神経鞘腫(Schwann細胞腫)

内科学 第10版 の解説

神経鞘腫(Schwann細胞腫)(脳腫瘍各論)

(4)神経鞘腫(neurinoma)(Schwann細胞腫(schwa­noma))
 Schwann細胞由来の良性腫瘍で,全脳腫瘍の約11%を占める.前庭神経から発生する聴神経鞘腫が最も多く,ついで三叉神経,顔面神経,下部脳幹神経と続く.聴神経鞘腫は小脳橋角部腫瘍の80%を占め,臨床上また画像診断上,同部に発生する髄膜腫や類表皮囊腫(epidermoid cyst)と鑑別される.神経線維腫症2型では,左右両側に聴神経鞘腫の発生をみる(図15-14-4A).
好発年齢・性差
 成人に発生し,女性に多い.
臨床症状
 聴神経鞘腫では難聴耳鳴りふらつき,めまい,三叉神経鞘腫では顔面の知覚障害を認める.
診断
 MRI上は著明に造影される脳実質外腫瘍として描出され,しばしば囊胞性の変化を伴う(図15-14-4B).聴神経鞘腫では内耳道の拡大,三叉神経鞘腫では錐体骨先端部の骨侵蝕像がCTや頭蓋単純撮影で確認される.
治療
 開頭術によって腫瘍を全摘出すれば,完治を期待することができる.ただし聴神経鞘腫では,腫瘍に接して走行する蝸牛神経と顔面神経をいかに温存するかが問題となる.最近では開頭術によって全摘出が達成されなかった症例や,比較的小さな腫瘍に対しては,ガンマナイフやLINACを用いた放射線外科治療が施行されることもある.[新井 一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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