白紙(読み)はくし

精選版 日本国語大辞典 「白紙」の意味・読み・例文・類語

はく‐し【白紙】

〘名〙
① 白い色の紙。
※延喜式(927)二二「凡籍書者〈略〉西海道諸国書白紙
明暗(1916)〈夏目漱石〉一〇八「彼女は紙入の中から白紙(ハクシ)に包んだものを抜いて」 〔白居易‐開元九詩書巻詩〕
唐紙の一種。白色で、紙質はきわめて薄く、もろい。書画用にするもの。
③ 何も書いてない紙。しらかみ。試験などで、何も答案を書いていない紙や答の欄(らん)もいう。
古事談(1212‐15頃)五「俄辻風出来、件経巻を尽吹揚虚空畢〈略〉頃之経巻皆成白紙地」
※学生時代(1918)〈久米正雄〉受験生の手記「たった一題の処を白紙で出すのは残念だ」
和歌の会などに、歌題と官位姓名だけを書いて、歌は書かないこと。また、その紙。
※袋草紙(1157‐59頃)上「置白紙作法 題目并位署許書て諸人歌置之後置之、逐電而不講席之座云々」
⑤ かみばなのこと。遊里では祝儀に用いられ、後日現金と引き換えるしるしとして白い紙だけを包んで与えた。
※雑俳・柳多留‐一三九(1835)「銀札に白紙を使ふ別世界」
先入観などのない状態や、何もなかったもとの状態をたとえていう。
一年有半(1901)〈中江兆民〉附録「国民党とは何ぞ、白紙党なり〈略〉汝が来たりて大書し特書するに任ず」

しら‐かみ【白紙】

〘名〙 (「しらがみ」とも)
① 色の白い紙。はくし
蜻蛉(974頃)下「昨日のしらかみおもひいでてにやあらん、かくいふめり」
② 何も書いてない紙。はくし。
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立「『蜜書でござるか。何と書てござるかな』『一字一点なき白紙(しらかみ)』」
③ 後に現金ととりかえる祝儀の白紙。
※俳諧・大坂独吟集(1675)上「勧進すまふありてなければ〈略〉白紙は外聞ばかりの花野にて〈西鶴〉」

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デジタル大辞泉 「白紙」の意味・読み・例文・類語

はく‐し【白紙】

白色の紙。しらかみ。
書くべきところに、何も書いてない紙。「答案を白紙で出す」
意見などを何ももたないこと。「白紙会議に臨む」
何もなかったもとの状態。「話を白紙に戻す」「白紙撤回」
中国渡来の、白くて薄い紙。書画用。

しら‐かみ【白紙】

色の白い紙。
何も書かれていない紙。はくし。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白紙」の意味・わかりやすい解説

白紙
しらかみ

染めていない白い紙、あるいはなにも書かれていない紙のこと。「しらっかみ」ともいう。式亭三馬(しきていさんば)の『浮世床(うきよどこ)』初編(1811)に、「此位(これくらい)なら白紙をよこす方がはるかに増(まし)だぜ」とある。

[町田誠之]

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世界大百科事典(旧版)内の白紙の言及

【徴用】より

…徴用の施行に際しては,当初は応召に次ぐ名誉として応ずる人の姿もみられたが,回を重ねるごとにその強制的性格と労働条件の劣悪さから不評を買い,すでに40年には2,3割の不出頭者が出た。軍隊への召集令状〈赤紙〉に対して徴用令状を〈白紙〉といって恐れる傾向が生まれたのである。 太平洋戦争開始とともに徴用制は労働力動員の〈伝家の宝刀〉として全面的に発動され,その対象の多くは平和産業,中小商工業者の転・廃業労働力であった。…

※「白紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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