発破(読み)はっぱ(英語表記)blasting

翻訳|blasting

精選版 日本国語大辞典 「発破」の意味・読み・例文・類語

はっ‐ぱ【発破】

〘名〙 鉱山土木工事などで、ダイナマイトなどの火薬をしかけて爆破すること。また、それに用いる火薬の類。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「発破」の意味・読み・例文・類語

はっ‐ぱ【発破】

爆薬を仕掛けて岩石などを爆破すること。また、その爆薬。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「発破」の意味・わかりやすい解説

発破 (はっぱ)
blasting

発破は爆破と同義語であるが,爆破という語にはより学術的なニュアンスがあり,発破という語はその慣用語であるとする見方もある。また軍事用には爆破が,工業用には発破がというように,使われる分野によって区別することもある。

 可燃性ガスに引火した場合のように,物質が急激にその容積を増大する現象を爆発というが,その爆発を利用して物体を破壊する作業を発破または爆破という。そして,そのために用いる薬剤が火薬あるいは爆薬で,総称して火薬類といわれる。日本には〈火薬類取締法〉があり,火薬類による災害を防止し,公共の安全を確保することを目的として,火薬類の製造,販売,貯蔵,運搬,消費,その他の取扱いを規制しているが,その中で,火薬類を次のように分類している。(1)火薬類 火薬,爆薬,火工品の総称。(2)火薬 比較的穏やかな反応をするもので,銃砲の発射薬などとして用いられるもの。黒色火薬,無煙火薬など。(3)爆薬 激しく反応し,破壊的爆発の用途に用いられるもの。ダイナマイト,硝安油剤爆薬など。(4)火工品 火薬,爆薬を使用したもので,爆発反応の生起,伝達などに利用するもの。雷管,導火線などがある。

 発破は広くいろいろな分野で行われるが,とくに土木工事や鉱山作業において,岩石の掘削や構造物の破壊に用いられることが多く,日本で年間6万~7万t生産される工業用爆薬のほとんどが,土木,鉱山の現場で消費されている。発破作業では,爆薬の爆発力をより効率よく利用するために,岩石などに小孔をあけて,その中に爆薬を装てんして起爆する方法をとるのが普通である。岩石やその他の構造物の表面に爆薬をのせて行う方法(外部装薬,貼付け(はりつけ)発破ともいう)もあるが,エネルギー大部分が空気中に散逸してしまうため爆破の効果は著しく減少する。

 爆薬を装てんする小孔を岩石などにせん孔するために,各種の削岩機が開発されている。トンネルなどの掘削では,直径30~70mm程度で長さが1~3mの小孔をうがち,それに数百gから数kgの爆薬を装てんして発破するが,露天採掘などの大型の発破では,直径100~300mm,長さ10~20mという大きな発破孔に数十~数百kgもの爆薬を装てんした発破も行われる。いずれの場合も,一度に,数十本ずつの発破孔が起爆される。短い時間をおいて少しずつ起爆することもある。削岩機であけた小孔ばかりでなく,小山の内部に小坑道を掘って,その小坑道の奥や特別に作られた小部屋の中に数tという爆薬を仕掛けて起爆し,一挙に数万tの岩石を破壊してしまう方法もある。坑道発破,薬室発破などと称するが,アメリカでは,このための坑道がコヨーテの巣穴に似ているところから,コヨーテトンネルブラスティングと呼ぶこともある。また海底の岩盤を破壊するために,海面から海底の岩盤にせん孔して行う水中発破の技術もある。本州と四国を結ぶ本四連絡橋の長大な橋のいくつかで,その橋脚を設置する基礎部の岩盤の掘削に成果をあげた。海面から数十mもの深い所での発破で,特別な水中発破用爆薬や起爆方法を開発して,潮流の激しい,しかも船舶の往来の頻繁な海域での作業を無事完了した。

 堅固な岩盤や構造物の破壊を目的とするのであるから,強力な発破が望まれるのは当然であるが,最近では,ただむやみに強力な発破を行うのではなく,むしろ,その強大な爆発力をコントロールして使おうという考え方が強くなってきている。その一つにスムースブラスティングと呼ばれる技術がある。爆薬の破壊力を破壊しようとする部分にのみ向けて,それ以外の部分へはその影響が及ばないようにするもので,直径の大きい発破孔に直径の小さい爆薬を装てんして発破を行い,隣接する発破孔との間に亀裂を入れる方法である。トンネルの外周や掘割の壁面を平滑に仕上げる場合などに使われる。こうした制御発破(コントロールドブラスティング)の考え方は,家屋が密集し,公共機関が発達した市街地などでの構造物の破壊や岩盤の掘削にも適用され,小さく,穏やかな発破を行う都市発破の技術の発達を促した。なお膀胱結石症など臓器内に小さな石塊ができる病気があるが,この石を体中で爆破して壊し,取り出そうという研究も行われている。ファイバースコープなどの助けをかりて,数mgの少量の爆薬を結石に付着させて爆破するのであるが,手術なしに結石の除去ができる方法として,すでに膀胱結石に対しては成功しており,さらにより広い応用のため研究が続けられている。

