(読み)ぼん

精選版 日本国語大辞典 「盆」の意味・読み・例文・類語

ぼん【盆】

〘名〙
① ひらたい瓦器。ひらか。鉢。〔荘子‐至楽〕
② 浅い縁のある、物をのせて運ぶための板状の具。材質は木、金属、プラスチック、竹などで、形も方形、円形など種々ある。〔運歩色葉(1548)〕
③ 博打(ばくち)で、さいころを振り出すところ。ぼんござ。転じて、博打場。賭場。
※浮世草子・渡世身持談義(1735)三「上座と思しき所に金の盆(ボン)を敷て」
④ 博打。勝負。
浄瑠璃箱根霊験躄仇討(1801)七「こちでするぼんは、いつでもアノ下た家」
⑤ 家。宿。すまい。
※浄瑠璃・奥州安達原(1762)二「えいわ待ってやらうというてもぼん無しなりゃ、いんで居る内がない」
⑥ 男女密会の席。
※洒落本・浪花色八卦(1757)桔梗卦「色事の中宿も盆(ボ)んと唱へて」
⑦ (その形が②に似るところから) 回り舞台の円形の部分。

ぼん【盆】

〘名〙
① (盂蘭盆(うらぼん)の略) 七月一五日に行なわれる仏事。《季・秋》
※俳諧・古活字版中本犬筑波集(1532頃)恋「ほんには人のかよふたまづさ むかしよりその文月のこひのみち」
② 盂蘭盆の際の供物・布施。
※枕(10C終)三〇七「七月十五日、ぼん奉るとて」
③ 盂蘭盆の七月一五日前後数日の称。

ぼに【盆】

〘名〙 (「ぼん」の撥音「ん」を「に」と表記したもの) 七月一五日に行なわれる仏事。また、その際の供物。
※蜻蛉(974頃)上「十五六日になりぬれば、ぼになどするほどになりにけり」

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デジタル大辞泉 「盆」の意味・読み・例文・類語

ぼん【盆】[漢字項目]

常用漢字] [音]ボン(呉)
口が大きく開いた浅い器。「盆景盆栽盆石
くぼんだ形。「盆地海盆
食器などをのせて運ぶ平たい道具。「角盆茶盆丸盆
盂蘭盆うらぼん。「旧盆新盆にいぼん・あらぼん初盆はつぼん

ぼん【盆】

《「盂蘭盆うらぼん」の略》
盂蘭盆のこと。お盆。 秋》「御仏は淋しき―とおぼすらん/一茶
盂蘭盆の供物・布施。
「七月十五日に―を奉りし女」〈今昔・二四・四九〉
[類語]盂蘭盆精霊会新盆旧盆霊祭り

ぼん【盆】

物をのせて運ぶのに用いる縁の浅い平たい器。
丁半ばくちで、壺を伏せる所。盆茣蓙ぼんござ。また、ばくち場。賭場。「を開く」
平たい鉢形の瓦器。「覆水ふくすいに返らず」
家。宿。また、席。特に、男女密会の席。
なうにも―はなし」〈浄・歌祭文
[類語]トレー

ぼに【盆】

《「ぼん」の撥音「ん」を「に」と表記したもの》
盂蘭盆うらぼん。ぼん。
「十五、六日になりぬれば、―などするほどになりにけり」〈かげろふ・上〉
盆の供養の布施物
「御―どもは例の数候ふや」〈宇津保・内侍督〉

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改訂新版 世界大百科事典 「盆」の意味・わかりやすい解説

盆 (ぼん)

