磐梯山(読み)ばんだいさん

精選版 日本国語大辞典 「磐梯山」の意味・読み・例文・類語

ばんだい‐さん【磐梯山】

福島県中北部の成層火山。標高一八一九メートル。檜原湖、秋元湖など多数の湖が北側の麓にある。会津富士

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デジタル大辞泉 「磐梯山」の意味・読み・例文・類語

ばんだい‐さん【磐梯山】

福島県北部にある火山。標高1816メートル。明治21年(1888)の爆発で檜原ひばらなどができた。会津富士。

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日本歴史地名大系 「磐梯山」の解説

磐梯山
ばんだいさん

耶麻郡猪苗代町・磐梯町・北塩原きたしおばら村にまたがる山。主峰は標高一八一八・六メートル。寛文六年(一六六六)の「会津風土記」は、主峰に連なるいかずち嶽・烏帽子えぼし嶽・赤埴あかはに山・見禰みね山・小磐梯こばんだいをあげる。「新編会津風土記」は主峰のほかに「西を小磐梯といひ、東を赤埴山といひ、又見禰山と称す」と三峰をあげる。小磐梯は明治二一年(一八八八)の噴火により吹飛んで今はない。会津を代表する山で、会津山とも称され、「万葉集」巻一四に「会津嶺の国をさ遠み逢はなはば偲ひにせもと紐結ばさね」とみえる会津嶺もこの山をさすと思われる。また「会津鎮山」(会津風土記)・「四郡第一の名山」(新編会津風土記)ともいわれる。頂上に小祠があり、「新編会津風土記」に「絶頂に磐梯明神とて石の叢祠あり」と記す。磐梯明神は磐梯山の神である。磐梯町恵日えにち寺脇にある磐梯神社はこの磐梯山の神を祀る社。永正八年(一五一一)高野山で修復したと記される絹本著色慧日寺絵図(恵日寺蔵)では、境内最奥に磐梯社を描く。「新編会津風土記」に「磐梯神社金堂の戌亥の方にあり、当寺草創の時祭れる所なり」とある。

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改訂新版 世界大百科事典 「磐梯山」の意味・わかりやすい解説

磐梯山 (ばんだいさん)

福島県北部,猪苗代湖北方に位置する火山。頂上付近の直径約1.5kmの沼ノ平火口を中心に円錐形の山容を呈し,会津富士ともいわれている。《万葉集》の東歌に〈会津嶺(あいづね)〉と詠まれ,民謡《会津磐梯山》でも親しまれている。沼ノ平火口は琵琶沢などの浸食谷によって火口壁が破壊され,このため山頂が主峰の大磐梯山(1819m),櫛ヶ峰(1636m),赤埴(あかはに)山(1430m)の3峰に分かれている。この火口は806年(大同1)に爆発した古い噴火口で,火口内には大小の沼や高層湿原があり,コケ類の繁茂が特に顕著である。磐梯山の北側は1888年の大爆発によってすっかり地形が変わり,斜面には北に開いた直径2kmの馬蹄形の爆発カルデラがある。この爆発の泥流によって生じた堰止湖の檜原湖小野川湖秋元湖などを含む一帯は磐梯高原(裏磐梯高原)とよばれる。一方,表磐梯とよばれる南側はゆるやかな円錐形の形態をよく残し,磨上(すりあげ)原などで代表されるようなすそ野が広くみられる。

 磐梯朝日国立公園に属し,1970年に磐梯山西麓を通り表磐梯と磐梯高原を結ぶ有料道路磐梯ゴールドライン(延長約18km)が,72年には磐梯高原を通る磐梯吾妻レークライン(約13km)が開通し,これによりすでに開通していた磐梯吾妻スカイラインと一体となった広域山岳高原観光ルートが完成し,急速に観光地化が進んだ。磐梯山南面に国設猪苗代スキー場(現,猪苗代スキー場中央)があり,ふもとには民宿も多い。また,西の猫魔ヶ岳に続く山稜,1280mの高所には中ノ湯温泉(酸性緑バン泉,85℃)があり,猪苗代町見禰(みね)には,1888年の噴火の際に火口から泥流によって約5kmも運ばれた長さ9m,幅6m,高さ3mの巨大な安山岩塊の〈見禰の大石〉(天)がある。
執筆者:

