真空冶金(読み)シンクウヤキン

化学辞典 第2版 「真空冶金」の解説

真空冶金
シンクウヤキン
vacuum metallurgy

真空あるいは減圧下で溶融金属を精製する方法総称.その範囲はきわめて広く,消耗電極型の真空アーク溶解,減圧プラズマ溶解,真空脱ガス,真空精錬などを含む.真空アーク溶解では精製しようとする金属を上部の電極にし,下部の精製後の金属との間にアークを飛ばして融解滴下させる方法であり,滴下金属はしばらく液体のプールをつくっているので,この上を真空にすると不純物気体である H2,N2COなどが放出され,また揮発性不純物も気化されて,精錬効果が上がる.溶鋼の脱ガスには種々の方法が用いられているが,おもに脱水素,脱酸素を目的としている.また,溶鋼を減圧下でCr酸化を防止しながら極低炭素含有の特殊鋼をつくる真空精錬法もある.反応は,

2C(鉄中) + O2(ガス) → 2CO(ガス)

で,この反応は減圧にすると右側に反応が進むので有利である.真空技術と機器の進歩に伴い,工業規模における金属の蒸留精製による高品位金属の製造が可能となった.たとえば,カルシウムマグネシウム蒸留,あるいは還元蒸留によって工業的につくられる.レトルト内の真空度は,これが高いほど金属蒸気の蒸発速度が速く,金属の酸化による汚染も少ない.高周波誘導電気炉アーク炉による鉄鋼耐熱合金チタン,モリブデン,ジルコニウムなどの真空溶解鋳造は,大容量回転ポンプや拡散ポンプ発展とともに工業化され,すぐれた品質金属材料を供給する方法として用いられる.また真空造塊は,溶鋼の大量の脱ガスに利用されている.[別用語参照]真空脱ガス炉

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「真空冶金」の意味・わかりやすい解説

真空冶金【しんくうやきん】

真空または減圧下での金属や合金などの製錬加工。またこれに関する技術。酸化しやすい金属の処理,溶融金属の脱ガス,高純度精製(ゾーンメルティング),真空蒸着など応用範囲が広い。→冶金
→関連項目真空

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真空冶金」の意味・わかりやすい解説

真空冶金
しんくうやきん
vacuum metallurgy

真空中において電気炉で溶解して冶金 (やきん) する方法。大気中の冶金に比べて,酸化による消耗やガス・非金属などの混入が少ないので,製品は品質や歩留まりが良くて信頼性が高い。大気中の溶解では添加が困難な合金金属の添加が可能であったり,成分組成の調整が容易であるので,高度の耐熱性や耐疲労性を要求されるジェットエンジン用合金,軸受け用合金,高速度鋼などの製造に応用される。

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世界大百科事典(旧版)内の真空冶金の言及

【冶金】より

…ハロゲン化物を製錬中間産物として利用するハロゲン冶金がチタンの製錬におけるクロール法の成功で確立し,原子力燃料の金属ウランや電子材料のケイ素の製造などに利用されている。工業規模での真空技術の進歩は蒸留分離,熱分解,脱ガスなどの技術を含む真空冶金を生み出した。鉄鋼製錬における炉外精錬法などがこの分野の一つの目ざましい応用例である。…

※「真空冶金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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