(読み)ショウ

デジタル大辞泉 「省」の意味・読み・例文・類語

しょう〔シヤウ〕【省】

明治2年(1869)の官制改革で設けられた政府の中央行政機関。その後、内閣制度に受け継がれ、現在は法務外務財務文部科学厚生労働農林水産経済産業国土交通総務環境防衛の11省。大臣を長とする。
律令制で、太政官だいじょうかんに属した中央官庁の称。中務なかつかさ式部治部民部兵部ひょうぶ刑部ぎょうぶ大蔵宮内の八省。
中国で、古代の中央政府または中央官庁。
中国の行政区画の一。地方行政区画のうち最上位のもの。代に始まり現在に至る。
[類語]セクション

せい【省】[漢字項目]

[音]セイ(漢) ショウ(シャウ)(呉) [訓]かえりみる はぶく
学習漢字]4年
〈セイ〉
振り返ってよく考えてみる。「省察三省自省内省反省
安否をたずねる。「帰省
はぶく。「省文
ショウ
中央官庁。「本省
中国の行政区画の一。「省都山東省
はぶく。「省力省略
[名のり]あきら・かみ・み・みる・よし

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精選版 日本国語大辞典 「省」の意味・読み・例文・類語

はぶ・く【省】

[1] 〘他カ五(四)〙
① 不要のもの、あるべからざるものとして取り除く。いらないものとして排除する。
※新訳華厳経音義私記(794)「筆削 下音、刪玄也、刪音讚、訓波夫久、筆謂増益也」
歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)三「連の悪者共をはぶかんが為」
② 簡単・簡素にするために、全体から一部を減らす。簡略にする。倹約する。省略する。
※源氏(1001‐14頃)帚木「家のうちに、足らぬ事など、はた、なかめるままに、はぶかず」
※鳥羽家の子供(1932)〈田畑修一郎〉「面倒を省く為に」
③ 分かち与える。分配する。
※平家(13C前)七「かの庄園を没取(もっしゅ)して、みだりかはしく子孫にはぶく」
④ 仲間から除く。仲間はずれにする。
滑稽本・八笑人(1820‐49)三「おいらも跡で連中をはぶかれても仕方がねへ」
[2] 〘他カ下二〙 身だしなみなどを省略する。手を抜く。
※早雲寺殿廿一箇条(17C初)七条「髪をばはやくゆふべし。はふけたる躰にて人々にみゆる事慮外、又つたなきこころ也」

しょう シャウ【省】

〘名〙
① 令制での官制の一つ。太政官に属し、中務、式部、治部、民部、兵部、刑部、大蔵、宮内の八省がある。職員として、卿、大・少輔、大・少弁、大・少主典(だい・しょうさかん)などが置かれた。
② 明治二年(一八六九)の官制改革で設けられた中央行政機関。同一八年の内閣制度に引き継がれ、変遷を経たのち、昭和二三年(一九四八)制定の国家行政組織法によって、法務、外務、大蔵、文部、厚生、農林(のち農林水産)、通商産業、運輸、郵政、労働、建設、自治の一二の省が置かれ、平成一三年(二〇〇一)には再編されて、総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境の十の省となった。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四「いつしかさる省(シャウ)へ召出されつ」
③ 古代中国で、中央政府、中央官庁の呼び名。とくに、中書省をさす。〔新唐書‐百官志〕
④ 中国の行政区画の一つ。地方行政区画のうち、最上位のもの。元のころ、中書省の地方機関として行中書省(行省)を置き、その地方の行政をつかさどったことから、地方行政区の名称となった。現在は区の管轄のもとに置かれている。

せい‐・する【省】

〘他サ変〙 せい・す 〘他サ変〙
① 自分の行ないなどをかえりみる。反省する。
※足利本論語抄(16C)学而第一「此三つを日に三つ省するぞ」
② 様子を問う。様子を問うために尋ねる。特に、親を見舞う。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「僕が行って母を省(セイ)する毎に」

せい‐・す【省】

〘他サ変〙 ⇒せいする(省)

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改訂新版 世界大百科事典 「省」の意味・わかりやすい解説

省 (しょう)
shěng

中国の最高行政区画の名称。省の原義は宮中のことで,魏・晋のころから禁中におかれた天子の秘書室を中書省,尚書省などと呼ぶようになった。13世紀,モンゴル王朝は支配領域の拡大とともに,中央政府中書省の出先機関として行中書省,略して行省を各地に置いた。これが南宋の併合ののち,広い行政区域を持つ独立官庁となり,その管轄区域を省と呼ぶようになる。13世紀末には元帝国の領域は,河北,山西,山東は腹裏といって大都の中書省が直轄するほか,河南,陝西,四川,甘粛,遼陽,江浙,江西,湖広,雲南の9行省があり,のちモンゴリアの嶺北行省が加わった。行省の長官は平章政事といった。

