デジタル大辞泉 「省」の意味・読み・例文・類語
しょう〔シヤウ〕【省】
2 律令制で、
3 中国で、古代の中央政府または中央官庁。
4 中国の行政区画の一。地方行政区画のうち最上位のもの。元代に始まり現在に至る。
[類語]庁・局・署・課・セクション
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
中国の最高行政区画の名称。省の原義は宮中のことで,魏・晋のころから禁中におかれた天子の秘書室を中書省,尚書省などと呼ぶようになった。13世紀,モンゴル王朝は支配領域の拡大とともに,中央政府中書省の出先機関として行中書省,略して行省を各地に置いた。これが南宋の併合ののち,広い行政区域を持つ独立官庁となり,その管轄区域を省と呼ぶようになる。13世紀末には元帝国の領域は,河北,山西,山東は腹裏といって大都の中書省が直轄するほか,河南,陝西,四川,甘粛,遼陽,江浙,江西,湖広,雲南の9行省があり,のちモンゴリアの嶺北行省が加わった。行省の長官は平章政事といった。
明は最初国都南京の周辺を直隷省とし,全国を北平,山東,河南,山西,陝西,江西,湖広,四川,浙江,福建,広東,広西の12省に分け,のち雲南,貴州を加えた。さらに永楽帝の北京遷都とともに北平を北直隷,南京周辺の直隷を南直隷に改めた。省の民政は布政使,監察は按察使が受け持ち,軍事を統轄する都指揮使もいたが,明中期以降はその上に総督,巡撫が置かれるようになった。清朝は南直隷を江南に改め,ついでこれを江蘇と安徽に分かち,また陝西を陝西と甘粛,湖広を湖南と湖北に二分し,ここに本部18省が成立した。なお本部18省は皖(かん)省(安徽),予(よ)省(河南)のようにすべて雅名を持っている。このほか満州民族の根拠地東三省と異民族の多い新疆省があって統治方式を異にしたが,時代が下って中央化が進むとともに,遼寧,吉林,黒竜江,熱河,察哈爾(チヤハル),綏遠(すいえん),寧夏,青海,西康,新疆の10省が加わり,全国28省制ができあがった。
清代は,省の最高長官は中央官待遇の総督または巡撫で,両者は一省一総督の場合の巡撫兼任を除き,同一府州に治所を置かない。巡撫はだいたいすべての省に置かれるが総督は数省を兼ねるのが普通である。その下に布政使,按察使と各種の道員が配備される。民国から人民共和国にいたる間(1912-49),とくに周辺部の省の改廃がしばしば行われたが,2006年現在の全国の省と省都(カッコ内)は以下のとおりである。河北(石家荘),山西(太原),遼寧(瀋陽),黒竜江(ハルビン),吉林(長春),陝西(西安),甘粛(蘭州),青海(西寧),山東(済南),江蘇(南京),浙江(杭州),安徽(合肥),江西(南昌),福建(福州),河南(鄭州),湖北(武漢),湖南(長沙),広東(広州),四川(成都),貴州(貴陽),雲南(昆明),海南(海口)。このほか少数民族の多い省格の自治区として,内モンゴル(フフホト),寧夏回族(銀川),広西チワン族(南寧),チベット(ラサ),新疆ウイグル(ウルムチ)があり,北京,天津,上海,重慶は省格の特別市とされており,台湾省を入れて全部で23省5自治区4特別市が省にあたると考えられる。
→州
執筆者:梅原 郁
国の基本的な行政機関。明治初期に大宝令にならって採用されて以来用いられている名称。第2次世界大戦後の行政組織の基本法である国家行政組織法の下では,府と省が基本的な行政機関であり,2001年の省庁再編を経て,現在,1府(内閣府のみ),11省(法務省,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,総務省,環境省,防衛省)が設置されている。これらが内閣の統轄の下に行政事務を分担し,全体として国の行政組織を構成する。それぞれは国務大臣である各省大臣を長とし,それぞれの所掌事務と権限をもつ。内部は局-課などと構成される階統型に組織され,それぞれの所掌事務の領域について行政事務を行い,政策を実施する機能を果たす。しかし,単に国会,内閣で決定された政策を実施するだけでなく,政策の立案についても重要な役割を果たしている。
→事務次官 →省令 →政務次官 →大臣
執筆者:橋本 信之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
大宝・養老令制官司の等級の一つ。8省ある。太政官の指揮をうけ,職(しき)・寮・司などを管轄。四等官の定員は卿1人・大少輔各1人・大丞1人(式部・刑部(ぎょうぶ)省は2人)・少丞2人・大録1人・少録3人(刑部・大蔵・宮内省は2人)からなり,これらの相当位は中務(なかつかさ)省が1級高く,式部・治部・民部・兵部・刑部・大蔵・宮内の7省がこれにつぐ格付けになっている。令外官(りょうげのかん)の造宮省・内豎(ないじゅ)省もこれに準じる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…石油は,東北,華北,西北などのほかに,渤海から南シナ海にかけての大陸棚などに豊富な油田が探査され,開発がすすんでいるが,重質油が中心であるのが難点である。天然ガスは,四川省に集中している。 このほか,地球上で知られている140種類あまりの有用鉱物資源はすべて中国にあるといわれ,マンガン,アルミニウム,スズ,モリブデン,鉛,亜鉛,タングステン,アンチモン,希土類元素,リチウム,マグネシウム,銅,ニッケルなど,埋蔵量で世界のトップクラスを占めるものが多い。…
…これを南明という。
【皇帝独裁の統治機構】
明朝成立当初の政治制度は,元制に倣った点が多いが,1376年(洪武9)に行中書省を廃して承宣布政使司(布政司,藩司)を設けたのをはじめ,中央では80年に丞相胡惟庸の謀反事件を機に中書省を,したがってその長官たる丞相を廃し,六部その他の政府機関を皇帝の直轄下に置くなど,一連の制度改革を行った。その方向は,官僚の権限分割による相互規制と地方分権化の防止を基礎にして,皇帝独裁の制度的確立をめざしたものであり,宋代に現れた中央集権的な方向をいっそう徹底したものである。…
※「省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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