器物類や小物を置いたり持ち運ぶために使用する道具の一つ。現在一般には形状や素材に関係なく,平底(ひらぞこ)で周縁に低い立上り(縁)をめぐらしたものをいう。〈盆〉の呼称がいつごろから用いられるようになったかは詳らかでないが,東大寺の修二会(しゆにえ)(お水取り)に際し,参籠の僧侶たちが食堂での食事作法に使用する円形漆塗りの食器盆は,裏面に〈二月堂練行衆盤廿六枚内 永仁六年十月 日漆工蓮□〉の銘を記しており,現在の盆と機能的にも形状的にも共通する類のものを,当時は〈盤〉と称していたことがわかる。この盤の名は《和名抄》の〈瓦器類〉では〈さら〉と訓じているが,奈良時代の正倉院文書の中にも〈木佐良〉〈木盤〉〈陶佐良〉などの記載が散見され,それが奈良時代以来の訓みであったことを明らかにしている。ただ正倉院南倉に蔵される二彩の大平鉢は銘文に〈戒堂院聖僧供養盤〉とあり,また金銀華盤(けばん)と称する花足つきの花形容器にも〈東大寺花盤重大六斤八両〉の刻銘のあることを勘案すれば,平底の器物を盤と称したとしても,その形状はかなり多様であったと思われる。この盤の呼称は先述した永仁6年(1298)の〈東大寺練行衆盤〉以降も,奈良法華寺の羅漢供所用具として徳治3年(1308)に調進された長方形角丸盆や,至徳1年(1384)の年紀をとどめ俗に安居屋盆(あごやぼん)と称される形式の方形入角(いりずみ)の供物盆にも,銘文中に盤の名が用いられているから,鎌倉時代を通じてなお盤がいまいうところの盆の呼称だったことを示唆している。盆名を記した遺品としては,現在までのところ西大寺に伝わる享徳4年(1455)銘の〈天目盆〉が古い。これは縁を花形にかたどったいわゆる輪花盆(皿)に丈の高い高台をとりつけたもので,通常高盤(こうばん)と称されるものに該当するが,天目台や茶筅(ちやせん),茶碗などをのせて使用するところからこの名が用いられたのであろう。現在の盆とは趣を異にするが,盤が多様な形式を包括しているのと同様,盆も当時は形式的にかなり多様性を帯びていたものと考えられる。以後,盆名を記した事例は,俗に〈根来(ねごろ)〉と称される室町時代の朱漆塗り皿状容器の銘文中にも散見されるようになるので,盤にかわって盆の名称が一般化するのも室町時代中期ころからであろうと想定される。

 盆には用途によって給仕盆,茶盆,菓子盆たばこ盆,証書盆などの種類がある。材質は古くは漆器が多かったが,現在では木材,金属,陶器,プラスチックなどが用いられ,それに彫刻,象嵌(ぞうがん),蒔絵(まきえ)などの加飾を施したものが多い。給仕盆のなかでも〈長手盆〉は持ち運びやすいように持ち手がつけられ,また収納,整理に便利なように組重ね式,入れ子式のものもある。茶盆,菓子盆,たばこ盆は実用性と趣味性をあわせもつので,形も変化に富み,産地の特色を生かした加飾がおこなわれる。証書盆や名刺受け盆は形も小さく縁も浅く,唐木(からき),埋木(うもれぎ),漆器などが多い。盆は会津,輪島,山中高松など主要な漆器産地ではどこでも作られている。
執筆者:

盆 (ぼん)

盂蘭盆会(うらぼんえ)

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百科事典マイペディア 「盆」の意味・わかりやすい解説

盆【ぼん】

7月15日を中心に行われる祖先の霊をまつる行事をいい,盂蘭盆(うらぼん)の略語とされるのが通説だが,日本各地の行事の中には仏教以外の古い信仰の形をとどめているものが多い。死者,精霊を〈みたま〉としてまつるだけでなく,現存の親を〈いきみたま〉とし,魚をとって供え,もろこいはい,生盆(いきぼん),ぼんざかななどと称する。〈ぼん〉とは,これらをのせて供した器の名に由来するともいわれる。また,盆の期間も6月晦日から7月16日までの長い間だったと考えられ,正月行事に匹敵する大切な行事であった。→精霊流し灯籠流し盆踊盆小屋
→関連項目盂蘭盆会祖先崇拝タイマ(大麻)魂祭中元祭り

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日本文化いろは事典 「盆」の解説

お盆は旧暦の7月15日を中心に行われる先祖供養の儀式で、先祖の霊があの世から現世に戻ってきて、再びあの世に帰っていくという日本古来の信仰と仏教が 結びついてできた行事です。多くの地方で8月13日の「迎え盆」から16日の「送り盆」までの4日間をお盆としていますが、地方によっては7月一杯をお盆 とする地域や旧暦通り7月15日を中心に行う地域などがあります。

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食器・調理器具がわかる辞典 「盆」の解説

ぼん【盆】

料理などをのせて持ち運ぶのに用いる縁の浅い平らなうつわ。材質は、木、竹、金属、プラスチックなどで、形は円形、長方形などがあり、用途別には菓子盆、茶盆などがある。◇洋風の物は「トレー」ともいう。

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葬儀辞典 「盆」の解説

先祖の霊を家に迎え、供養する行事。一般には7月13日から15日までの期間に行われますが、地方により旧暦の7月、あるいは8月13日から15日に行うところもあります。=盂蘭盆(うらぼん)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盆」の意味・わかりやすい解説


ぼん

盂蘭盆」のページをご覧ください。

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