百鬼夜行絵巻(読み)ひゃっきやこうえまき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「百鬼夜行絵巻」の意味・わかりやすい解説

百鬼夜行絵巻
ひゃっきやこうえまき

室町後期(16世紀)の絵巻。さまざまな妖怪(ようかい)が夜行するさまを描く。青鬼、赤鬼のほか琴、琵琶(びわ)、笙(しょう)、沓(くつ)、扇、鍋(なべ)、釜(かま)、五徳などの器物調度化け物を集めて連続的に描く。詞書(ことばがき)はもたず、内容をつまびらかにしないが、これに類似した『付喪神(つくもがみ)絵巻』(模本が伝存)が、器物や調度を粗末に扱うと、後日それらの妖怪が京の町中を練り歩く、という意味の内容を説いており、これに類することが描かれていると推測される。たくましい空想力と、戯画的な諧謔(かいぎゃく)味を帯びた画面は、絵巻作品中でも異色である。遺品の種類も多く、いずれも土佐派系の画家の手になるが、京都・大徳寺真珠庵(あん)の一巻は構成が整い、最古のものとされる。肥痩(ひそう)の著しいのびやかな描線に濃彩を施し、奔放な作風を示す。重要文化財

[村重 寧]

『小松茂美編『日本絵巻大成25 百鬼夜行絵巻他』(1979・中央公論社)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「百鬼夜行絵巻」の意味・わかりやすい解説

百鬼夜行絵巻 (ひゃっきやこうえまき)

京都大徳寺真珠庵所蔵の1巻を代表作とする室町時代16世紀の絵巻。夜の闇にあらわれるさまざまな妖怪を連続的に登場させ,最後に日輪があらわれ,妖怪たちがあわてて退散しようとするまでを描く。詞書はなく,矛をかついだ青鬼,御幣を振りまわす赤鬼をはじめ,払子(ほつす),沓(くつ),琴,琵琶,鳥兜,笙,扇などの怪物,おはぐろをつけている女や,おかめのような化物,鍋,釜,銅鉢,弓,五徳などの器物の化物が次々にあらわれるが,いずれも肥瘦の著しい墨線で大ぶりに描かれており,そのデフォルメされた形態はむしろユーモラスでもある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「百鬼夜行絵巻」の解説

百鬼夜行絵巻

室町時代後期(16世紀)の絵巻。様々な妖怪が夜行する様子を描いたもの。土佐光信が描いたと伝えられる同作のほか、数巻の模写が存在する。重要文化財。京都、大徳寺真珠庵所蔵。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android