磁石鋼(読み)ジシャクコウ

デジタル大辞泉 「磁石鋼」の意味・読み・例文・類語

じしゃく‐こう〔‐カウ〕【磁石鋼】

永久磁石に用いられる特殊鋼KS鋼新KS鋼MK鋼など。スピーカー電気計器継電器発電機などに広く使われる。マグネット鋼磁石合金

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精選版 日本国語大辞典 「磁石鋼」の意味・読み・例文・類語

じしゃく‐こう ‥カウ【磁石鋼】

〘名〙 永久磁石に用いられる特殊鋼。スピーカー、電気計器、継電器、発電機などに広く使われ、日本で発明されたKS鋼、新KS鋼、MK鋼などが有名。マグネット鋼。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁石鋼」の意味・わかりやすい解説

磁石鋼
じしゃくこう

鋼とは炭素量が2%以下の鉄合金総称であることから、鉄を主成分とする永久磁石(合金)にも鋼の名称をつけてよぶことがある。KS鋼(1916)、MK鋼(1932)は磁石鋼の代表例である。前者は鉄‐炭素‐コバルトクロムタングステン合金であって、炭素を含有する鋼の特徴的な組織である硬いマルテンサイトを利用している。後者は炭素を必要としない鉄‐ニッケルアルミニウム合金で、鉄の微粒子(直径約20ナノメートル)がニッケル、アルミニウム中に析出した組織を利用している。それらの磁石鋼は当時としてはもっとも優れた永久磁石として用いられていた。しかし第二次世界大戦後から現在まで、鉄合金以外においても次々とより高性能な磁石が発見された。それらには鋼の名称はつけないし、新しく登場した鉄合金磁石(たとえば、鉄‐クロム‐コバルト磁石合金)でも鋼の名をつけて、たとえばクロム‐コバルト磁石鋼とよばれることはほとんどない。

 なお、永久磁石材料以外にも習慣として「鋼」をつけてよばれる鉄系磁性合金がある。たとえば、電力用の変圧器モーターなどの磁心材料として用いるケイ素鋼(鉄‐ケイ素合金)、磁石から発生する磁界の温度変化を調節するのに用いる整磁鋼(鉄‐ニッケル合金)である。

[本間基文]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁石鋼」の意味・わかりやすい解説

磁石鋼
じしゃくこう
magnet steel

永久磁石鋼。鉄は低温のα状態で強磁性で,その合金もフェライト地のものは強磁性を保つが,その磁気ヒステリシス (履歴) は鋼種により変化がある。磁気履歴の高さ (残留磁化) B ,幅 (保磁力) H とも大きいことが磁石鋼の条件で,磁石の性能を (BH) の極大値で表わすことが多い。磁石鋼はすべて硬さが大で,それにはマルテンサイト組織の焼入れ硬化型と,化合物を析出させる析出硬化型がある。高炭素鋼タングステン,クロム,コバルトなどの合金鋼,KS鋼,MT鋼は前者,MK鋼,MKS鋼は後者である。最近は析出硬化型のものが増している。焼入れ型でも析出硬化型でも,最高性能を得るにはデリケートな熱処理を必要とし,鋼種によっては磁場中で冷却する磁冷という特殊な方法をとる。 MKSおよび MK系統の磁石は鍛造ができないのですべて鋳造とするが,他の鋼種は鍛造で成形される。ただし粉末を材料とする酸化物 (フェライト) 磁石または粉末磁石は焼結して成形する。日本は KS鋼,MK鋼などの先駆的業績以来,磁石材料の開発では世界的に高水準を保っている。 (→磁性材料 )

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化学辞典 第2版 「磁石鋼」の解説

磁石鋼
ジシャクコウ
magnet steel

強い磁場をかけないと十分に磁化しないが,いったん磁化されると磁場を取り去っても容易にその磁性が失われない永久磁石用鋼.製造方法により二つのタイプに分けられる.その第一は鍛造磁石で,鍛造で成形したのち,焼入れし,オーステナイトからマルテンサイトへ格子変態させて高保磁力を生じさせるもので,焼入れ硬化型ともいう.安価なものには炭素鋼も使われるが,磁性が不安定で,高級なものでは合金鋼が用いられ,本多光太郎らのKS鋼(0.9質量% C-3質量% Cr-4質量% W-35質量% Co)はこの種の磁石鋼である.第二のタイプは鋳造磁石で,永久磁石の90% を占める.合金元素を多量に含み,もろくて鍛造できないため,鋳物として製造し,金属間化合物の時効析出による効果を利用して,高い保磁力を生じさせるもので,析出硬化型ともよばれる.1931年に三島徳七が発明したMK鋼(10質量% Al-16質量% Ni-12質量% Co-6質量% Cu)は,その後改良が加えられ,磁石鋼として広く用いられている.アメリカではアルニコ磁石とよばれている.

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