石油コークス(読み)せきゆコークス(英語表記)petroleum coke

精選版 日本国語大辞典 「石油コークス」の意味・読み・例文・類語

せきゆ‐コークス【石油コークス】

〘名〙 (コークスはKoks) 石油精製残渣(ざんさ)油から製造されるコークス。電極電気ブラシなどの工業用炭素材料とする。

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改訂新版 世界大百科事典 「石油コークス」の意味・わかりやすい解説

石油コークス (せきゆコークス)
petroleum coke

石油の重質留分を熱分解(コーキング)して得られる固形の炭素を主成分とする製品で,燃料のほか電極その他の炭素材料としての用途がある。製法により幾種類かの石油コークスがあり,ディレード・コーキングdelayed cokingの製品は塊状,フルード・コーキング法fluid cokingの製品は粒状である。またコーキング法で得られたままのコークスは揮発分が多い(10%前後)ので生コークスgreen cokeと呼ばれる。この揮発分は生コークスを高温に加熱することによって除去できる。これを煆焼(かしよう)コークスcalcined cokeという。生コークスのおもな用途は,工場燃料,練炭カーバイド製造用などである。また煆焼コークスのおもな用途は,アルミニウム製錬用黒鉛電極,溶接用炭素棒,炭素ブラシ,原子炉材その他の炭素材料である。炭素材料用のコークスは,化学組成,構造,物性(電気抵抗,耐衝撃性,熱膨張率など)上の要求から特別の製法が用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石油コークス」の意味・わかりやすい解説

石油コークス
せきゆこーくす
petroleum coke

石油の減圧または常圧蒸留残油を各種のコーキング法により490~640℃で熱分解すると、ナフサ軽油などとともに得られるコークス。このようにして得られたものは生(なま)コークスとよばれ、比重約1.7の多孔質の固体であり、主成分は炭素であるが、揮発成分を約10%含む。生コークスは、燃料、鋳物用コークス材、製鉄用、カーバイド製造原料などに用いられる。生コークスを約1300℃で焼成し、揮発成分を除去したものは煆焼(かしょう)コークスとよばれ、比重は約2で、約99%が炭素であり、アルミニウム精錬用炭素電極人造黒鉛の原料などに使われる。生コークス、煆焼コークスとも含有する硫黄(いおう)分、灰分の量が問題になる場合が多く、原油の選択や原料残油の脱硫、脱金属を行わなければならない場合が多い。1960年代以降のアルミニウムの需要増大に伴い、炭素電極の需要が増している。

[難波征太郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石油コークス」の意味・わかりやすい解説

石油コークス
せきゆコークス
petroleum coke

暗褐色の固い多孔質の炭素で,原油蒸留の際の残渣油や重質油,アスファルト留分などを熱分解 (コーキング) してつくる。コーキングの方法により,ディレード・コークスとフルイド・コークスがあるが,フルイド・コークスは粉末状で製油所の自家燃料程度の用途しかなく,一般に石油コークスと呼ばれるのはディレード・コークスである。生コークスはカーバイド,研削材,二硫化炭素などの原料,鋳物用や合金鉄用にするほか,さらに加熱して水分や不純物を除いた精製物 (煆焼コークス) を人造黒鉛の電極に用いる。

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化学辞典 第2版 「石油コークス」の解説

石油コークス
セキユコークス
petroleum coke

通常の石炭系のコークスに対して,石油を原料として製造したものをいう.工業的にコーキング法によって製造され,その製品は灰分が少ない特徴があり,おもに電極材料に用いられる.

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岩石学辞典 「石油コークス」の解説

石油コークス

炭質物を含む堆積物の中に貫入した火成岩の中のコークス(coke)に似た物質[Spacek : 1927].

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世界大百科事典(旧版)内の石油コークスの言及

【コークス】より

…半成コークスは火つきがよく燃えやすい家庭用無煙炭として利用されたが,現在,石炭の低温乾留はほとんど行われていない。また,石油から得られるコークスは,とくに石油コークスと呼ばれる。以下ここでは石炭コークスについて述べる。…

※「石油コークス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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