硫酸ナトリウム(読み)りゅうさんナトリウム(英語表記)sodium sulfate

精選版 日本国語大辞典 「硫酸ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐ナトリウム リウサン‥【硫酸ナトリウム】

〘名〙 (ナトリウムはNatrium) ナトリウムの硫酸塩化学式 Na2SO4 無色の結晶。一〇水塩は芒硝(ぼうしょう)といい、空気中で徐々に風解する。ガラス・パルプ・群青(ぐんじょう)合成洗剤・医薬などに用いる。硫酸ソーダ

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デジタル大辞泉 「硫酸ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐ナトリウム〔リウサン‐〕【硫酸ナトリウム】

ナトリウム硫酸塩。無色の結晶。無水和物は硫酸ソーダともいい、ガラス・パルプの製造などに用いる。一〇水和物を芒硝ぼうしょうともいい、下剤などに利用。化学式Na2SO4

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改訂新版 世界大百科事典 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム (りゅうさんナトリウム)
sodium sulfate

化学式Na2SO4。天然には無水和物がボウ(芒)硝石thenarditeとして産する。無水和物,他に7水和物,10水和物が知られる。10水和物は俗にボウ硝グラウバー塩などと呼ばれる。名称は,結晶の形(芒(のぎ)状)ならびに17世紀にドイツのJ.R.グラウバーがこれを利尿剤,下剤などとして用いたことによる。天然にミラビライトmirabiliteとして産し,また複硫酸塩の石灰ボウ硝glauberite Na2SO4・CaSO4として岩塩鉱床に産する。無水和物を無水ボウ硝,10水和物を結晶ボウ硝ということもある。無水和物は無色斜方晶系結晶。正四面体のSO42⁻が存在し,S-O原子間距離1.49Å,Na-O原子間距離2.32Å,2.44Å,2.48Å。熱すると100℃で単斜晶系,500℃以上では六方晶系となる。融点884℃,沸点1429℃。比重2.698。屈折率1.447。空気中に放置すると徐々に水分を吸って10水和物となるため,中性の弱い乾燥剤として用いられる。水100gに対する溶解度5g(20℃),42g(100℃)。水溶液は中性。水溶液からは室温で10水和物が結晶する。7水和物は準安定な無色正方晶系結晶。水100gに対する溶解度44.9g(0℃),202.6g(26℃)。10水和物は無色単斜晶系結晶。比重1.464。屈折率1.396。32.38℃で結晶水に溶けて溶液となる。乾燥した空気中では徐々に風解し,100℃では無水和物となる。水100gに対する溶解度36g(15℃),412g(34℃)。グリセリンに可溶,エチルアルコールに不溶。[Na(H2O)6]八面体が2稜共有のジグザグ鎖をつくり,この{Na2(H2O)82⁺}∞とSO42⁻とのイオン結合で,残りの2H2Oは水和水分子と水素結合でつながっている。

 天然産のボウ硝石,ミラビライトなどから再結晶によって,あるいは石灰ボウ硝やキーゼル石などを塩化ナトリウムで処理して得られる。工業的には,古く塩化ナトリウムと硫酸を強熱するルブラン法によって無水和物をつくる方法が盛んであったが,現在ではほとんど行われなくなり,ビスコース人絹工業で副生するボウ硝(人絹ボウ硝といっている)が大量に得られている。そのほか副生ボウ硝として,二クロム酸ナトリウム過塩素酸アンモニウム,ホウ酸,ギ酸などの製造に際して,あるいはグルタミン酸ナトリウム製造時に得られる。10水和物を40~100℃で乾燥すると無水和物が,また過飽和水溶液を5℃以下に冷却するかエチルアルコールを加えると7水和物が得られる。合成洗剤のビルダー(洗浄力を高めるために加える添加剤)として,またパルプ製造,ガラス工業,金属製錬,染料工業などで広く使用され,下剤として医薬品にも用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム
りゅうさんなとりうむ
sodium sulfate

