白蝋病(読み)はくろうびょう

精選版 日本国語大辞典 「白蝋病」の意味・読み・例文・類語

はくろう‐びょう ハクラフビャウ【白蝋病】

〘名〙 鋲打機や動力式の鋸など、手持ちの振動工具を多用することにより、自律神経障害から手の動脈に血流障害をきたし、指が蒼白となる職業病症状発作的で痛み、しびれを訴える。〔工場への逆攻(1976)〕

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デジタル大辞泉 「白蝋病」の意味・読み・例文・類語

はくろう‐びょう〔ハクラフビヤウ〕【白×蝋病】

チェーンソーびょう打ち機などを長期間使用する場合にみられる職業病。工具の振動が手に血行障害をもたらして指が白くなり、しびれ・痛みや知覚異常がみられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白蝋病」の意味・わかりやすい解説

白蝋病
はくろうびょう

局所振動障害で、職業病の一つ。チェーンソー、削岩機、鋲(びょう)打機など振動を手や腕に伝える手持ち動力工具を、長期間使用することにより生ずる局所の循環障害による疾患である。チェーンソーが国有林に導入されたのは1955年(昭和30)ごろであるが、62年ごろになって木曽谷(きそだに)の国有林労働者の間に指がしびれ、寒くなると白蝋状になる症状が訴えられ始め、白蝋病とよばれるようになった。欧米では振動による白指vibration induced white finger(VIWF)などといい、医学的には振動障害あるいは振動病とよばれるものに相当する。

 症状としては、手足の指の皮膚色調が間欠的に変化し、蒼白(そうはく)、チアノーゼ紅潮を呈するとともに、しびれや疼痛(とうつう)を訴える(レイノー現象)ほか、知覚異常があり、進行すると皮膚の硬化、爪(つめ)の変形、筋萎縮(いしゅく)、骨関節障害がみられる。原因はまだ不明であるが、振動による血行障害、末梢(まっしょう)神経障害、自律神経障害、骨関節障害などが考えられている。

 治療としては、振動工具の使用を中止するとともに、増悪因子である寒冷刺激にさらされないように注意する。また、温浴療法などの物理療法のほか、薬物療法として血管拡張剤、鎮静剤、向神経性ビタミン剤などが使用される。

[木村和文]

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百科事典マイペディア 「白蝋病」の意味・わかりやすい解説

白蝋病【はくろうびょう】

山林労働者でチェーンソーを使用する者に起こる職業病。一般に振動工具を長期使用すると,血管運動神経障害により,四肢の間欠的な蒼白(そうはく),チアノーゼ,しびれ,疼痛(とうつう)を起こすが,これが進行し手首,肘(ひじ),肩の関節障害,筋肉痛が起こり,手の感覚も鈍麻するようになったもの。なお,エアハンマー,電気ドリル,さび落しなどの振動工具を手で操作する労働者,オートバイを常用する郵便配達員などにも手指が蒼白となる発作が認められ,白蝋病は振動障害とも呼ばれるようになった。
→関連項目振動公害チェーンソー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白蝋病」の意味・わかりやすい解説

白蝋病
はくろうびょう
white finger disease

振動病ともいう。チェーンソーなどの振動工具を長期間使用して生じる局所の振動障害。血管運動障害によって手指が発作的に蒼白となり,しびれや痛みを伴う (レイノー症状) 。重症のときは患部が壊死に陥る。寒冷地の山林労働者に多発する職業病の一つ。

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