神風(読み)かみかぜ

精選版 日本国語大辞典 「神風」の意味・読み・例文・類語

かみ‐かぜ【神風】

〘名〙
① 神の威徳によって吹き起こるという風。伊勢の神の威徳によると考えられることが多かったことから、伊勢を表わすこともあった。かむかぜ。しんぷう。→神風の神風や
拾遺愚草(1216‐33頃)中「ます鏡ふたみの浦にみがかれて神風きよき夏の夜の月」
② 第二次世界大戦末期の日本軍の特別攻撃隊の名。敵艦に体当たり攻撃を行なった。
※馬糞記(1958)〈阿部知二〉「大学の時、『神風』に入ったんです。九十人ほどのうち、生き帰ったのが十何人かで」
③ ②から転じて、向こう見ずで人命を粗末にすることのたとえ。「神風タクシー」「神風運転」

かむ‐かぜ【神風】

〘名〙 =かみかぜ(神風)
万葉(8C後)二・一九九「渡会(わたらひ)の 斎(いつき)の宮ゆ 神風(かむかぜ)に い吹き惑(まと)はし 天雲を 日の目も見せず」

かん‐かぜ【神風】

しん‐ぷう【神風】

〘名〙 神が吹かせるという風。かみかぜ。〔陸雲‐大将軍宴会被命作詩〕

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デジタル大辞泉 「神風」の意味・読み・例文・類語

かみ‐かぜ【神風】


神が吹き起こすという風。特に、元寇げんこうの際に吹いた激しい風。
第二次大戦末期、日本軍の特別攻撃隊に冠した名称神風しんぷう特別攻撃隊。→特攻隊
2から転じて》その行為が向こうみずで人命を粗末にするたとえ。「神風運転」
昭和12年(1937)東京・ロンドン間を飛び、実飛行51時間余の記録を立てた国産の二人乗り飛行機。
[類語]雨風波風風浪風雪風雨無風微風そよ風軟風強風突風烈風疾風はやて大風颶風暴風爆風ストーム台風ハリケーンサイクロン砂嵐つむじ風旋風竜巻トルネード追い風順風向かい風逆風横風朝風夕風夜風春一番春風しゅんぷう春風はるかぜ花嵐薫風風薫る緑風やませ涼風すずかぜ涼風りょうふう秋風野分き木枯らし空風寒風季節風モンスーン貿易風東風ひがしかぜ東風こち西風偏西風南風みなみかぜ南風はえ凱風北風朔風松風まつかぜ松風しょうふう山風山颪谷風川風浜風潮風海風陸風熱風温風冷風

かむ‐かぜ【神風】

かみかぜ1」に同じ。
渡会わたらひいつきの宮ゆ―にい吹き惑はし」〈・一九九〉

しん‐ぷう【神風】

神が吹かせるという風。かみかぜ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神風」の意味・わかりやすい解説

神風
かみかぜ

神の威力で吹くとされている風。暴風雨の多い日本では風に対する恐れから、神の威徳に従わないと神風で罰せられるという信仰があった。歴史上では文永(ぶんえい)・弘安(こうあん)の役(1274、1281)の二度にわたる蒙古(もうこ)の軍船が、博多湾で壊滅させられたのがその代表的な例である。第二次世界大戦末期に、この史実にあやかって日本海軍航空隊が神風特別攻撃隊を編成し、敵艦隊に絶望的な体当たり攻撃を加え、追い詰められた戦局をなんとか打開しようとしたが、失敗した。このときの「神風」は世界的に有名である。この無謀な神風特攻隊以来、1955年(昭和30)ころ、命知らずの乱暴な運転をするタクシーのことを神風タクシーとよんだ。

[上野文枝]

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旺文社日本史事典 三訂版 「神風」の解説

神風
かみかぜ

神の威力によりおこるという風
蒙古襲来にあたって,文永・弘安の両役とも,たまたま暴風雨によって,敵船が退却した。この時期は,神国思想が急速に広まっていたので,この国難を除いたのは,伊勢の神による神風のおかげだと考えるようになり,後世に強く影響した。

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世界大百科事典(旧版)内の神風の言及

【神国思想】より

…平安時代には対外意識が鮮明になることは少なかったが,後期になって朝廷の権威が衰えはじめると,皇統の一系と神々の加護を説く神道思想が整えられるようになった。鎌倉時代の半ばに元の軍勢が来襲したとき,異敵調伏の祈禱の中で神国思想が強調され,敵国の船団を壊滅させた風は神風と呼ばれた。その後,近世初頭に対外関係が複雑になったとき,豊臣秀吉はキリシタンの禁圧を正当化するために,日本が神国であることを主張した。…

【モンゴル襲来】より

…その後博多,大宰府を攻略すべく7月下旬に肥前鷹島に移ったところ,7月30日夜,大風が吹いて元軍は壊滅的打撃をうけた。日本ではこれを神風と呼んだ。こうして元の第2次遠征も失敗に終わった。…

※「神風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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