神崎川（読み）カンザキガワ

デジタル大辞泉

かんざき‐がわ〔‐がは〕【神崎川】

大阪市北部を流れる川。摂津市西部で淀川から分流して安威あい川と合流し、尼崎市神崎で猪名いな川を合わせて大阪湾に注ぐ。長さ18.7キロ。

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

かんざき‐がわ ‥がは【神崎川】

茨木市の西北方山地に発し、吹田市南部で安威川と合流、大阪府と兵庫県の境を流れて尼崎市神崎で猪名川を合わせて尼崎港に注ぐ川。京都と西国を結ぶ要路。全長約二〇キロメートル。三国川。

出典　精選版 日本国語大辞典

日本歴史地名大系

神崎川
かんざきがわ

• 大阪府：総論
• 神崎川

大阪府北西部を流れる河川で、淀川水系を構成する河系である。神崎川本川は大阪市東淀川区南江口（みなみえぐち）で淀川から分岐し、大阪市西淀川区と兵庫県尼崎（あまがさき）市との間で大阪湾に注ぐまで、流路延長わずか二一・四キロ。しかし、安威（あい）川・猪名（いな）川およびその他の支流を合するので、流域面積は六二七平方キロに及び、その流域は茨木（いばらき）市・高槻（たかつき）市・摂津市・吹田（すいた）市・大阪市・豊中市・池田市・箕面（みのお）市・豊能（とよの）郡豊能町・同郡能勢（のせ）町と兵庫県川辺（かわべ）郡猪名川町・川西（かわにし）市・伊丹（いたみ）市・尼崎市および京都府亀岡（かめおか）市にまたがる。安威川は大阪市東淀川区相川（あいかわ）町で神崎川に合流するが、ここから神崎川は南西方へ流れ、千里丘陵から南流してくる糸田（いとだ）川・高（たか）川・天竺（てんじく）川を合せてから猪名川を合流し、次いで佃（つくだ）島・中（なか）島・西（にし）島の三つの島をつくって大阪湾に流入する。猪名川合流点より下流（一部は分流の左門殿川）は、大阪・兵庫の府県境である。

神崎川は古代から中世にかけては三国（みくに）川とよばれていた。三国川の文献上の初見は「続日本紀」延暦四年（七八五）正月一四日条（後述）。「文徳実録」仁寿三年（八五三）一〇月一一日条には「摂津国奏言、長柄三国両河、頃年橋梁断絶、人馬不通、請准堀江川、置二隻船、以通済渡、許之」とみえる。また「住吉大社神代記」にも所見。「太平記」巻三八（和田楠与箕浦次郎左衛門軍事）に「三国渡」がみえ、明徳元年（一三九〇）の三国堤支配状（東寺百合文書）と寛正四年（一四六三）作製の摂津国垂水庄図（教王護国寺文書）・垂水庄差図（東寺百合文書）などに三国堤が記載されている。しかし、「信長公記」には江口川・吹田川・神崎川とあり、江戸時代の絵図・文献にはすべて神崎川と記されている。

神崎川
かんざきがわ

• 兵庫県：総論
• 神崎川

淀川の分流。大阪市域の北東端、東淀川（ひがしよどがわ）区南江口（みなみえぐち）の東方で淀川と分れ、大阪府吹田（すいた）市高浜（たかはま）町付近で北から流れてきた安威（あい）川を合せ、ほぼ大阪市と吹田市・豊中（とよなか）市の境界を西に流れた後、尼崎市神崎町付近で北から流れてきた猪名（いな）川を合せ、以後はほぼ南西に転じて大阪市と尼崎市の境界を流れる。そして左門殿（さもんど）川・中島（なかじま）川・西島（にしじま）川を分ち、佃（つくだ）島・中島・西島（大阪市西淀川区）という三つの島を挟みつつ大阪湾に注ぐ。左門殿川が分れてからは、左門殿川・中島川が大阪市と尼崎市の境界をなす。長さは二一・四キロにすぎないが、安威川・猪名川などが合流するので流域面積は六二七平方キロに及ぶ。古代は三国（みくに）川とよばれていたが（「続日本紀」延暦四年正月一四日条など）、「信長公記」には神崎川と記され、江戸時代の文献・絵図にもすべて神崎川と記されている。神崎渡（現大阪市淀川区の府道大阪伊丹線神崎橋付近）一帯が中世には河港として栄え、河関が設けられたので、この辺りの神崎川という通称が中世末期から江戸時代初めにかけて定着したものと思われる。

