社会問題研究(読み)しゃかいもんだいけんきゅう

改訂新版 世界大百科事典 「社会問題研究」の意味・わかりやすい解説

社会問題研究 (しゃかいもんだいけんきゅう)

1919年1月弘文堂書房から発刊された河上肇(かわかみはじめ)の個人雑誌。月刊。30年10月第106冊をもって終刊した。第90冊(1929年3月)から95冊までは鈴木安蔵が編集している。1917年《貧乏物語》,翌年の《社会問題管見》の刊行以後,倫理的な社会改良主義の立場から急速にマルクス主義に接近した河上は,この雑誌によってマルクス主義者としての第一歩を踏み出した。第89冊までは河上ただ1人が執筆し,彼のマルクス主義研究の進展のあとをうかがうことができる。マルクス,エンゲルス原典からの翻訳は,多くが本邦初訳で,毎号数万部に及ぶ売行きをみせた。ほかに,《共産党宣言》《資本論》の解説や,ロシア革命,ソビエト制度の紹介もなされている。河上が社会運動の実践に参加し,29年8月大山郁夫,細迫兼光らによる〈新労農党樹立〉の提案がされるや,これを支持してこの雑誌も一時同党のために提供された。しかし,河上がこの党ともわかれて日本共産党の地下活動に入るにいたって,終刊した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の社会問題研究の言及

【河上肇】より

…《大阪朝日新聞》に連載後公刊した《貧乏物語》(1917)で文名大いにあがる。19年個人雑誌《社会問題研究》を創刊してマルクス主義の研究と普及に努め,さらに《資本主義経済学の史的発展》(1923)に対する櫛田民蔵の批判を機に,マルクス主義哲学に研究を進めるとともに,漸次実践運動とのかかわりも生じる。28年京大を辞職,《資本論入門》(1932)を最後に政治運動に入り,33‐37年獄中生活を送るが,思想的節操は守った。…

※「社会問題研究」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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