矢筈(読み)やはず

精選版 日本国語大辞典 「矢筈」の意味・読み・例文・類語

や‐はず【矢筈】

〘名〙
① 矢の上端の弦を受ける所。篦(の)先端中央を内部深くえぐって造る。節の間の筩(よ)をえぐって作った筩筈と別の材料で作ってさした継筈(つぎはず)があり、材料によって角筈・水精筈などの各種がある。はず。→補注。
※大般若経音義平安初期点(850頃)中「箭括〈略〉信言箭波受」
曾我物語(南北朝頃)四「片手矢をはめて、やはすをとり、あますまじとて、思ひかけたり」
模様の名。左右から中央に集まって、ちょうど①のような形をしたもの。また、そのような形。
※洒落本・やまあらし(1808)二「千早振てふ髪の毛のはげしはまみへを矢筈(ヤハヅ)に引」
紋所の名。①を図案化したもの。矢筈、並び矢筈、違い矢筈など種々ある。
浄瑠璃・曾我扇八景(1711頃)紋尽し「矢はずの紋は梶原提灯持がつくりひげ」
④ 歌舞伎のかつらの一つ。両鬢が矢羽根のような形で、油で固め、みがき光らせてあるもの。「琴責」の岩永など、時代物の三枚目敵に用いる。
真綿を引くのに用いる道具。真綿をひっかける鉤が①の形をしているところからいう。はず。
※浮世草子・武道伝来記(1687)八「火燵に紬の紫ふとんをかけて真綿引矢筈(ヤハヅ)のもとに伽羅割のなたなど」
⑥ 棒の先に股のある、掛け物を掛ける道具。
相撲の押しの手で、親指人差指との間を①の形に開き、相手の腋の下や胸、肩口を押す技。歌舞伎の立回りにも用いる。はず。
※洒落本・秘事真告(1757頃)堀江の相「いやといふたら矢筈(ヤハズ)にもとられそふな勢ひ」
⑧ 江戸中期以降、大型和船の艫やぐら内に装備された一対の轆轤(ろくろ)の上部の軸を保持する材。舷側の垣立上部から中央に通る歩(あゆみ)にかけて渡す梁を兼ねた①の形の材で、二股に分かれる所に轆轤の軸受けを設ける。〔新造精帳書(1863)〕
[補注]①の挙例「大般若経音義」中の「信言」は「倭言」の誤り。

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デジタル大辞泉 「矢筈」の意味・読み・例文・類語

や‐はず【矢×筈】

矢の末端の弓のつるを受ける部分矢柄を直接筈形に削ったものと、竹・木・金属などで作って差したものとがある。
模様の名。また、紋所の名。1の形を図案化したもの。
竹や棒の先が二股になった、掛け物を掛ける道具。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「矢筈」の意味・わかりやすい解説

矢筈
やはず

矢の末端の弓弦を受ける部分。矢柄 (やがら) の先端を直接筈形に削ったよ筈 (よはず) や,骨角,金属,木,竹,水晶などを加工して取付けた継筈 (つぎはず) もある。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「矢筈」の解説

矢筈 (ヤハズ)

植物。ニシキギ科の落葉低木,園芸植物,薬用植物。ニシキギの別称

矢筈 (ヤハズ)

植物。キク科の一年草,薬用植物。タウコギの別称

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