 明は最初国都南京の周辺を直隷省とし,全国を北平,山東,河南,山西,陝西,江西,湖広,四川,浙江,福建,広東,広西の12省に分け,のち雲南,貴州を加えた。さらに永楽帝の北京遷都とともに北平を北直隷,南京周辺の直隷を南直隷に改めた。省の民政は布政使,監察は按察使が受け持ち,軍事を統轄する都指揮使もいたが,明中期以降はその上に総督巡撫が置かれるようになった。清朝は南直隷を江南に改め,ついでこれを江蘇と安徽に分かち,また陝西を陝西と甘粛,湖広を湖南と湖北に二分し,ここに本部18省が成立した。なお本部18省は皖(かん)省(安徽),予(よ)省(河南)のようにすべて雅名を持っている。このほか満州民族の根拠地東三省と異民族の多い新疆省があって統治方式を異にしたが,時代が下って中央化が進むとともに,遼寧,吉林,黒竜江,熱河,察哈爾(チヤハル),綏遠(すいえん),寧夏,青海,西康,新疆の10省が加わり,全国28省制ができあがった。

 清代は,省の最高長官は中央官待遇の総督または巡撫で,両者は一省一総督の場合の巡撫兼任を除き,同一府州に治所を置かない。巡撫はだいたいすべての省に置かれるが総督は数省を兼ねるのが普通である。その下に布政使,按察使と各種の道員が配備される。民国から人民共和国にいたる間(1912-49),とくに周辺部の省の改廃がしばしば行われたが,2006年現在の全国の省と省都(カッコ内)は以下のとおりである。河北(石家荘),山西(太原),遼寧(瀋陽),黒竜江(ハルビン),吉林(長春),陝西(西安),甘粛(蘭州),青海(西寧),山東(済南),江蘇(南京),浙江(杭州),安徽(合肥),江西(南昌),福建(福州),河南(鄭州),湖北(武漢),湖南(長沙),広東(広州),四川(成都),貴州(貴陽),雲南(昆明),海南(海口)。このほか少数民族の多い省格の自治区として,内モンゴル(フフホト),寧夏回族(銀川),広西チワン族(南寧),チベット(ラサ),新疆ウイグル(ウルムチ)があり,北京,天津,上海,重慶は省格の特別市とされており,台湾省を入れて全部で23省5自治区4特別市が省にあたると考えられる。

執筆者:

省 (しょう)

国の基本的な行政機関。明治初期に大宝令にならって採用されて以来用いられている名称。第2次世界大戦後の行政組織の基本法である国家行政組織法の下では,府と省が基本的な行政機関であり,2001年の省庁再編を経て,現在,1府(内閣府のみ),11省(法務省外務省財務省文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,総務省,環境省,防衛省)が設置されている。これらが内閣の統轄の下に行政事務を分担し,全体として国の行政組織を構成する。それぞれは国務大臣である各省大臣を長とし,それぞれの所掌事務と権限をもつ。内部は局-課などと構成される階統型に組織され,それぞれの所掌事務の領域について行政事務を行い,政策を実施する機能を果たす。しかし,単に国会,内閣で決定された政策を実施するだけでなく,政策の立案についても重要な役割を果たしている。
事務次官 →省令 →政務次官 →大臣
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「省」の意味・わかりやすい解説


しょう

(1) 律令制で,太政官に属した役所。中務省,式部省,治部省,民部省,兵部省,刑部省,大蔵省,宮内省の8省があり,職員には卿,輔,丞,録以下が置かれた。
(2) 国の行政機関の一つ。長は大臣である。省の設置,廃止,所掌事務の範囲,権限は法律で定められる (国家行政組織法) 。総務省法務省外務省財務省文部科学省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省環境省防衛省の 11省がある。各省には,内部部局として官房,局,課,室などが置かれる。また外局地方支分部局審議会施設等機関特別の機関が設置されることもある。
(3) 中国の最高行政区画名。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「省」の解説


しょう

大宝・養老令制官司の等級の一つ。8省ある。太政官の指揮をうけ,職(しき)・寮・司などを管轄。四等官の定員は卿1人・大少輔各1人・大丞1人(式部・刑部(ぎょうぶ)省は2人)・少丞2人・大録1人・少録3人(刑部・大蔵・宮内省は2人)からなり,これらの相当位は中務(なかつかさ)省が1級高く,式部・治部・民部・兵部・刑部・大蔵・宮内の7省がこれにつぐ格付けになっている。令外官(りょうげのかん)の造宮省・内豎(ないじゅ)省もこれに準じる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【中華人民共和国】より

…石油は,東北,華北,西北などのほかに,渤海から南シナ海にかけての大陸棚などに豊富な油田が探査され,開発がすすんでいるが,重質油が中心であるのが難点である。天然ガスは,四川省に集中している。 このほか,地球上で知られている140種類あまりの有用鉱物資源はすべて中国にあるといわれ,マンガン,アルミニウム,スズ,モリブデン,鉛,亜鉛,タングステン,アンチモン,希土類元素,リチウム,マグネシウム,銅,ニッケルなど,埋蔵量で世界のトップクラスを占めるものが多い。…

【明】より

…これを南明という。
【皇帝独裁の統治機構】
 明朝成立当初の政治制度は,元制に倣った点が多いが,1376年(洪武9)に行中書省を廃して承宣布政使司(布政司,藩司)を設けたのをはじめ,中央では80年に丞相胡惟庸の謀反事件を機に中書省を,したがってその長官たる丞相を廃し,六部その他の政府機関を皇帝の直轄下に置くなど,一連の制度改革を行った。その方向は,官僚の権限分割による相互規制と地方分権化の防止を基礎にして,皇帝独裁の制度的確立をめざしたものであり,宋代に現れた中央集権的な方向をいっそう徹底したものである。…

※「省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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