺の書記を勤め,啓書記と通称される。別号貧楽斎。相模(神奈川県)出身とする説が有力だが,下野(栃木県)宇都宮の画家丸良氏の子とする後世史料(『本朝画史』)もある。文明10(1478)年に画事の修業のため京都に上り,同朋の芸阿弥に師事。その間,室町幕府所蔵の中国絵画の名品に直接ふれて研鑽を積んだ。芸阿弥の唯一の現存作品「観瀑図」(根津美術館蔵)は,横川景三の賛文によれば文明13年祥啓の帰郷の際に,はなむけとして芸阿弥から贈られたものである。また,明応2(1493)年にも上洛したことが景徐周麟 の『翰林葫蘆集』によって確認される。作品はかなりの数が残っており,山水,人物,花鳥とそのレパートリーも幅広い。代表作「山水図」(根津美術館蔵)は,師芸阿弥の作風を忠実に反映したものだが,その後,「瀟湘八景図帖」(白鶴美術館蔵)にみられるような,より平明で淡泊な画風に移行した。また「巣雪斎図」(静嘉堂文庫美術館蔵)のような,古い形式の書斎図の作品も数点伝わる。「馬図」(根津美術館蔵),「花鳥図」(神奈川県立博物館蔵)は,おそらく第一級の中国絵画を模写した着色画であるが,その技量はきわめて高度である。東国に中央の最新の様式を伝え,室町後期の関東画壇に圧倒的な影響力を持った。弟子と推測される画家に啓孫,啓牧,啓拙斎らがいる。<参考文献>『日本美術絵画全集』6巻,東京都庭園美術館『室町美術と戦国画壇』

(山下裕二)

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改訂新版 世界大百科事典 「祥啓」の意味・わかりやすい解説

祥啓 (しょうけい)

15世紀後半を活躍期とする鎌倉建長寺の塔頭宝珠庵にあった禅僧,画家。生没年不詳。書記役にあり,通称は啓書記(けいしよき),字は賢江。貧楽斎と号した。相陽(相模)の出身といわれ,1478年(文明10)京都へ上り,芸阿弥(真芸)について画事を学ぶかたわら,足利将軍家所蔵の唐絵に接する機会を得,3年後に業成って帰郷するにあたり芸阿弥から印可として《観瀑図》(根津美術館)を授けられた。93年(明応2)再上洛,京都五山を遍歴後は鎌倉においてもっぱら画事に専念した。山水,花鳥,道釈人物と幅広くこなしているが,山水画は芸阿弥ゆずりの真山水が,花鳥,人物には唐絵を直模した習作的なものが多い。《山水図》(根津美術館),《達磨像》(南禅寺)などがのこる。鎌倉を中心とした関東地方画壇に与えた影響は大きく,啓孫,啓拙斎,興悦,僊可などは祥啓の門人と思われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「祥啓」の意味・わかりやすい解説

祥啓
しょうけい

生没年不詳。室町中期(15世紀後半)の画僧。字(あざな)は賢江(けんこう)、別号は貧楽斎。相模(さがみ)国(神奈川県)の人。鎌倉五山の第一位建長寺の書記役にあったところから啓(けい)書記ともよばれる。1478年(文明10)上洛(じょうらく)し、画を芸阿弥(げいあみ)に学び、3年にして業なって帰郷。芸阿弥よりその修行の証(あかし)として『観瀑(かんばく)図』(東京・根津美術館)を贈られた。山水、人物、花鳥と幅広い画題をこなしているが、とりわけ楷体(かいたい)の山水画に優れた手腕を発揮している。代表作に『山水図』(根津美術館)、『瀟湘八景画帖(しょうしょうはっけいがじょう)』(兵庫・白鶴(はくつる)美術館)などがある。なお祥啓画は、以後の鎌倉を中心とした東国画壇に大きな影響を与えており、一括して祥啓派あるいは啓派とよばれている。

[榊原 悟]

『中村溪男著『祥啓』(1970・三彩新社・東洋美術選書)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「祥啓」の解説

祥啓 しょうけい

賢江祥啓(けんこう-しょうけい)

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