直腸癌(読み)ちょくちょうがん(英語表記)carcinoma of the rectum
rectal cancer

精選版 日本国語大辞典 「直腸癌」の意味・読み・例文・類語

ちょくちょう‐がん チョクチャウ‥【直腸癌】

〘名〙 直腸にできた癌。便が細くなったり、兎糞様になったりして便の様子が変わり、排便時出血を初期の主症状とする。中年以後に多くみられるが、若年者にもまれでない。

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デジタル大辞泉 「直腸癌」の意味・読み・例文・類語

ちょくちょう‐がん〔チヨクチヤウ‐〕【直腸×癌】

直腸に発生する癌。早期には下痢げり傾向となり、やがて血液が付着した便がみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「直腸癌」の意味・わかりやすい解説

直腸癌 (ちょくちょうがん)
carcinoma of the rectum
rectal cancer

腸癌大腸癌のほぼ過半数を占め,年齢的には40~60歳代の男子に多いとされているが,他の部位の癌にくらべて若年者にもまれではない。直腸に癌が発生して進行すると,腸壁を貫いて直接周囲の組織を侵していく。すなわち男子では膀胱前立腺へ,女子では子宮あるいは腟へ浸潤していく。そのほかリンパ管や血管を介して癌が転移する。とくに血行性の転移は門脈を通って肝臓へ転移する。さらに肺や脳へも転移するが,これらを癌の遠隔転移という。肝臓転移は大腸癌の場合特徴的で,手術時すでに10~15%に肝臓転移がみられるとの報告がある。転移があれば根治手術は不可能である。

症状としては直腸出血便通の変化,不完全な排便感(残便感),会陰部痛などがおもなものである。直腸出血をみた場合,たとえ痔核があっても直腸癌の有無について検査をすべきである。癌の出血は通常持続性である。そのほか全身的にやせ(体重減少)や貧血がある。

確定診断は,直腸指診による硬い腫瘤の触知と注腸X線検査,直腸鏡検査の所見と生検材料の組織学的検査によって行う。直腸鏡は長さ25ないし30cmの硬性の直達鏡で,直接癌の観察が可能であり,さらに組織の一部を切除して病理組織学的検査を行うことができる。癌の形は通常限局型で,中央に大きな潰瘍をもっており,大部分腺癌である。注腸X線検査では典型的な場合,リンゴの芯状の陰影欠損像(apple core像)を示すので,診断は容易である。一方直腸癌は,その約4割がはじめ痔核として治療されている現実からみると,肛門出血あるいは直腸出血があった場合,迷わず専門医を訪ねて正しい診断をしてもらうことがたいせつである。

治療は外科的治療以外にはない。癌のできた部位によって多少手術方法が異なる。癌が上部直腸に発生している場合には直腸切除術(前方切除術)が行われる。癌を含めて直腸切除後,残存した肛門側の直腸とS状結腸とを吻合(ふんごう)する。これに対して腹腔外の下部直腸の癌では,癌を含めて直腸および肛門を大きく切断し(この場合は切除とは呼ばず切断という言葉を使う),自然肛門部は縫合閉鎖する。そして健常部分のS状結腸の切断端を用いて,左下腹部に人工肛門を作成する(腹会陰式直腸切断術,マイルズ手術)。人工肛門は患者にとっていかにも不都合なことであるため,最近では前方切除術のような自然肛門からの排便を考慮する肛門括約筋温存手術や,術後の機能障害を防止する自律神経温存手術に努力がはらわれている。しかし一方,人工肛門に対する洗腸技術(1~2日に1回500~1000mlの微温湯で大腸を洗浄する方法)が進歩し,その管理も容易になっている。予後は食道癌や胃癌にくらべて良好であるが,大腸癌の現在の問題は血行性転移であり,その治療と予防が大きな課題である。術後の局所再発予防には術前放射線照射療法が有効である。
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百科事典マイペディア 「直腸癌」の意味・わかりやすい解説

直腸癌【ちょくちょうがん】

直腸に生じる癌。40〜60歳に多く,直腸膨大部に好発する。初期には無症状のことも多い。便が細くなり,粘血便,血便,しぶり腹などの症状がある。進行すると体重減少,貧血などが起こる。比較的早期に肝臓に転移することがある。直腸鏡で診断。根治手術は直腸切除で,肛門温存手術が広く行われるようになり,直腸下部の癌で肛門切除した場合は人工肛門を造設する。
→関連項目塩酸イリノテカン痔瘻前癌状態腸癌

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「直腸癌」の意味・わかりやすい解説

直腸癌
ちょくちょうがん
cancer of the rectum

直腸膨大部に最も多く発生し,続いて直腸上部にもよく発生する癌。大部分は腺癌で扁平上皮癌はまれ。排便の残留感,血便や粘液便,便形の異常,便秘,ときに疼痛などの症状によって発見される。肛門指診と直腸鏡で容易に診断される。最近,発生の増加傾向が認められる。

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世界大百科事典(旧版)内の直腸癌の言及

【肛門癌】より

直腸癌のうち,肛門管の領域にできた悪性腫瘍をいい,全直腸癌の2~3%の頻度でみられる。肛門管とは,下方は会陰部の毛の生え際に一致する肛門下縁から,上方は肛門粘膜が直腸粘膜に移行するところまでの長さ平均約3cmの部分をいう。…

【大腸癌】より

…大腸の癌腫。発生の部位によって直腸癌と結腸癌に大別される。原因は不明であるが,重視されているのは大腸ポリープのうちの大腸腺腫の癌化で,腺腫の性別頻度,年齢別頻度,部位別分布が大腸癌のそれに一致し,かつ腺腫の一部に癌が見つかることがあるからである。…

※「直腸癌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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