硫酸銅(読み)りゅうさんどう(英語表記)copper sulfate

翻訳|copper sulfate

精選版 日本国語大辞典 「硫酸銅」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐どう リウサン‥【硫酸銅】

〘名〙 銅の硫酸塩。化学式 CuSO4 白色の粉末。普通は五分子の結晶水をもつ青色結晶で、胆礬(たんばん)として天然にも産する。青色顔料媒染剤駆虫剤防腐剤医薬などに使用。〔植学啓原(1833)〕

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デジタル大辞泉 「硫酸銅」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐どう〔リウサン‐〕【硫酸銅】

銅の硫酸塩
硫酸銅(Ⅱ)。無水和物は白色の粉末。水を吸収して五水和物になりやすい。五水和物は青色の結晶で、胆礬たんばんともいい、酸化銅希硫酸に溶かして作る。ボルドー液・青色顔料・防腐剤など用途が広い。化学式CuSO4
硫酸銅(Ⅰ)。白色の粉末。分解して硫酸銅(Ⅱ)になりやすい。化学式Cu2SO4

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改訂新版 世界大百科事典 「硫酸銅」の意味・わかりやすい解説

硫酸銅 (りゅうさんどう)
copper sulfate

銅の硫酸塩で,銅の酸化数ⅠとⅡの化合物がある。

化学式Cu2SO4。酸化銅(Ⅰ)と硫酸ジメチルとの反応で合成される。無色の結晶性固体。水と作用すると直ちに加水分解して,銅,硫酸銅(Ⅱ),酸化銅(Ⅱ)を生ずる。したがって水溶液中でこれを合成することはできない。

化学式CuSO4。無水硫酸銅ともいう。白色固体,比重3.64。5水和物CuSO4・5H2Oを190℃に加熱すると得られる。4個のO原子がCu原子に平面4配位し(Cu-O原子間距離1.9~2.0Å),これと垂直方向に2個のO原子が配位している(Cu-O原子間距離2.4Å)。斜方晶系。650℃に加熱するとSO3を発生しCuOとなる。メチルアルコール100gに1.04g溶ける。エチルアルコールに不溶。水を吸収して青色を呈するので有機液体中の水分の検出あるいは脱水に用いられる。

化学式CuSO4・3H2O。3個のH2O分子のOと1個のSO4のOが平面に4配位し(Cu-O原子間距離1.96Å),これと垂直方向にSO4のO原子が2個異なる距離に配位している(Cu-O原子間距離2.39Åおよび2.45Å)。この配位多面体水素結合によりつながっている。

化学式CuSO4・5H2O。硫酸銅(Ⅱ)水溶液から結晶させるとき生ずる。青色結晶,三斜晶系。格子定数a=6.105Å,b=10.72Å,c=5.949Å,α=97°34′,β=107°17′,γ=77°26′。立体構造を図1に示す。Cuには4分子のH2Oが平面上に,それと垂直方向に2個のSO4がそれぞれOによって配位している。さらに5番目のH2Oは,Cuに配位したH2OのOHおよびSO4のOと4本の水素結合をつくっている。加熱したときに最後に残るのはこのH2Oであり,SO4との結合の強さを示すものとみなされる。またこの構造は図2に示すようにも表される。すなわちCuとSO4が鎖状につながり,その鎖を結晶水が水素結合で連結しているとみることができる。比重2.286,水100gに対する溶解度14.3g(0℃),22.8g(25℃),75.4g(100℃)。メチルアルコール100gに対する溶解度15.6g(18℃)。エチルアルコールに不溶。グリセリン可溶殺菌剤,ガラスの着色剤,材木の防腐に用いられ,石灰乳との混合物はボルドー液といい,ブドウのべと病予防に用いられる。これはCu2⁺のべと菌に対する強い殺菌力によるもので,このほかジャガイモ,トマトバナナ等多くの作物に対し使用されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸銅」の意味・わかりやすい解説

