石盤(読み)セキバン

デジタル大辞泉 「石盤」の意味・読み・例文・類語

せき‐ばん【石盤】

粘板岩などを薄い板に加工して木の枠をつけたもの。石筆文字や絵をかく。学用品として用いられた。
屋根をふくのに用いる粘板岩などの薄板スレート

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改訂新版 世界大百科事典 「石盤」の意味・わかりやすい解説

石盤 (せきばん)

石板とも書く。粘板岩など剝離しやすい成層岩の薄片からなり,蠟石白墨などを用いて文字や絵図を書きつける道具。砂箱,灰箱などとともに,低年齢児童の書写用具として一般に用いられた。取り扱いやすいように木枠をはめたものや,のちには携帯の便を考え,ボール紙に黒色塗料を付した折りたたみ式の厚紙製石盤も出現するようになる。ペン筆記用加工紙の普及前の欧米で用いられていた石盤slateが,明治初年日本に導入され,和紙が手工芸品として比較的高価であったことと,唯一の筆記具であった毛筆が低年齢児には取り扱いにくいことのために,小学校,幼稚園での初学用具として広く用いられるようになった。書きつける面積が限られており,布きれで消しては書きつけるので学習の記録が不可能であったから,石盤を使っての学習が口授や口頭問答,さらには教科書注入におちいるのは避けがたかった。また,かなり重いために教室備付けの用具となったから,家庭学習には別の石盤を用いざるをえず,したがって書きとどめるような宿題を子どもに課すことは不可能であった。このような学習用具としての限界があったから,安価な筆記用洋紙(ざら紙)とそれに書きつけるための安価な学童用鉛筆との出現にともなって,学校での石盤の使用廃止方向をたどった。1930年代になると都市部の小学校から姿を消しはじめるが,それが全国的にほぼまったく用いられなくなるのは戦後50年代においてであった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石盤」の意味・わかりやすい解説

石盤
せきばん

筆記用具の一種。粘板岩を薄い板に加工し、それに木枠をつけたもので、これに石筆(脂肪光沢のある白色のろう石を鉛筆型にしたもの)を用いて、書き取りや計算を繰り返し行った。粘板岩の黒くて滑らかな性質を利用した石盤は、欧米では18世紀末から教育用として利用されたが、日本では明治時代初期に宮城県で良質な粘板岩が発見されてから普及した。小学校の学習用として明治・大正年間には広く使われていたが、現在では姿を消した。

[野沢松男]

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普及版 字通 「石盤」の読み・字形・画数・意味

【石盤】せきばん

石の盤。

字通「石」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の石盤の言及

【鉛筆】より

…【永田 桂子】
[学校教育と鉛筆]
 明治になるとドイツ,アメリカなどから鉛筆が輸入されたが,一般に学習用の筆記具として用いられることは少なかった。学習用の筆記具には,低年齢の子どもには石盤・石筆(蠟石を細い棒状に切削したもの),年長の子どもには伝統的な毛筆がほぼ明治期を通じて用いられていた。いっぽう,日本の鉛筆工業は第1次大戦で急成長し,しかも戦後には海外市場から追い出されると,過剰な設備と在庫をかかえるという事態になった。…

※「石盤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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