盗み魚(読み)ヌスミウオ

デジタル大辞泉 「盗み魚」の意味・読み・例文・類語

ぬすみ‐うお〔‐うを〕【盗み魚】

漁夫が漁獲物をくすねること。道心坊

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「盗み魚」の意味・わかりやすい解説

盗み魚
ぬすみうお

漁場に働く漁師や手伝いの者が漁獲物をくすねること。単なる盗みではなく、公然と盗むことで、漁師仲間の間で公許された盗みとされる。

 この習俗は、一般に東日本ではドウシンボウ、西日本ではカンダラなどとよび、漁村では古くから行われているが、その原因については種々取りざたされている。一般には、表向きの「しろわけ」(分け前)が十分でないこと、不安定な報酬に対する補いのための行為とみられているが、本来は信仰的な背景もとに成り立っていたのであろう。しかしこの点はまだ十分解明されておらず、また今日ではこの習俗が行われなくなってきており、その意味も忘れられようとしている。

[野口武徳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盗み魚」の意味・わかりやすい解説

盗み魚
ぬすみうお

漁民が漁獲物の正規の分配であるしろわけ以外のものを盗む習俗。カンダラ,ドウシンボウなどともいう。この盗みは,船子給金を補うために必要なものとして黙認されていた。それも一定しない漁獲高のために多額の固定給が得られないためであった。自給経済のもとでは自家の食用程度の量はいつでもとれたわけであり,大規模な漁業組織 (親方,船子など) ができ,漁獲物が商品として扱われるようになった段階に確立した習俗である。

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