日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂金(西条八十の詩集)」の意味・わかりやすい解説
砂金(西条八十の詩集)
さきん
西条八十(やそ)の詩集。1919年(大正8)6月、尚文堂書店刊。恩師吉江喬松(たかまつ)に献じられた自費出版の処女詩集で、1912年(明治45)ごろから19年(大正8)に至る間の作品を収録(「自序」)。『砂金』の部の詩40編、『遠き唄(うた)』の部の童謡9編、『曠野』の部の散文詩3編とからなる。「逃れんすべなし、/せめては小刀(メス)をあげて/この青き柚(ゆず)の実を截(き)れ、/さらばうちに黄金(こがね)の/匂(かぐ)はしき十二の房(へや)ありて/爾(おんみ)とわれとを防(まも)らむ」(「柚の実」)や「海にて」、「錶(とけい)」など、詩風は幻想的な甘美さのなかにも理知的均整さがある。日夏耿之介(ひなつこうのすけ)や堀口大学らとともに大正詩史のなかで高踏的象徴詩派の位置を占めながら多くの読者を得た。集中の童謡「かなりあ」は『赤い鳥』(1918.11)に載ったものである。
[高橋世織]
『『西条八十詩集』(1975・白凰社)』