磐梯山が分布する地域は会津構造盆地の北東縁で,棚倉破砕帯の延長部に相当する。磐梯山の基盤岩類は中新世から鮮新世の砂質,泥質および凝灰質の堆積岩である。磐梯山の火山活動開始時期はよくわかっていないが,西に隣接する猫魔ヶ岳の活動の終息後で,約30万年前ころには活動していたと推定される。活動前期は火山砕屑物を,後期は溶岩をそれぞれ多く噴出させ,総噴出量は約30km3と推定される。磐梯山の岩石はすべて輝石安山岩で,一般に斑晶含量が比較的多い。磐梯山の有史時代の活動で記録に残っていて確からしいのは,806年と1888年とで,ともに水蒸気爆発型の活動であった。

 著名な1888年の噴火は,爆発性が強く,マグマを噴出させないウルトラブルカノ式の活動であった。活動は7月15日午前7時45分に開始され,おもな活動は最初の約2時間くらいであった。かつての小磐梯山の山頂部を構成した多量の火山砕屑物が一瞬にして(時速約80km),北麓山村を襲い,大きな被害を与えた(この火山砕屑物の流動現象を岩屑流あるいはドライアバランシュという)。被害は5村11集落におよび,死者461名に達した。また檜原川,長瀬川などがせき止められて,大小100余の湖沼が生まれた。小磐梯山山頂部は完全に失われ,U字形に開いた凹地形(馬蹄形爆発カルデラ)が形成された。この噴火活動の総エネルギーは約1023erg,爆発の圧力は約60気圧と推定されている。この噴火現象はアメリカのワシントン州南西端にあるセント・ヘレンズ火山の1980年5月18日の活動とも酷似し,注目されている。
執筆者:

磐梯山は山麓部の住民から農業神の山として信仰されているほか,かつては修験道の霊場でもあった。ただし修験道の道場としては吾妻山も含む山々にまたがって展開されており,磐梯山はその一画を占めてきたとみられる。そのなかで磐梯山をきわだたせたのは,徳一の開基と伝える慧日(えにち)寺(現,恵日寺)の存在である。一時,子院3800坊,寺僧300人,僧兵数千人,寺領18万石の勢力を誇ったとも称され,その繁栄ぶりは永正8年(1511)銘のある絹本著色《恵日寺絵図》の伽藍配置や遺物などから知られるが,1589年(天正17)伊達政宗の会津侵攻によって炎上,その後再建されたものの,かつての隆盛を再現することはなかった。寺跡は慧日寺跡として国の史跡に指定されている。恵日寺および磐梯山をめぐる信仰習俗のなかでイナバツと称される習俗は注目される。これは大頭小頭といい,曲物をつけた木製鉾を持って村々を巡り初穂を集める習俗で,慧日寺の権威と山麓住民の磐梯山に寄せる信仰によって維持されてきたものである。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「磐梯山」の意味・わかりやすい解説

磐梯山【ばんだいさん】

福島県中北部,猪苗代湖の北にある成層火山。標高1816m(大磐梯山)。安山岩からなり,山頂に火口跡沼ノ平がある。《万葉集》にみえる会津領にあたるとされ,信仰の山として江戸時代から登山者が多かった。北壁の小磐梯山は1888年の爆発で崩壊し,死者444人を出した。またその泥流によって磐梯高原ができた。南側は成層火山の形をよくとどめる。磐梯朝日国立公園に属し,山頂からの展望は雄大。磐越西線猪苗代駅,翁島駅のほか,磐梯高原側からも登山路がある。噴火口周辺では今も有毒ガスが発生し,立ち入りが制限されており,活火山として気象庁が常時観測している。
→関連項目秋元湖猪苗代[町]猪苗代湖小野川湖北塩原[村]五色沼山体崩壊泥流日本百名山磐梯式噴火檜原湖福島[県]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磐梯山」の意味・わかりやすい解説

