神名帳(読み)じんみょうちょう

精選版 日本国語大辞典 「神名帳」の意味・読み・例文・類語

じんみょう‐ちょう ジンミャウチャウ【神名帳】

〘名〙 神社とその祭神の名を記す帳簿。とくに「延喜神名式」(延喜神名帳)を指すことが多い。これは奈良時代以降、祈年祭国家から幣帛(官幣・国幣)を受ける官社の国郡別一覧表で、祭神の総数三一三二座・神社の総数二八六一処が登録されている。この神名帳に記載されている神社は「式内の社」とよばれ、それ以外の「式外(しきげ)の社」と区別された。ほかに一国内の諸社を記録した「尾張国内神名牒」や、寺院で用いる「恒例修正月勧請神名帳」などが知られている。しんめいちょう。
延喜式(927)目録「巻第九 神祇九 神名帳」

しんめい‐ちょう ‥チャウ【神名帳】

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デジタル大辞泉 「神名帳」の意味・読み・例文・類語

じんみょう‐ちょう〔ジンミヤウチヤウ〕【神名帳】

神社とその祭神の名を記した帳簿。特に、延喜式の巻9と巻10をさし、朝廷から祈年祭としごいのまつり奉幣にあずかる3132座の祭神、2861の神社を国郡別に登載する。しんめいちょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「神名帳」の意味・わかりやすい解説

神名帳 (じんみょうちょう)

社名・神名を記した名簿。〈しんめいちょう〉ともいう。

《延喜式》巻九,巻十の神名式上下のことで,この部分だけがとくに取り出されて〈延喜式神名帳〉と呼ばれる。独立の写本などが作られるようになった時期は明確でないが,おそらく中世初期のことと思われる。律令制下の官社2861社(3132座)の一覧表で,国郡別に社格(大社,小社)や中央の神祇官,地方の国衙から幣帛を受ける祭儀の種類などを記してある。こういう官社一覧表は律令国家の神祇行政の必要上早くから作られていたとみえ,奈良時代の史料に見える〈神祇官記〉などはそれに当たるものらしい。その後《弘仁式》巻七~巻十で初めて神名式として整理され,続く《貞観式》では巻三~巻五が神名式に充てられている。この帳に記載の官社は今日なお〈式内社〉と呼ばれ,伝統の古さを誇っている。神名式は《延喜式》の中でも最も早く中世から研究の開始された部分であるが,なかでも近世の学者伴信友(ばんのぶとも)の《神名帳考証》は著名。
執筆者:

〈延喜式神名帳〉は国家(神祇官)が管轄する神社であるのに対して,諸国の国司が管理するため作成された神名帳を国内神名帳という。国内神名帳は国ごとに国司が管内神社をまつり,巡拝するのに必要とされ,国衙に備え付けられたが,現在伝えられているのは,三河上野若狭など20ヵ国に満たない。国内神名帳は,単に国帳,神社帳ともいわれ,また,神階と社名を記載する形式が多いことから,神階帳とも呼ばれた。中世以降は,寺院の法会の際に,国内諸神を勧請して,法楽をささげるために用いられた。
執筆者:

神名帳 (しんめいちょう)

神名帳(じんみょうちょう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神名帳」の意味・わかりやすい解説

神名帳
しんめいちょう

「じんみょうちょう」とも読む。別に神社帳、神帳、神祇官(じんぎかん)帳、官帳などともいう。神社名または神名を列記した公簿の意味である。『延喜式(えんぎしき)』巻9(神名上)・巻10(神名下)に収載されている全国の神名帳は、「延喜式神名帳」「式神名帳」ともいわれて有名である。全国を宮中・京中・五畿七道(ごきしちどう)諸国に分け、合計2861官社(3132座)の神名を列記している。式神名帳は延長(えんちょう)5年(927)の成立で、そこに登載される神社を、とくに式内社(しきないしゃ)または式社という。式神名帳のほかに、各国ごとに作成された神名帳があり、これをとくに国内神名帳という。これは、諸国の国司が、管内主要神社を祀(まつ)り、巡拝するために、また行政上必要とされた。当初は全国にそれぞれ存在したものと考えられるが、現在は十数か所のそれが現存するのみである。このほうは、神階(しんかい)と神社名を記している場合が多く、神階帳ともよばれたりしている。

[落合偉洲]

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百科事典マイペディア 「神名帳」の意味・わかりやすい解説

神名帳【じんみょうちょう】

神社名・神名を記した名簿。〈しんめいちょう〉とも。とくに《延喜式》巻9・巻10に載る〈神名式〉上・下を〈延喜式神名帳〉とよぶ。律令制下の官社を国・郡ごとに挙げ,社格(大社・小社),祭儀の種類を記す。2861社・3132座,記載される神社は延喜式内(えんぎしきない)社(式内社)とよばれる。中世には写本が作られ研究が始まった。国司が管内の神社を管理・祭祀するための神名帳を国内神名帳(国帳・神社帳・神階帳)という。→伴信友
→関連項目走湯山

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「神名帳」の解説

神名帳
じんみょうちょう

一般的に律令制下,神祇官所管の神名の登載帳をさす。この存在を示す史料の早い例として,「続日本紀」慶雲3年(706)2月26日条に19社の神名を「神祇官記ニ具ス」とあり,「古語拾遺」に天平年間に神帳が勘造されたとみえる。「延喜式」巻1に「祈年祭神三千一百卅二座(中略)並ニ神名帳ニ見ユ」とみえ,巻9「神名上」,巻10「神名下」の3132座の祭神と対応し詳細がわかる。この「延喜式」神名帳を神名帳と称することも多い。また一国内の国内神名帳や寺院の斎会用の神名帳もある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神名帳」の意味・わかりやすい解説

神名帳
しんめいちょう

「じんみょうちょう」とも呼ぶ。神社とその祭神の名を記す帳簿。特に『延喜式』の巻九と巻十に伊勢神宮以下の天神地祇 3132座が記されているので,これをさす場合が多い。宮中の神 36座をはじめとして,全国にわたって登録され,これに記された神社を式内社といい,登録されないが他の文献に表われる神社を式外 (しきげ) 社という。

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世界大百科事典(旧版)内の神名帳の言及

【神名帳】より

…〈しんめいちょう〉ともいう。
[延喜式神名帳]
 《延喜式》巻九,巻十の神名式上下のことで,この部分だけがとくに取り出されて〈延喜式神名帳〉と呼ばれる。独立の写本などが作られるようになった時期は明確でないが,おそらく中世初期のことと思われる。…

※「神名帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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