ナトリウムの硫酸塩。天然にはテナール石として無水和物(式量142.2)の形で産出する。十水和物はボウ硝、グラウバー塩(ドイツのグラウバーが「奇跡塩」と称して医療に用いた)とよばれ、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを硫酸で中和した水溶液から、32.48℃以下で晶出する。工業的にはビスコースレーヨン製造の副産物として大量に製造される。

 無色の結晶で、乾燥空気中では徐々に風解する。加熱すると32.38℃で結晶水に溶けて融解し、100℃で無水和物となる。水によく溶け、アルコールには不溶。無水和物(斜方晶系、比重2.698)は徐々に水分を吸収して十水和物に戻る。過飽和溶液をつくりやすく、これを5℃以下に冷却するか、アルコールを加えると、準安定な七水和物の無色の結晶(正方晶系)が得られる。無水和物はガラスや硫化ナトリウムの製造原料、また乾燥剤として用いられる。十水和物は冷却剤や医薬品(下剤)として用いられる。

[鳥居泰男]

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化学辞典 第2版 「硫酸ナトリウム」の解説

硫酸ナトリウム
リュウサンナトリウム
sodium sulfate

Na2SO4(142.04).天然にはテナルド石として温泉水中に産出し,十水和物はボウ硝,グラウバー塩とよばれている.炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウム水溶液を硫酸で中和して冷却すると,十水和物が得られる.これを100 ℃ で乾燥すると,無水物となる.無水物は無色の斜方晶系結晶.密度2.66 g cm-3.融点884 ℃.222 ℃ で単斜晶系に,また276 ℃ で六方晶系に転移する.水100 g に対する溶解度は4.76 g(0 ℃),19.4 g(20 ℃),49.6 g(32.45 ℃),42.7 g(100 ℃).エタノールに不溶.湿った空気中に放置すると水和物となる.十水和物は無色の単斜晶系結晶.密度1.46 g cm-3.風解性で,32.4 ℃ で融解して脱水がはじまり,100 ℃ で無水物となる.水に易溶,エタノールに不溶.33 ℃ の飽和水溶液を5 ℃ に冷却すると七水和物が析出する.七水和物は準安定な正方晶系結晶で,水に可溶,エタノールに不溶.乾燥剤,寒剤,医薬品(下剤),化学試薬,食品添加物,飼料添加物,染料,パルプの製造,ガラスの製造,洗剤のビルダー,入浴剤などに用いられる.[CAS 7757-82-6:Na2SO4][CAS 7727-73-3:Na2SO4・10H2O]

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百科事典マイペディア 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム【りゅうさんナトリウム】

化学式はNa2SO4。比重2.698,融点884℃。無色の結晶,水に可溶。飽和水溶液から常温で結晶させると10水和物が得られ,これが普通。10水和物は俗にボウ硝あるいはグラウバー塩と呼ばれ,比重1.464の無色の結晶で,水に可溶。32.38℃で結晶水に溶け,100℃で無水物になる。水和物を空気中に放置すると風解するが,無水和物を湿った空気中におくと水和物となる。無水和物はガラスの製造,乾燥剤,10水和物は下剤などに用いられる。塩化ナトリウムと濃硫酸を加熱すると無水和物が得られ,炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムを硫酸で中和した溶液から水和物の結晶が得られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム
りゅうさんナトリウム
sodium sulfate

化学式 Na2SO4 。古くは硝酸製造での副産物である硫酸水素ナトリウムと食塩を加熱して製造したが,現在では濃硫酸と食塩を強熱して製造する。また北アメリカ西部などで天然物として産出する。無水物は無色の固体で,水によく溶ける。比重 2.70,融点 884℃。室温で結晶させると 10水塩として晶出する。無色単斜晶系結晶,比重 1.46。これをグラウバー塩または芒硝ともいう。加熱すると 32.4℃で結晶水に溶ける。ガラス原料,クラフト紙や合成洗剤の製造,染色および紡績など工業上広く用いられる。

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