看護(読み)カンゴ

デジタル大辞泉 「看護」の意味・読み・例文・類語

かん‐ご【看護】

[名](スル)けが人や病人の手当てや世話をすること。「手厚い看護を受ける」「病人を看護する」「寝ずに看護する」
[用法]看護・看病――「一晩中寝ずに病人の看護(看病)をした」の場合には相通じて用いられる。◇「看護」は「看病」より意味が広く、「出産したばかりの妻を看護する」「年老いた父の看護にあたる」のように用いる。◇類似の語に「介抱」「介護」がある。「介抱」は一時的に相手の世話をするような場合にいう。「脳貧血で倒れた友達を介抱した」「酔っ払いを介抱する」の場合は「看護」「看病」はふさわしくない。「看護」「看病」が見守ることなども含むのに対し、「介抱」は具体的に世話をするという意味合いが強い。◇「介護」は一般的に「寝たきり老人の介護」など病院以外での介抱や看護についていうことが多い。
[類語]介添え介抱養護看病世話心配扶助扶育御守おも付き添い介助介護面倒見めんどうみケア

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精選版 日本国語大辞典 「看護」の意味・読み・例文・類語

かん‐ご【看護】

〘名〙 けが人や病人などの手当てをし世話をすること。看病。かんがく。
日本外史(1827)一五「秀頼患痘、福島正則自安芸馳至、日夜看護」

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改訂新版 世界大百科事典 「看護」の意味・わかりやすい解説

看護 (かんご)

〈看〉が手を眉上にかざして見ることから〈よくみる〉〈いつくしみみる〉を意味し,〈護〉は〈まもる〉を意味することから,〈看護〉とは〈いつくしみの心をもってみまもること〉ということができよう。英語のnursingはnurture(養育・愛着・保育)から派生したものである。

 人は古来,外界の危害から身をまもり,傷ついたり病んだりしたときに互いにいたわり,助けあい,生の営みをつづけてきた。医療・看護の起源もこのいたわりあい,助けあいに求めることができ,共同体内部における相互扶助として行われてきたものといえる。母親がわが子を産み,養い育て,保護したことに始まり,それに伴う喜びや苦しみの経験をいかして,他の母親を助け,また傷つき病んだ者の傍らに居て手当てをし,さらにまた,避けることのできない死に直面した者に安らぎを与えようとする行為が看護の始まりといわれている。やがて母親の手から,ある部分は寺院や教会などの宗教団体の手にゆだねられていったのだが,看護婦という名称をもった専門職業への第一歩が踏み出されたのは最近100年くらいのことである。

看護とは,人が生まれ,その生を閉じるまでに経験される健康現象において,個人,家族,地域社会に関与して,その生命力や生活のリズムが損なわれないように見守り,かつそれを十分に発揮できるように支え,励ますことによって,自立への援助を意図した働きである。

 この看護の働きは,その個人の飲食を助ける,排泄を助ける,休息・睡眠を助ける,身体の清潔を保つなどの身の回りの世話を通して展開される。また,採光,換気,温度,静寂などの生活環境を調整する活動を通して看護の働きは,より一層のこと発揮されている。さらに,与薬,検査,処置などの診療の介助にあたっては,安全,かつ安楽にその個人に適用するくふうを通して,看護の配慮がいかされる。また,患者が自分の気持ちや意志を伝えられるように助け,周囲の人々への信頼感をはぐくむことのできるように,また,みずからの価値を認めることのできるように支えることを通して看護の援助が展開される。

これらの活動は,個人が相応の知識,体力,意志の力をそなえ,それを発揮する状況にある場合には,本来自力で行うことのできるものである。人の生命の維持や健康の増進もまた,人が身体的,心理的,社会的に不安定な事態におかれると安定しようとして本来的に内部で働く小刻みなバランスの持続の過程といえよう。この働きは一般には〈自然治癒力〉と呼ばれるものであるが,看護は,こうした人に本来そなわっている自律的な安定への動きを助長するような〈環境づくり〉や〈関係づくり〉によって,その個人を支え,みずから健康上の問題に取りくむことのできるように働きかけている。看護の介入は,その個人がより安全で安楽に,しかも1日も早く,より頻繁に自分の身の回りのことを自分自身でできるような方向を目ざして行われる。こうした自立への援助活動は,看護婦がもつ〈人の生命に対する尊厳と人の自立・成長の可能性に対する信頼〉とに支えられ,成り立っている。

 具体的には,不安や苦痛など,その個人の生命力を消耗していることがらを早期に発見し,それを取り除くことによって,先に述べたような本来的な力を発揮することを動機づけている。その方法としては,ただ単に本人のできないことを代わって行うのではなく,その時々の本人の自立の度合やおかれている状況に見合った手助けのしかたが必要とされている。あるときは,本人のできないことを一時的に代わって行うことによって支え,あるときは本人が行うのを傍らで見守り,あるときは助言することによって,本人の自立への歩みを促し,見届けることが必要とされる。このような本人の状況に添った変幻自在の手助けのしかたにこそ看護婦のより専門的な判断技術がいかされていくのである。

