盧武鉉大統領の改憲提案(読み)のむひょんだいとうりょうのかいけんていあん

知恵蔵 「盧武鉉大統領の改憲提案」の解説

盧武鉉大統領の改憲提案

韓国盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(在任2003年2月〜08年2月)は07年1月に国民向けの談話を発表し、いきなり憲法改正を提案した。任期5年の1期限りという現行大統領制を、任期4年にして再選も1回認める、つまり最長2期8年まで在任できるよう憲法を改めようというものだ。3月に政府は改正試案も発表した。韓国には、朴正熙(パク・チョンヒ)長期独裁政権の存在や、間接選挙で軍事政権を維持してきた現代史がある。民主化運動でそうした制度の撤廃が叫ばれ、1987年に、大統領の直接選挙制復活・任期5年・再選なし、という現行憲法ができた。こういう場合、就任早々は順調に滑り出せても、退任時期があらかじめ設定されているため、任期中盤以降はもう政権のレームダック(死に体)現象を招き、国政運営にも苦しむ羽目に陥ってきた。それを改めようというわけだ。たとえ改憲してもその時の大統領には適用されず、かつ、改憲には国会在籍議員の3分の2以上の賛成と国民投票での過半数の賛成が必要だ。改憲はこのようにハードルが高いうえ、最大野党ハンナラ党の賛成も得られなかったことから、盧大統領は4月、改憲提案を断念した。だが韓国には、北朝鮮との対峙(たいじ)もあって強大な権限を集中させる「帝王的大統領制」に対する批判もあり、2期8年までと改めるか、大統領権限を弱めるか、あるいは議院内閣制に移行する、といった改憲論議が以前からある。

(小菅幸一 朝日新聞記者 / 2008年)

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