示談(読み)じだん

精選版 日本国語大辞典 「示談」の意味・読み・例文・類語

じ‐だん【示談】

〘名〙
① (「しだん」とも) 物事がまとまるように相談すること。意見を提示すること。
随筆・一話一言(1779‐1820頃)二〇「右之趣組合之同役へ得と示談致」
※歌舞伎・音響千成瓢(1876)大詰「長臣たる此の勝家に示談もなく、御家督定むる内心は、言はずと知れた逆臣久吉」
② 特に法律で、民事上の紛争を、裁判にかけないで当事者双方の話しあいで解決すること。和談。私話。
風俗画報‐四八号(1892)人事門「三年間に及びしが後ち終に示談(ジダン)となる」

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デジタル大辞泉 「示談」の意味・読み・例文・類語

じ‐だん【示談】

話し合いで決めること。特に、民事上の紛争を裁判によらずに当事者の間で解決すること。「示談が成立する」
[類語]相談打ち合わせ下相談談合話し合い合議協議商議評議評定ひょうじょう鳩首きゅうしゅ凝議ぎょうぎ内談用談来談商談額を集める膝を交える話し合う打ち合わせるはかはからう

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改訂新版 世界大百科事典 「示談」の意味・わかりやすい解説

示談 (じだん)
private settlement

民事上の法的紛争を裁判所の関与をへずに当事者間で解決する旨の和解契約。公正証書による場合には,一定の条件の下で,そのまま強制執行可能となるが,そうでない通常の示談は裁判上の和解(〈起訴前の和解〉または〈訴訟上の和解〉)と異なり,争いを法律上最終的に終了させる効力はなく,のちに紛争が再発したときは,当事者が裁判所に訴訟を提起することを妨げず,その場合は当事者は,これこれの内容の示談が成立していることを攻撃防御の方法として提出できるにすぎない。その場合,示談は,一般の契約と同じく,錯誤,詐欺あるいは強迫に基づいて締結されたとか,代理人に代理権限がなかったとかの理由で無効とされたりまたは取り消しうるものとされたりすることがある。自動車事故の損害賠償に関する示談には,被害者が〈以後いっさいの請求をしない〉旨の条項が入れられることがあるが,判例によれば,示談当時予想できなかった症状が後に発生した場合には,そのぶんまで請求権を放棄したことにはならないとされている。

 われわれの身の回りで発生する法的紛争の大多数は,裁判所に持ち込まれることなく示談で解決される。その場合,両当事者の側に弁護士が関与して,またはしかるべき法律相談機関の助言のもとになされるのであれば,法の諸規準に従った公正な解決となることを期待しうるが,そうでない場合は,示談は当事者の経済力,社会的勢力,知識,交渉能力などの相違を反映した不公正なものとなる可能性が大きい。自動車事故の損害賠償をめぐる紛争などの場合に,加害者側が企業など経済的余裕のある者であって,問題の処理に経験の深い専門職員が交渉にあたる場合などには,被害者は交渉において不利な立場に立つことがまれではない。日本では,資格ある法律職業家〈以外〉の人々が示談に関与することが多いが,その中で常習的に示談に介入し,素人の当事者の無知につけこみ,さまざまの詐術や暴力を用いて不当な賠償金を支払わせたり,不当な方法で賠償金を取り立てたり,不当な手数料をとったりする者は,〈示談屋〉と俗称される。

 犯罪を犯した者が,その犯罪行為によって被害者に与えた損害に対する賠償という民事面の問題について,しかるべき賠償金を支払って示談をすることが,刑事責任についての判断に事実上どのような影響を与えるかは,興味深い問題である。またその場合に,示談に応じた被害者については,加害者の刑事責任の追及について被害者が有する告訴権を放棄したとみるべきか否かが,法律上問題となる。放棄したとみなされるとする説もあるが,通説は,告訴権の放棄は告訴の取消しと同一の手続によるべきであり,示談だけでは告訴権の放棄にはならないとする。
和解
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「示談」の意味・わかりやすい解説

示談
じだん

民事上の紛争について裁判外で当事者間に成立した和解契約のことをいう。交通事故などの不法行為による損害賠償について、その賠償額や支払い方法などをめぐっての争いや、定められた時期に土地や家屋を引き渡さないときに生ずる私法上の争いを解決するために、当事者間の話し合いで互いに譲り合って、ある程度の満足を受けることになれば、最終的解決方法としての訴訟にする必要はなくなるわけである。当事者が裁判外でこのような話し合いをすることを一般に示談といっている。この示談は、訴訟が進行中であってもなすことができるが、訴訟上の和解とは異なり、それによっては当然に訴訟が終了するものではなく、その結果を裁判所に攻撃防御方法として提出できるだけである。したがって、示談書は、裁判上の和解(訴訟上の和解や起訴前の和解)調書のように確定判決と同一の効力をもつものではない(民事訴訟法89条・267条・275条1項、民事訴訟規則169条)。ただ多くの場合には、この和解契約が結ばれたことを証明することによって、それ以上、訴訟を続ける意味がなくなったと判断されれば、訴えを退けてもらうことができることになろう。これに対して、訴訟上の和解や起訴前の和解は、前記のように、それが調書に記載されると、確定した判決と同一の効果が認められ、執行が必要な場合には、それに基づいて強制執行もできるなどの強い効力が与えられている(民事執行法22条)。

[内田武吉・加藤哲夫]

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百科事典マイペディア 「示談」の意味・わかりやすい解説

示談【じだん】

(1)裁判外において民事上の紛争を解決すること。当事者が互いに譲歩する和解による場合や仲裁による場合,さらに第三者機関による斡旋を法律が特に予定している場合もある。裁判上の和解と異なり当然に訴訟を終了させる効力はない。(2)刑事訴訟法上,被告人側と被害者側とが示談した場合,告訴権が放棄されたことになるか否かが問題となる。通説は,告訴権の放棄は告訴の取消しと同一手続によるべきであり,示談だけでは告訴権の放棄にならないとする。
→関連項目裁判外紛争処理調停

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「示談」の意味・わかりやすい解説

示談
じだん

民事上の紛争を裁判外で解決する契約。示談の内容に当事者の互譲が含まれていれば,その法的性質は和解 (民法 695) となる。示談には裁判上の和解のように訴訟を終了させる効力はなく,当事者は示談の成立した事実を単に裁判上の攻撃防御方法として提出しうるにすぎない。なお,交通事故につき示談が成立したのち,被害者に後遺症が現れた場合について,判例は,示談成立当時に予想できなかった損害については,あとからでもその賠償請求をすることができるものとしている。

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損害保険用語集 「示談」の解説

示談

紛争の当事者が、話し合いによりお互いに譲り合うことで妥当な賠償額の授受を約束し、争い事の解決を図ることをいいます。(交通事故の多くは示談により解決されています。)

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保険基礎用語集 「示談」の解説

示談

示談は、損害賠償の解決方法の一つであり、裁判外で被害者・加害者がお互いに歩み寄り、妥当な賠償額の授受を約束して円満に解決を図るものです。

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普及版 字通 「示談」の読み・字形・画数・意味

【示談】じだん

和解。

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