矢口(読み)やぐち

精選版 日本国語大辞典 「矢口」の意味・読み・例文・類語

や‐ぐち【矢口】

[1] 〘名〙
① 狩の時、将軍家など、身分の高い武家の男児が初めて獲物を射ること。また、その時に、神をまつってする儀式や祝い。矢口餠を調えて山神をまつり、射手数人に矢を射させ、饗応する。矢口びらき。矢びらき。
吾妻鏡‐建久四年(1193)五月一六日「此後被今月御狩訖。属晩。於其所、被山神矢口等
② 矢に射られた傷口
浄瑠璃・本朝三国志(1719)一「ぬき捨る矢口よりながるる血は」
[2] (日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際、矢合わせをした地と伝えられるところからといわれる) 東京都大田区南西部の地名多摩川左岸にあり、昔は奥州古街道(鎌倉街道)の矢口渡があった。新田神社がある。

や‐の‐くち【矢口】

〘名〙 つぎつぎとたくさんの矢を射ること。
島津家文書‐慶長四年(1599)一一月一五日・島津惟新義弘書状「互矢之口相留られ候はぬやうに有度候」

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デジタル大辞泉 「矢口」の意味・読み・例文・類語

やぐち【矢口】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「矢口」姓の人物
矢口史靖やぐちしのぶ
矢口高雄やぐちたかお

や‐ぐち【矢口】

狩り場の口開けに、初めて矢を射ること。また、そのときにする神事や儀式。
「其所に於て山神―等を祭らる」〈吾妻鏡・一三〉
矢で射られた傷口。
「抜き捨つる―より流るる血は滝なって」〈浄・本朝三国志〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢口」の意味・わかりやすい解説

矢口
やぐち

東京都大田区南西部、多摩川左岸の地区。第二京浜国道の西側が矢口、東側が東矢口で、東急電鉄東急多摩川線(旧、目蒲(めかま)線)矢口渡(やぐちのわたし)駅は多摩川1丁目にある。かつての古奥州街道が通り、日本武尊(やまとたけるのみこと)東征のおり、矢合わせをしたことが地名の由来といい、横浜市鶴見(つるみ)区には矢向(やこう)の地名がある。南北朝のころ、鎌倉街道が通り、多摩川に矢口の渡しがあった。ここで新田義貞(にったよしさだ)の子義興(よしおき)が謀殺されたとする説があり、その霊を祀(まつ)る新田神社がある。その縁起題材に平賀源内は福内鬼外(ふくうちきがい)の筆名で淨瑠璃(じょうるり)『神霊矢口渡』を書いている。沿岸は下丸子(しもまるこ)に続く工業地区である。

沢田 清]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「矢口」の解説

矢口
(通称)
やぐち

歌舞伎・浄瑠璃の外題
元の外題
神霊矢口渡
初演
天明1.6(江戸・中村座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「矢口」の解説

矢口 (ヤグチ)

植物。バラ科のハナモモの園芸品種,落葉低木

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