研削砥石(読み)けんさくといし(英語表記)grinding wheel

改訂新版 世界大百科事典 「研削砥石」の意味・わかりやすい解説

研削砥石 (けんさくといし)
grinding wheel

一定の形状寸法をもつように砥粒を結合した,研削作業に使用する回転工具人造いしと天然といしとに大別されるが,工業的に用いられるのは,ほとんどが人造といしである。

研削といしは砥粒,結合剤,気孔の3要素から構成されており,用いる砥粒には白色アルミナ質(WA),褐色アルミナ質(A),単一結晶アルミナ質(HA),淡紅色アルミナ質(PA),緑色炭化ケイ素質(GC),黒色炭化ケイ素質(C),立方晶窒化ホウ素(cBN),人造ならびに天然のダイヤモンドなどがある。結合剤は,砥粒を結合支持し,といしとしての形状を保つための材料で,切りくずが逃げるための空孔である気孔をも形成する。結合剤の種類によって,ビトリファイドといし,シリケートといし,マグネシアといし,レジノイドといし,エラスチックといし(シェラックといし,ゴムといし),メタルボンドといしなどに分けられる。多く使われるのはビトリファイドといし,レジノイドといしで,メタルボンドといしはダイヤモンドやcBN砥粒に対して用いられる。ビトリファイドといしは長石,可溶性粘土,耐火粘土および媒溶剤の微粉末混合物を結合剤とするものである。レジノイドといしは熱硬化性プラスチックまたは硬質の熱可塑性プラスチックを結合剤とするが,フェノール樹脂の使われる場合が多い。マグネシアといしはマグネシウムオキシクロリドを,ゴムといしは天然または人造のゴムを結合剤とする。形状としては,平形,リング形,片へこみ形,ストレートカップ形,両へこみ形,テーパーカップ形,皿形などがある。

研削といしには,砥粒の種類と粒度,結合度(砥粒を保持する結合剤の結合力の大小の段階),組織(といし中の砥粒,結合剤,気孔の分布状況),結合剤の種類が表示されている。この5因子の組合せならびに研削条件の選択が適正であれば,加工中に砥粒が破砕あるいは脱落することにより新しい切れ刃を自生して,切れ味のよい状態を維持できる。選択が適正でないと,目つぶれ(砥粒切れ刃が摩滅して平たんになること),目づまり(といしの気孔中に切りくずなどがつまること),目こぼれ(砥粒が過度に脱落する現象)などのトラブルが生じる。研削といしの使用にあたっては,形直し(適当な工具でといし外周を正しい幾何学的形状に仕上げる操作),目直しまたは目立て(適当な工具でといし表面に鋭い切れ刃を出現させること)を行う。

砥粒によって分けると,Aといしは引張強さが高くて(30kgf/mm2以上)強靱な比較的粘りのある被削材とか粗加工に,WAといしは引張強さがすこぶる高くて(50kgf/mm2以上)強靱堅密で研削熱を発生することの多い被削材とか精密研削に用いられる。Cといしは,堅硬で比較的もろい被削材,延性の大きい非鉄金属の加工とか,石材,ゴム,木竹,プラスチックなど目づまりしやすい非金属材料に使われ,GCといしは,引張強さが比較的低くてすこぶる堅硬緻密(ちみつ)でもろい被削材の研削に用いられる。cBNといしは難削鉄鋼材料に,ダイヤモンドといしは硬質セラミックスの加工に賞用される。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「研削砥石」の意味・わかりやすい解説

研削砥石
けんさくといし
grinding wheel

砥石車ともいう。研削に用いられる工具で,切刃の作用をする砥粒 (→研磨材 ) ,砥粒を互いに結合する結合剤,微小な切り屑や研削液のたまり場となる気孔の3要素から成る。一般には円板状に成形し,ガラス質の結合剤 (ビトリファイド) ,フェノール系の熱硬化性樹脂 (レジノイド) ,ないしは銅やニッケル,鉄など (メタルボンド) によって焼結する。研削盤に取付けられた砥石車は,ダイヤモンドドレッサと呼ばれる特殊な工具によって表面を整形し,かつ砥粒切刃が鋭くなるように目立て (ドレッシング) したのちに,実際の加工に使われる。適切な粒度や結合度の砥石を選定すれば,切味が低下した砥粒が脱落し,新しい砥粒が砥石表面に現れる作用 (自生発刃) によって,常に砥石の切味を保つことができる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「研削砥石」の意味・わかりやすい解説

研削砥石【けんさくといし】

溶融アルミナや炭化ケイ素など非常にかたい物質の粒子である砥粒(とりゅう)を,結合剤で結合した研削加工用の工具。結合剤の種類,砥石の製法によりビトリファイド砥石,シリケート砥石,エラスチック砥石などに分類。→研削盤
→関連項目研磨材

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android