硫酸銅
りゅうさんどう
copper sulfate

銅の硫酸塩で、一価および二価銅の化合物が知られている。

(1)硫酸銅(Ⅰ) 無色あるいは灰色の粉末。化学式Cu2SO4、式量223.15。銅を200℃に加熱した濃硫酸に溶かし、これをメタノール(メチルアルコール)中に滴下して沈殿させる。あるいはエーテル中で酸化銅(Ⅰ)と硫酸ジメチルの当量を反応させる。乾燥空気中では安定であるが、湿った空気中では徐々に、水を加えればただちに分解する。

(2)硫酸銅(Ⅱ) 無水和物CuSO4と五水和物がある。無水和物はハイドロカイアナイトとして、五水和物は胆礬(たんぱん)として天然にも産する。無水和物は無色の粉末。式量159.6。メタノールにはわずかに溶けるが、エタノール(エチルアルコール)には溶けない。水を吸収して五水和物になりやすいため、有機化合物の乾燥剤ないしは脱水剤として用いられる。

 五水和物は、銅に希硫酸と空気を作用させるか、酸化銅(Ⅱ)CuOを希硫酸に溶かし、濃縮して結晶化させる。工業的には黄銅鉱に空気を通じて熱し、生じた硫酸銅(Ⅱ)を水で抽出するか、銅精錬の電解廃液を利用するなどして得られている。青色の結晶。乾燥空気中では徐々に風解する。熱すると45℃で三水和物CuSO4・3H2Oに、110℃で一水和物CuSO4・H2Oに、250℃で無水和物となる。水によく溶け、グリセリン、メタノールなどにも溶ける。水酸化ナトリウム水溶液を加えて熱すると黒色の酸化銅(Ⅱ)を沈殿する。アンモニア水では初め塩基性硫酸銅の青緑色沈殿を生じるが、過剰のアンモニアで、濃青色のアンミン錯塩を生ずる。

  CuSO4・Cu(OH)2+8NH3
  ―→[Cu(NH3)4]SO4+[Cu(NH3)4](OH)2
 電解液となるほか、他の銅塩の原料、顔料、ボルドー液の原料、媒染剤、分析試薬など各種の用途がある。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸銅」の意味・わかりやすい解説

硫酸銅
りゅうさんどう
copper sulfate

(1) 硫酸銅 (I)  化学式 Cu2SO4 。無色あるいは灰色の粉末。
(2) 硫酸銅 (II)  化学式 CuSO4 。普通5水塩で存在することが多く,天然では胆礬 (たんばん) として産出する。高純度のものは酸化銅を希硫酸に溶かし蒸発して結晶を得て,再結晶法で精製する。工業的には銅屑に希硫酸と空気を反応させて生成する。5水塩は青色の三斜晶系結晶,比重 2.28,有毒。温度を上げると段階的に結晶水を失い,250℃以上では無水物となる。これは無色粉末で,乾燥剤として用いられる。銅像などの緑青は塩基性炭酸銅 CuCO3・Cu(OH)2 といわれてきたが,大部分は塩基性硫酸銅 CuSO4・3Cu(OH)2 である。銅メッキ液,媒染剤,顔料,植物の殺菌剤の原料である。

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百科事典マイペディア 「硫酸銅」の意味・わかりやすい解説

硫酸銅【りゅうさんどう】

(1)硫酸銅(I)Cu2SO4 無色の粉末。水を加えると直ちに分解する。(2)硫酸銅(II)CuSO4・5H2O 比重2.286。青色結晶。ふつう硫酸銅といえばこれをさす。水に可溶。熱すると結晶水を失い,45℃で3水和物,110℃で1水和物,250℃で無水和物となる。無水和物は無色の粉末,比重3.603。熱すると600〜700℃で分解してCuOとなる。放置すると空気中の湿気を吸ってもとの5水和物となる。銅塩の原料,顔料,殺虫剤(ボルドー液),媒染剤,銅めっき,医薬などに使用。天然産のCuSO4・5H2Oを胆礬(たんばん)といい,銅鉱床の酸化帯に産する。
→関連項目ボルドー液

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