眼底検査(読み)ガンテイケンサ

デジタル大辞泉 「眼底検査」の意味・読み・例文・類語

がんてい‐けんさ【眼底検査】

瞳孔どうこうから眼底に光を当て、検眼鏡でのぞいて網膜・血管などを調べること。体表面から動脈を直接観察できる唯一部分なので、眼病のほか高血圧動脈硬化などの診断に広く用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「眼底検査」の意味・読み・例文・類語

がんてい‐けんさ【眼底検査】

〘名〙 暗室内で検眼鏡を使って眼底を検査すること。眼病のほか糖尿病高血圧症などの診断にも用いられる。
※眼科学(1888)〈榊俶〉一「此器械は唯に眼底検査に供するのみならず」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「眼底検査」の意味・わかりやすい解説

眼底検査
がんていけんさ

検眼鏡を使って患者の瞳孔(どうこう)(ひとみ)を通し眼底を観察する検査をいう。眼底には、人の目のフィルムである網膜でとらえた情報を脳へ伝える神経の出口にあたる視神経乳頭をはじめ、網膜や網膜の血管などがあり、眼底検査ではこれらがすべて直接に観察できる。したがって眼底検査は、眼底の病気の診断には欠かすことができないばかりでなく、いろいろな全身疾患のときにも診断上必要となる。その理由は、細動脈が直接観察できるのは眼底だけであること、また脳と関係の深い視神経乳頭が観察できることである。このため、高血圧症、糖尿病、脳腫瘍(しゅよう)をはじめとするいろいろな頭蓋(とうがい)内疾患などでは、眼底検査はたいせつな検査法となっている。

 眼底検査には、倍率が高いが観察範囲の狭い直像検査法と、倍率は低いが眼底の端のほうまで広い範囲にわたって観察できる倒像検査法とがある。直像検査法は直接法ともいい、もっとも一般的に行われているもので、散瞳を十分にして手持ち電気検眼鏡を近づけて眼底をのぞく。視神経乳頭の細部所見の観察により、全身疾患の検査に適している。倒像検査法は間接法ともいい、直接法とは異なり暗室または準暗室が必要である。手持ち倒像電気検眼鏡で被検者から40~50センチメートル離れた位置からのぞく。網膜のいちばん端まで観察でき、眼球しんとう症や未熟児網膜症のほか、網膜剥離(はくり)など眼底疾患の検査に適している。しかし、手持ちの検眼鏡では両手がふさがれ、片眼視のために立体感がないので、近年は双眼倒像検査法が用いられるようになった。たとえば、額帯式双眼倒像鏡を使うと、眼底の立体視が可能であり、片手が自由になるので網膜剥離や硝子体(しょうしたい)手術などにも用いられる。また、細隙(さいげき)灯(スリットランプ)で適当な光束をつくって観察部分を光切片に切り、双眼顕微鏡で拡大しながら観察する細隙灯顕微鏡による眼底検査も行われる。

 なお、眼底検査の結果を客観的に記録できる眼底撮影も普及している。高感度カラーフィルムの開発と閃光(せんこう)電球の発展により日常的に使われるようになったが、その後の技術的開発によって単に記録するという範囲を超えて網膜病変の形態的あるいは機能的検査法としても用いられ、さらには眼底映画撮影からテレビカメラの応用という段階まで進んできた。

[松井瑞夫]

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百科事典マイペディア 「眼底検査」の意味・わかりやすい解説

眼底検査【がんていけんさ】

検眼鏡を用いて眼底すなわち網膜,脈絡膜などの状態を観察すること。眼底は,血管が直接観察できる唯一の場所であること,視神経によって頭蓋内と接続していることから,眼疾患に限らず,成人病を中心とする全身疾患の重要な検査項目である。直像検査法と倒像検査法に大別されるが,広義には硝子体などの透光体を検査する徹照法,眼底所見を撮影する眼底撮影法なども含まれる。直像検査法は1851年ヘルムホルツの創案とされ,観察範囲は狭いが拡大率の高いのが利点。倒像検査法は1852年ルエテの創案とされ,眼底は倒像として観察され,拡大率は低いが観察範囲の広いのが利点である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「眼底検査」の意味・わかりやすい解説

眼底検査
がんていけんさ
funduscopy

検眼鏡で眼底を検査する方法。直像検査法と倒像検査法に大別できる。前者は,電気検眼鏡を用いて,15~16倍に拡大された眼底の直立像を観察する検査法。後者は,凹面検眼鏡,光源内蔵の検眼鏡,あるいは倒像双眼検眼鏡を用いて,主として周辺部の眼底変化を観察するのに使用する。5倍程度に拡大された倒立像がみられる。眼底検査は,糖尿病,高血圧のような全身疾患の場合の診断あるいは全身状態判定のための補助手段としても有用である。眼底の所見を撮影する眼底カメラもある。

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とっさの日本語便利帳 「眼底検査」の解説

眼底検査

網膜、脈絡膜、網膜の血管、視神経などの状態を観察する。様々な網膜疾患や、脈絡膜の疾患の検査だけでなく、糖尿病や高血圧、動脈硬化の場合にも用いられる。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内の眼底検査の言及

【眼底】より

…硝子体の収縮などの変化で容易に網膜に裂孔が生じて網膜剝離(はくり)に進行することがある。
[眼底出血]
 眼底検査は血管を見る検査といっても過言ではない。なかでも出血は各種疾患の重要な所見であり,出血源,出血部位などがそれぞれの疾患の原因,治療,予後を左右する。…

【検眼】より

…本来は,眼が見えにくくなったときに,その原因をさぐるためにおこなわれる眼の検査一般を指す言葉であるが,現在では,(1)視力検査と眼鏡矯正のための検査,(2)眼底検査に用いる検眼鏡検査,の二つの意味に狭義に使われ,一般では(1)を指すことが多い。
[視力検査と眼鏡矯正]
 視力を測定し,近視,遠視,乱視など屈折異常の有無を調べ,屈折異常や老視(老眼)のある場合は,最適の眼鏡の度数を決定するまでの検査。…

※「眼底検査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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