目黒のさんま(読み)めぐろのさんま

改訂新版 世界大百科事典 「目黒のさんま」の意味・わかりやすい解説

目黒のさんま (めぐろのさんま)

落語殿様が,江戸の郊外目黒まで家来と馬で来て空腹を覚えた。殿様は,近くの農家で焼くサンマのにおいをかいで食べたくなり,サンマで食事をして美味をよろこんで屋敷へ帰った。サンマの味が忘れられない殿様は,食膳に出すよう所望した。調理係は,脂(あぶら)が多くては殿様のからだにさわると思い,脂を抜いて団子にして吸物に入れたので出しがらのような味。がっかりして,〈いずれから取りよせた?〉,〈日本橋魚河岸にござります〉。すると殿様,〈やっぱりサンマは目黒にかぎる〉。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「目黒のさんま」の意味・わかりやすい解説

目黒のさんま
めぐろのさんま

落語。ある大名が秋の野駆(のが)けに目黒へ出かけ、昼どきになったので空腹を覚えた。そのとき付近の農家で焼いていたサンマのにおいが殿様の食欲をそそった。殿様は家来と農家に入り、食事を所望してサンマを大いに食べた。すこぶる美味であった。その後、殿様はサンマの味がどうしても忘れられず、食膳(しょくぜん)に供えるよう強く要望した。これを聞いて驚いた調理係の者は上等のサンマを取り寄せ、蒸してすっかり脂肪を抜いたものを出した。殿様は失望し「これがサンマか、ほんとうか、いずかたより仕入れたか」「日本橋魚河岸(うおがし)にございます」「なに、魚河岸? それでいかん、サンマは目黒に限る」。2代目柳家小さんは、殿様を松平出羽守(でわのかみ)としていたが、普通は「さる大名」で口演する。8代目林家正蔵(しょうぞう)(彦六)のように「将軍家」で口演する型もある。もっともよく知られる落語の一つ。

[関山和夫]

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デジタル大辞泉プラス 「目黒のさんま」の解説

目黒のさんま

古典落語演目ひとつ。七代目春風亭柳橋が得意とした。オチは考えオチ。主な登場人物は、殿様。

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