看護師は患者の身近にいるため,患者が自分の状態や状況をどのように感じ,考えているかを直接的に知ることのできる立場にあるといってよい。その時々に患者がもつ懸念や不安,要求や期待などを具体的,継続的に見聞きできている立場から,看護師の第一義的関心は,〈患者がストレス状態におかれるのを一刻たりとも理由なく引きのばされないように守ること〉に注がれる。〈その時・その場〉に即した患者の必要性を満たし,より〈安楽な状態〉を小刻みにつくりだすことによって,患者がより自立に向かおうとするのを支え,励ます。看護師は,この患者の内的な動きを敏感に察知しながら,〈身体的支援〉〈相談〉〈指導〉などの要素が含まれた看護アプローチ,看護介入nursing interventionを行っている。〈身体的支援〉とは,その時,その場の患者の満足や安楽を図ることを重点とした直接的な身体的ケアを通して支援する〈働きかけ〉を指す。いわゆる身の回りの世話的な看護師の活動がこれに含まれる。〈相談〉とは,患者の訴えに耳を傾け,直面している問題をはっきりさせるのを助け,解決の方向づけをするといった,おもに言葉によるコミュニケーションを通して自助力を高めていく働きかけを指す。〈指導〉とは,患者が自立していく自分自身に喜びを感じ,助言や方向づけによって自立に向けて必要な手段を活用していくための働きかけを指す。これらは,患者のその時,その場の健康レベルや自立の度合に応じて,さまざまに組み合わされて看護師の援助行為となって患者・家族・地域社会に対して働きかけられている。

 健康のレベルは,健康の保持・増進においては〈健康教育〉を通して人々の健康への関心を高め,態度の変容を働きかける。健康の危険においては,病気ではないかとの懸念や不安を軽減し,早い時機に相談行動や受診行動を起こせるよう働きかける。健康の回復においては,〈保健指導〉を通して社会とのつながりを考慮して1日も早く日常の生活にたち返れるように働きかける。さらにまた,避けることのできない死に直面した人々には,安らぎを与えるための援助を家族とともに行う。このように看護師は,個々人の生活状況に見合ったケアを提供できるように,病院,診療所,リハビリテーション・センターなどの施設のなかの看護サービスをはじめ,在宅療養者への訪問看護サービスをも行っている。

 しかし看護の働きは,単に看護師のみで担うものではなく,さまざまな職種にある人々との協同によって,より効果をあげることができる。看護師は,看護ケアを通して観察できた患者の反応と適応の状態について,医師,ケースワーカー,栄養士などの保健医療チームメンバーと情報交換を行い,患者が関連の社会資源を十分に活用できるように連絡調整を図る役割を担っている。看護道徳国際律(1953)には看護師の基礎的使命として次の三つがうたわれている。(1)人命を守ること,(2)病苦から人を救うこと,(3)健康を増進させること。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「看護」の意味・わかりやすい解説

看護
かんご

古くは人間の母性愛、母親のいたわり、思いやり、子供の世話などを起源とし、人間の生活とともに存在してきた活動であるが、やがて傷病人や老人などの世話をする看病と同義となった。しかし、現在では、個人や集団に対する傷病治療の世話ばかりでなく、健康回復への援助、病気の予防や健康増進への助言を含めた保健指導などを行うことをいう。フローレンスナイチンゲールは、看護は科学であり、芸術であり、専門的職業であるとして近代看護の基礎と専門職としての看護婦の地位を確立した。バージニア・ヘンダーソンVirginia Henderson(1897―1996)は、「看護とは健康、不健康を問わず各個人を援助することである。健康、健康の回復(あるいは平和な死への道)に役だつ諸活動の遂行にあたり、各個人を援助するのが看護婦の仕事であり、しかも、できるだけ早く自分で自分の始末をできるようにする方向でこの援助を行うことである」という主旨の定義を提唱し、広く受け入れられている。

 看護の具体的な仕事の内容としては、病院、診療所などにおける臨床看護として医師に協力して行う診断、治療、処置の介助、患者の世話および療養生活の指導などがあり、また、保健所、市町村等の保健サービス事業のなかでは、公衆衛生看護として病気の予防、健康増進等を含む保健指導などがあげられる。これらの実行のためには、人間愛の精神、看護に対する専門的知識と一般的教養知識、それに看護技術の3要素が必要である。看護を職業として行うためには、看護師、保健師、助産師のいずれかの資格が必要であり、これらは保健師助産師看護師法に基づいている。

[平山宗宏]

『金子道子編著『ヘンダーソン、ロイ、オレム、ペプロウの看護論と看護過程の展開』(1999・照林社)』『城ヶ端初子著『やさしい看護理論――現場で活かせるベースの考え方』(2000・メディカ出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「看護」の意味・わかりやすい解説

看護
かんご
nursing

傷病者や老人の介抱,健康回復への援助から,さらに病気予防,健康増強への助言・指導などを行なうこと。乳幼児を育てたり,虚弱者を保護したり,傷病者の手当てをしたりするかたちでの看護は人類の歴史とともに古くからあるが,医学の分野で看護を学問的に体系づけ,それを職業とする人たちが生まれたのはフローレンス・ナイチンゲール以後とされる。日本では,すでに大宝律令に女医の制度が定められ,奈良の興福寺,国分寺などに病室が設けられて傷病者の看護・治療が行なわれており,奈良時代に入ると光明皇后施薬院を建立してハンセン病などの治療にあたっているが,近代的な看護技術が確立されるのは日本赤十字社篤志看護婦人会の結成 (1887) 以後である。

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普及版 字通 「看護」の読み・字形・画数・意味

【看護】かんご

看守。

字通「看」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「看護」の解説

看護

 病人やけが人,老人などを世話すること.

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世界大百科事典(旧版)内の看護の言及

【看護学】より

…看護とは,人が生まれ,その生を閉じるまでに経験されるすべての健康現象において,個人および家族,地域社会に関与することによって,個人の生命力ないし生活力を十分に発揮できるように援助することを意図した〈働き〉といえる。看護学は,このような看護の基本的機能を向上させるために,看護理論,看護実践,そして看護研究の発展をめざす学問である。…

※「看護」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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