天平勝宝八歳（七五六）一二月一七日の摂津国河辺郡猪名所地図写（尼崎市教育委員会蔵）には「東一入江今淀河是也」とあり、「今云々」はのちの書込みと思われるが、神崎付近は深く湾入した大阪湾の入江であり、現神崎川の下流域はまだ形成されていなかったことがうかがえる。

神崎川
かんざきがわ

• 滋賀県：神崎郡
• 永源寺町
• 神崎川

町南端の御在所（ございしよ）山北・西麓、雨乞（あまごい）岳北東麓に源を発し、鈴鹿山脈西側を北流、杠葉尾（ゆずりお）で茶屋（ちやや）川（愛知川本流）と合流する。流長約六・八キロ。俗称を大（おお）川もしくは南（みなみ）川といい、またミナゴともよんでいたが（神崎郡志稿）、大正一一年（一九二二）黄和田（きわだ）に発電所が稼動するに及んで神崎川の名が使われるようになった。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」

日本大百科全書(ニッポニカ)

神崎川
かんざきがわ

淀川(よどがわ)下流右岸の分流。延長約19キロメートル。大阪市東淀川区江口(えぐち)で淀川から分かれ、安威川(あいがわ)、猪名川(いながわ)などをあわせて大阪湾に注ぐ。中世まで三国川(みくにがわ)とよばれ、もともと淀川とは別の現安威川筋の川であったが、785年（延暦4）に堀で淀川と通じ、1878年（明治11）分流後の曲流部を真西に河道が付け替えられた。中世には江口、高浜（吹田(すいた)市）、大物浦(だいもつのうら)（尼崎(あまがさき)市）の河港が栄えた。現在沿岸は化学工業地帯となっている。

［前田　昇］

[参照項目] | 江口 | 神崎 | 大物

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

改訂新版　世界大百科事典

神崎川 (かんざきがわ)

淀川下流の分流の一つで，摂津市南端付近で淀川から分かれ，大阪市の北端を南西方向に流れて大阪湾に入る。流路の延長はわずか21kmであるが，安威川と猪名川を支流とするため，流域面積は627km²に及ぶ。下流には左門殿（さもんど）川，中島川の分流があって大阪府と兵庫県の境界をなす。古代から中世にかけては三国川と呼ばれた。785年（延暦4）の開削工事によって淀川と連絡し，以後淀川水運の幹線となり，江口，吹田，神崎，河尻の河港が発達した。沿岸一帯は低湿地で水害が頻発したため，江戸時代には悪水排除のためいくつかの水路が設けられ，下流では新田開発が進んだ。1878年に淀川からの新たな分水路，1904年にその締切堤防と水門が完成したが，その後河岸に染色，さらし，製紙などの工場の進出が目覚ましく，都市化が進展した。
執筆者：服部 昌之

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

神崎川
かんざきがわ

大阪府を流れる淀川の分流の1つ。大阪・摂津市境付近で分流，西流して兵庫県境で猪名川と合流，南西に流れて兵庫県との境界を形成して大阪湾に注ぐ。全長約 19km。中世には三国川とも呼ばれ，淀川水運の一翼をになったこともある。現在，沿岸には染色，化学，金属などの工場が立地し，その用排水路となっているため水質汚濁が問題となったが，近年は水質の改善がみられる。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典