精選版 日本国語大辞典 「盗・偸」の意味・読み・例文・類語
ぬす・む【盗・偸】
〘他マ五(四)〙
① 他人のものをひそかに奪いとる。かすめとる。
② ひそかに連れ出して妻とする。また、人目を忍んで異性と通ずる。
③ 人目を忍んでひそかに物事を行なう。こっそりと見聞きしたり行なったりする。人目をごまかして事をする。また、他の動詞と複合して、その動作をこっそりと行なう意を表わす。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「『何が余りだ? 親の目を盗んで…』」
④ ぬすみ見をする。ひそかに見る。
※鳥影(1908)〈石川啄木〉三「其拍子に昌作の方をチラと偸視(ヌス)む」
⑤ 他人の芸や作品、また考えや行ないなどをひそかにまねて学ぶ。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八「常人の資を以て、衆師の説を竊(ヌスメ)り」
⑥ やりくりして利用する。
⑦ 野球で、盗塁をする。
※日本野球史(1929)〈国民新聞社運動部〉無鉄砲な盗塁法「一塁を得れば二塁、三塁を盗(ヌス)む事は当然のものとされてゐた」
⑧ 音曲の文中のある文字の音を発音しないでうたうこと。
※徒然草(1331頃)二一九「中の穴盤渉調、中と六とのあはひに神仙調あり。かやうに間々に皆一律をぬすめるに」
⑨ 形をおおい隠す。
ぬすみ【盗・偸】
① ぬすむこと。また、その行為。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「大将殿こそ〈略〉ぬすみし侍り。この御物みな取る」
※洒落本・仕懸文庫(1791)四「ぬすみとはしまってある子供、その客のくるまをほかへ出ること也」
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