盂蘭盆
うらぼん
サンスクリット語 ullambanaの音写。単に盆ともいう。仏教行事の一つ。餓鬼道などにおちて倒懸 (さかさまにつるされること) の苦しみを受けている亡者のために仏事を行なって,その苦しみを取除くこと。仏弟子目連が,餓鬼道におちた母の苦しみを除こうとして僧たちを供養したという『盂蘭盆経』の伝説に基づく。日本では,推古 14 (606) 年に斎を設けたのが始りとされるが,本格的には斉明3 (657) 年とされる。もとは,宮中の正式の行事として,中国から伝えられたものであるが,鎌倉時代になると,鎌倉幕府がこれを行い,一方,寺院では施餓鬼をあわせ行うようになった。こうして,盂蘭盆の行事が,民間の祖霊信仰と結合して現在のようになったのは,江戸時代とされている。しかし,『盂蘭盆経』の成立,盂蘭盆の原義,日本への伝播と変遷などに関してははっきりしない点があり,異説が多い。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
うらぼん【盂蘭盆】
〘名〙 (ullambana 「倒懸」の音訳) 陰暦七月一五日を中心に行なわれる仏事。祖先の霊を自宅にむかえて供物をそなえ、経をあげる。現在では、一三日夜に迎え火をたいて霊を迎えいれ、一六日夜に送り火で霊を送る。もともと「盂蘭盆経」の記事にもとづくもので、日本で公に行なわれたのは、推古天皇一四年(
六〇六)といわれ、聖武天皇天平五年(
七三三)からは宮中恒例の仏事となった。一方、民間の盆行事の中には仏教要素以外のものも多く、正月に対応する祖
霊祭の要素が強い。盂蘭
盆祭(うらぼんさい)。
盂蘭盆会(うらぼんえ)。魂祭
(たままつり)。精霊会
(しょうりょうえ)。歓喜会
(かんぎえ)。盂蘭
盆供(うらぼんぐ)。盂蘭盆供会
(うらぼんぐえ)。うらん
ぼん。おぼん。ぼん。《季・秋》
※続日本紀‐天平五年(733)七月庚午「始令三大膳職備二盂蘭盆供養一」
うらん‐ぼん【盂蘭盆】
※俳諧・番匠童(1689)七月「盂蘭盆
(ウランホン)中元共に十五日也」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「盂蘭盆」の意味・読み・例文・類語
うらぼん【×盂×蘭盆】
7月15日を中心に祖先の冥福を祈る仏事。江戸時代からは13日から16日にかけて行われ、ふつう、迎え火をたいて死者の霊を迎え、精霊棚を作って供物をそなえ、僧による棚経をあげ、墓参りなどをし、送り火をたいて、霊を送る。現在は、地方により陰暦で行う所と、一月遅れの8月15日前後に行う所とがある。精霊会。盆。お盆。盂蘭盆会。魂祭り。うらんぼん。《季 秋》
[補説]一般に、梵ullambana(逆さづりの意、倒懸と訳す)の音写とされるが、異説がある。
[類語]盆・精霊会・新盆・旧盆・霊祭り
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
葬儀辞典
「盂蘭盆」の解説
盂蘭盆
先祖の霊を家に迎え、供養する行事。一般には7月13日から15日までの期間に行われますが、地方により旧暦の7月、あるいは8月13日から15日に行うところもあります。=盆(ぼん)
出典 葬儀ベストネット葬儀辞典について 情報
世界大百科事典内の盂蘭盆の言及
【月】より
…満月や上弦,下弦の月が目印になるのはいうまでもない。盂蘭盆(うらぼん)は仏教受容以前,初秋の満月の晩に行われた魂祭(たままつり)に始まる。正月も小正月の15日のほうに素朴な由緒ある行事が見られる。…
【目連の草子】より
…母は目連に財を与えようとした慳貪(けんどん)の罪で餓鬼に堕し,さらに出家した目連のために大阿羅漢の死を願って地獄に堕していた。4月1日に蘇生した目連は写経供養して母の苦を救い,7月15日に盂蘭盆会(うらぼんえ)を行った。盂蘭盆の起源説話であるが,《盂蘭盆経》や中国の所伝,あるいは《三国伝記》や後代の《目連記》の所伝とは異なる。…
※「盂蘭盆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報