日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
眠れる森の美女(チャイコフスキーのバレエ曲)
ねむれるもりのびじょ
Спящая красавица/Spyashchaya krasavitsa
ロシアの作曲家チャイコフスキーのバレエ曲。プロローグと三幕からなる。同名のペロー童話をフセボロジュスキーが脚色、M・プチパの構成台本と振付けによって、1890年ペテルブルグのマリンスキー劇場で初演された。プロローグはオーロラ姫の誕生の命名式。妖精(ようせい)たちが姫を守ることを誓うが、式に招かれなかった魔女カラボスは姫に呪(のろ)いをかける。第一幕は姫の16歳の誕生日の祝宴。各国から求婚のためやってきた王子4人と姫との変型のローズ・アダージョなどが踊られる。カラボスが現れて姫に紡錘を渡し、その紡ぎ針に触れた姫をはじめ一同は百年の眠りにつく。第二幕は百年後。狩にきた王子がリラの精と出会い、深い森に眠っているオーロラ姫を救い出す。第三幕は姫と王子の結婚式。ペロー童話の主人公の踊りなどさまざまな踊りが踊られる。この作品からは、不死性への願望と宮廷バレエ時代の結婚の祝宴の痕跡(こんせき)が鮮やかに読み取られるが、今日でもさまざまな演出で演じられている。
[市川 雅]