盛花(読み)もりばな

精選版 日本国語大辞典 「盛花」の意味・読み・例文・類語

もり‐ばな【盛花】

〘名〙
生け花で、かごや、水盤など背の低い皿形の器に花を生ける生け方。また、そのもの。一般には、装飾的に盛りつけた花もいう。
※普請中(1910)〈森鴎外〉「アザレエやロドダンドロンを美しく組み合せた盛花の籠を真中にして」
花柳界料理屋などで、戸口に盛る塩。もりじお。
※いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二「涼しく水を打った店さきに、早くも盛(モ)り花(バナ)(塩)がしてあって」

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デジタル大辞泉 「盛花」の意味・読み・例文・類語

もり‐ばな【盛(り)花】

生け花で、水盤や平かごなどの、丈の低い口の広い花器に盛るようにして生ける生け方。また、その花。
盛り塩のこと。
[類語]草花生花生け花切り花押し花造花ドライフラワー花束ブーケ花輪レイ徒花あだばな無駄花初花国花県花名花梅花桜花菊花綿花菜の花落花

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改訂新版 世界大百科事典 「盛花」の意味・わかりやすい解説

盛花 (もりばな)

いけばなの様式の一つ。明治時代中期,小原雲心によって創案された水盤にいけるいけばな。もり花と表記されていたこともあるが,伝統的には室町時代の《花王以来の花伝書》にあらわれた草体の花にみるように,鉢または水盤に横ひろがりに構成し,自然の景観等を写実的に再現しようとする傾向をもったもので,立花(りつか)の〈砂の物〉形式などを新しく復活させ近代化させたものと見てもよい。盛花の初期には,鉢などに入れたなげいれ(抛入)であるとも理解されたが,式正の花としての立花や生花に対して,俗なるものと見なされていた。しかし,西欧文物の流入による生活空間の近代化の中で,テーブルの上にも飾れる親しみやすいいけばなとして,大正時代からしだいに様式が確立した。写景的傾向と,花をマッスとして扱う近代的な色彩を重視した傾向をもつものがあり,ことに後者自由花(じゆうばな)の出現に影響を与え,さらに現代の造形的いけばなが登場する基盤をつくったものと考えられている。
いけばな
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盛花」の意味・わかりやすい解説

盛花
もりばな

自由花ともいう。明治末期の自然主義時代に発生した生け花の一様式。浅い水盤など生け口の広いものに七宝剣山などの花留を用い,自然の様相を主客2部分の調和表現。また様式を無視してこの種の器に生けたものをいう。自由花とは,立華や生花が規則ずくめで格式があるものとして「格花」と呼ぶのに対する語。

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世界大百科事典(旧版)内の盛花の言及

【いけばな】より

…曲(きよく)・節(せつ)・時(じ)という三当を重要なものとした生花流派の遠州流は,とくにその花形に曲が多く流麗で,その美しい線の構成は,幕末から明治にかけて外国に紹介され,フラワー・アレンジメントに大きな影響を与えた。
[近代のいけばな]
 明治中期に盛花(もりばな)という新しい形式のいけばなが創案された。盛花ははじめは自然主義的なものであったものが,やがて洋花を使った色彩豊かな盛花が考案されるようになってから,洋風なテーブルの上に置くことのできるいけばなとして,大正年間にかけて非常に流行した。…

※「盛花」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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