皮質性小脳萎縮症

内科学 第10版 「皮質性小脳萎縮症」の解説

皮質性小脳萎縮症(脊髄小脳変性症)

(2)皮質性小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy:CCA)
概念・病理・病因
 中年期に発症する非遺伝性脊髄小脳変性症である.症候学的には小脳症状を呈するのみで,ほかの神経系統の障害を伴わない.晩発性皮質小脳萎縮症(late cortical cerebellar atrophy:LCCA)と称されることがある.病理学的には小脳皮質の選択的な変性をきたす.変性は虫部,特に上面に強い.組織学的には皮質Purkinje細胞が選択的に脱落する.原因は不明である.
臨床症状・診断
 発病から全経過を通じて小脳症候のみを呈する.構音障害や起立歩行のふらつきで発病するものがほとんどである.進行すると運動失調は四肢・体幹に及び,起立独歩困難となる.臨床的には,成人発症で,非遺伝性であり,緩徐進行性の小脳性運動失調を主徴としてほかの神経系統の障害を伴わず,画像診断で萎縮が小脳に限局しているものを皮質性小脳萎縮症として診断する.
検査成績
 血液,尿検査で特異的な異常を認めない.画像診断では萎縮は小脳皮質に限局する.萎縮は虫部に強い.脳SPECTでは小脳の血流が低下する.
鑑別診断
 薬物中毒や遺伝性脊髄小脳変性症などを鑑別するうえで,家族歴や生活歴から得られる問診情報にまさるものはない.二次性小脳失調症が疑われる場合には,基礎疾患を考慮して鑑別診断を進める.よく知られているものとしては薬物中毒や甲状腺機能低下症に伴う運動失調,アルコール性小脳変性症,傍腫瘍性小脳変性症などである.神経変性疾患ではオリーブ橋小脳萎縮症(MSA-C)との鑑別が問題となる.MSA-Cは発病初期には運動失調のみであり,ほかの系統症候がなく,画像診断においても脳幹萎縮は認められない場合には,鑑別は難しい.ついで鑑別対象となるものは成人発症する遺伝性脊髄小脳変性症の一群である.その多くは小脳性運動失調で発病し,前半期の主要症候である.特に高齢発症では進行も緩慢となり,運動失調が前景となる疾患が多い.これらの疾患を慎重に鑑別した場合,皮質性小脳萎縮症は比較的まれな疾患である.
経過・治療
 緩慢進行性の経過をとり,特異的な治療法は知られていない.ほかの脊髄小脳変性症と同様に,リハビリテーションによる機能維持が中心となる.[佐々木秀直]
■文献
滝山嘉久,中野今治:晩発性皮質小脳萎縮症.別冊日本臨牀領域別症候群シリーズNo 27.神経症候群Ⅱ,pp 247-250,日本臨牀社,大阪,1999.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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