石窟庵(読み)せっくつあん

改訂新版 世界大百科事典 「石窟庵」の意味・わかりやすい解説

石窟庵 (せっくつあん)

韓国慶尚北道慶州市,仏国寺背後の吐含山頂にある石窟寺。新羅景徳王10年(751)宰相金大城が仏国寺の付属石窟として建造したと伝える。自然の巨石を背にして花コウ岩を積み上げて築いた石窟で,内部は前室・扉道・主室の3室からなる。ドーム状に築き上げた主室には,本尊丈六釈迦像を安置し,周囲の構成は格狭間(こうざま)をもつ須弥壇上に,仏像浮彫をパネル状に円形に並べ,上方ドーム下に10の仏龕ぶつがん)を設け,本尊の後壁と天井には大蓮花を施す。パネルの仏像は,本尊後方中央に十一面観音像,左右菩薩,天部,羅漢像が侍立し,前室両側壁に四天王像,八部衆,仁王像を並べ,仏龕中には文珠,維摩(ゆいま)などの座像を安置する。これらは新羅の仏教美術のうち最も注目すべき作品群である。主室天井の外側は土で覆われていたが,植民地時代のセメントによるコンクリート補修を含め,数度の改修が行われ,前室部には近年木造の覆いや空気調整装置を設けて内部を保護している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石窟庵」の意味・わかりやすい解説

石窟庵
せっくつあん
Sǒk-kul-am

韓国,慶尚北道慶州市進 峴洞にある仏教遺跡。仏国寺の上,吐含山頂のやや南,標高 550mほどの尾根の東斜面に位置する。巨石を架構して石窟風に造った人工窟。巨大な石造 (花崗岩) の釈迦如来坐像を本尊として円形の主室の中央に安置し,周壁には半肉彫の十一面観音菩薩像や十大弟子像など 15体をめぐらし,前室への通路や前室にも半肉彫の四天王像,仁王,八部衆像などが配置されている。統一新羅時代景徳王代 (742~765) の創建で,いずれもみごとな作風を示し,朝鮮古代の仏教芸術上最もすぐれたものである。 1995年仏国寺とともに,世界遺産の文化遺産に登録。

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世界の観光地名がわかる事典 「石窟庵」の解説

せっくつあん【石窟庵】

韓国南部のキョンサンプクト(慶尚北道)キョンジュ(慶州)市郊外のトハムサン(吐含山)の麓にある仏教遺跡。751年ごろに、新羅の宰相キムデソン(金大城)により仏国寺(ブルグクサ)とともに建立された。花崗岩(かこうがん)を組み合わせて人工的に作られた石窟で、高さ3.4mの如来坐像が安置されている、統一新羅時代の仏教美術の代表的な遺構である。李氏朝鮮時代の仏教弾圧で荒廃し忘れ去られてしまったが、20世紀初頭に偶然発見された。韓国の国宝第24号に指定されているほか、1995年に同じ吐含山にある仏国寺とともに、世界遺産(文化遺産)に登録されている。◇「ソックラム」とも読む。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「石窟庵」の解説

石窟庵(せっくつあん)

韓国慶州市郊外の吐含山(とがんさん)中にある石窟寺院。新羅時代を代表する仏教遺跡の一つで,751年,新羅の宰相金大城(きんだいじょう)が仏国寺(ぶっこくじ)とあわせて創建。当初は石仏寺(せきぶつじ)と称した。花崗岩を積み上げてつくられた石窟は,前室,扉道,主室からなり,主室中央に本尊の丈六釈迦如来(じょうろくしゃかにょらい)像が安置され,周囲の壁面に十一面観音像などの諸仏が浮き彫りに配置されている。

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世界遺産情報 「石窟庵」の解説

石窟庵

石窟庵は、大韓民国慶州市の郊外にある仏教遺跡です。慶州の名刹仏国寺と同時代に築かれたとされる人工の石窟寺院で、本尊の釈迦如来像は花崗岩から掘り出されたもので約3メートルの高さがあります。威厳を備えた輝くばかりのその美しさは韓国仏教美術を代表する世界的な傑作品ともいわれています。本尊の周囲には釈迦の弟子像が、背後には十一面観音が浮き彫りになっており、通路の左右に彫られた仁王像や四天王像とともに本尊を守っています。1995年に世界遺産(文化遺産)に登録されました。

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百科事典マイペディア 「石窟庵」の意味・わかりやすい解説

石窟庵【せっくつあん】

韓国,慶州市郊外の吐含山にある仏教遺跡。新羅仏教美術の傑作で,仏国寺とともに世界遺産に登録されている(1995年)。韓国の国宝でもある。石窟は花崗岩(かこうがん)によって作られており,主室に高さ3.4メートの本尊の如来座像がある。新羅・景徳王の時代の751年頃,王族の金大城によって造営されたとされる。

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世界大百科事典(旧版)内の石窟庵の言及

【新羅】より

… 三国時代の新羅の仏教文化は初め高句麗の,のちに百済の影響をうけながら,皇竜寺の伽藍址や芬皇寺石塔のように,覇気と調和美とをもつものであった。統一時代前半の文化は,雁鴨池(がんおうち),石窟庵,仏国寺などにみられる宗教的な情熱を秘めた貴族文化である。また,武烈王陵碑や聖徳大王神鐘の彫刻は,雄渾・華麗なこの時代の代表作である。…

※「石窟庵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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