磐梯山
ばんだいさん

福島県北部、耶麻(やま)郡の猪苗代(いなわしろ)、磐梯の2町と北塩原村にまたがる火山。標高1816メートル。新第三紀の砂質、泥質と凝灰質の堆積(たいせき)岩を基盤とする輝石安山岩の成層火山で、いまから3万年ほど前から活動してきたらしく、また、有史以後の噴火は水蒸気爆発2回だけである。頂部には、主峰の大磐梯や櫛ヶ峰(くしがみね)、赤埴(あかはに)山などで囲まれた直径約1.5キロメートルの沼ノ平火口があり、内部に大小の沼や高層湿原がある。火口は806年(大同1)に爆発、そのとき南方の猪苗代湖ができたという伝説があるが、信じがたい。火口の北壁をなしていた小磐梯山は、1888年(明治21)7月15日に突発した大爆発で崩壊し(1.2立方キロメートル余)、直径約2キロメートルのU字形の爆発カルデラができた。大岩屑(がんせつ)流が時速約80キロで北麓(ほくろく)に押し出し、諸集落を埋没し(死者461人)、裏磐梯三湖などの多数の湖沼を生じた。長い休眠後におきたこの大水蒸気爆発を典型とする特殊な噴火形式を磐梯式噴火という。1938年(昭和13)と1954年(昭和29)に、カルデラ壁大崩壊で被害を出した。カルデラ壁や沼ノ平火口内には硫気孔が散在。南麓の磐椅神社(いわはしじんじゃ)は山霊を祀(まつ)るが、椅は梯と同義で、天に昇る磐のはしごの意。農業神である。会津富士と仰がれ、民謡「会津磐梯山」でも親しまれ、磐梯朝日国立公園に属す。八方台口からの登山路が歩行距離最短だが、猪苗代口、翁島(おきなじま)口、裏磐梯口、川上口などからも登れる。若松測候所が常時火山観測中。

[諏訪 彰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磐梯山」の意味・わかりやすい解説

磐梯山
ばんだいさん

福島県北部,猪苗代湖の北にそびえる火山活火山で,常時観測火山。標高 1816m。那須火山帯に属する。基盤は花崗岩および安山岩からなる。南麓と東麓に裾野をひく美しい円錐形火山(→成層火山)。最高峰の大磐梯山ほか赤埴山(1430m),櫛ヶ峰(1636m)などが沼ノ平の旧火口を囲む。大磐梯の北側には旧火口を囲むもう一つの主峰小磐梯(別称裏磐梯)があったが,1888年の爆発で山体崩壊が起こり,死者 461人を出した。泥流は北側に流れ,檜原湖小野川湖秋元湖などの堰止湖と,五色沼などの小湖を形成。この爆発は磐梯式噴火として世界的に有名。山麓には,中ノ湯温泉や川上温泉,押立温泉などの温泉郷があり,夏の避暑や登山,冬のスキーの基地として利用されている。磐梯朝日国立公園に属する。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「磐梯山」の解説

ばんだいさん【磐梯山】

福島の日本酒。吟醸酒、純米酒、本醸造酒、普通酒がある。原料米は五百万石など。仕込み水は磐梯西山麓湧水群の伏流水。蔵元の「磐梯酒造」は明治23年(1890)創業。所在地は耶麻郡磐梯町大字磐梯字金上壇。

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事典 日本の地域遺産 「磐梯山」の解説

磐梯山

(福島県耶麻郡猪苗代町;耶麻郡北塩原村;耶麻郡磐梯町)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「磐梯山」の解説

磐梯山

(福島県)
日本百名山」指定の観光名所。

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