 発破はきわめて危険な方法であるかのように考えられているが,その取扱い方さえ誤らなければ,そんなに恐ろしいものではない。そのため,日本では,前述の火薬類取締法をはじめ,制度や教育によってその安全が図られており,発破作業での事故もきわめて少なくなってきている。ただ一方で,社会環境に対する影響がいわれるようになってきた。発破の規模が大きくなり,また,住宅や道路が発破地点に接近してくるようになって,発破の影響が作業現場から一般の社会へ及ぶようになってきたためである。発破がひき起こす公共の場に対する影響には,振動,騒音,飛石,粉塵に関係したものが含まれる。爆薬を雷管などで衝撃すると,爆薬は急激な爆発反応を起こして激しく燃焼し,高い温度(2000~3000℃)と膨大な量のガス(1kgの爆薬が数百lものガスを発生する)を発生する。岩盤中の発破孔のように密閉された空間で爆薬が爆発すると,この内部では,瞬間的に数万気圧にも達する大きな圧力が発生する。発破は,この瞬間的に上昇する圧力の衝撃と高圧のガスの膨張力を利用して物体を破壊するものである。したがって,発破をすれば,物体には大きな衝撃が与えられて割れ目が発生し,こうした割れ目や発破孔から高圧のガスが噴出する。この際の衝撃の一部が振動になり,爆発音となり,ガスの噴出が飛石や粉塵を発生させることになる。そして,大きな発破であればあるほど,こうした現象も大きくなる。発破の衝撃をできるだけゆっくりとしたものに抑制したり,ガスの発生が極力小さくなるようにして岩石を粉砕する方法もないことはないが,それでは物体の破壊は局限され,破壊の能率も上がらない。発破の強さとそれによって起こる種々の問題との間には,このような矛盾した関係がみられるが,爆薬のエネルギーを物体の破壊のほうにのみ向けて,その周囲への影響をできるだけ小さくするように努力する必要がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「発破」の意味・わかりやすい解説

発破
はっぱ

爆薬を用いて物体を破壊すること。堅固な岩石などの掘削、鉱石や石炭の採掘に用いられる。発破作業は、爆薬を装填(そうてん)する発破孔の穿孔(せんこう)、爆薬の装填、込物(こめもの)による発破孔の閉塞(へいそく)、点火などの一連の工程からなる。発破孔の穿孔は、たがねとハンマーによる手掘りと、削岩機、オーガーなどによる機械掘りとがある。手掘りは小規模鉱山などで特別に行うだけで、一般に削岩機が用いられ、石炭層など軟質体にはオーガーが用いられる。削岩機などによる機械掘りに対し、酸素と燃料油の燃焼炎をノズルから噴射して堅い岩石を溶かして穿孔する方法がある。これをジェットピアシングという。発破孔が穿孔されると雷管を取り付けた爆薬(親ダイ)と殉爆させる爆薬とを順次孔底まで木製の込め棒で押し込む。次に砂または粘土を発破孔の口元まで押し込む。これを込物といい、発破時の粉塵(ふんじん)および硝煙を防止するため爆薬に接して水を満たしたビニル袋(水袋)を込物として使用することもある。込物は発破効果を高め、炭層発破ではガス・炭塵爆発を防止するために行う。発破の点火には、工業雷管に導火線をつけライターなどで点火する導火線発破と、電気雷管の脚線を発破母線を経由して発破器につなぎ所定の電流で点火する電気発破とがある。

[房村信雄]

種々の発破法

坑道掘進の切羽(きりは)面などでは、その中心部に数本の発破孔を特殊な配置で設け、この部分を最初に発破する。これを心抜(しんぬき)発破という。次にその周囲部分に配置した発破孔の発破を順次行って全面の発破を完了する。このように数発ずつ順次発破する方法を段発発破といい、導火線発破では導火線の長さで段発間隔を調整し、電気発破では発火時間の異なる数段の遅発雷管またはミリセコンド雷管を用いる。後者を用いたものをミリセコンド発破という。多数の発破孔を同時に爆発させる方法を斉発発破、山腹などに坑道を掘進して坑室を設け、多量の爆薬を装填して爆発させる大規模発破を坑道発破または坑室発破、5~10メートル以上の長い発破孔によるものを長孔発破、坑道掘進で周壁の仕上り面が滑らかになるように配慮して行う発破をスムーズブラスティングという。発破は、被破壊物の物性、爆薬の種類、発破方法などによって、単位量の爆砕に必要な爆薬量がほぼ一定している。これを標準装薬といい、爆薬量が多すぎるとき過装薬、少なすぎるとき弱装薬という。標準装薬ではないときは大塊を生じやすく、これに対して二次発破により小割(こわり)しなければならないことがある。この種の小割発破では発破孔を設けず大塊上に爆薬を置き、粘土などで覆って爆砕することもある。これを貼付(はりつけ)発破という。

[房村信雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「発破」の意味・わかりやすい解説

発破【はっぱ】

鉱山,採石,土木工事その他における岩石などの爆破作業。削岩機などで掘った穴の中や,岩石表面に置いた火薬を爆発させる。岩石の空気に接する面(自由面という)が多いほど爆破能率がよい。坑内・坑外の別,岩石の種類,爆破の規模などにより,階段発破,長孔発破,ミリセコンド発破,小割発破など多くの方法があり,火薬もダイナマイト硝安油剤爆薬カーリットなどが適宜選択使用される。→爆破薬

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発破」の意味・わかりやすい解説

発破
はっぱ
blasting

鉱山,炭鉱,土木工事などで,爆薬を爆発させ,その力によって,岩石などを破壊すること。削岩機などで岩石に発破孔をあけ,雷管を取付けた爆薬を装填,その上に粘土などで栓をし,導火線や電気で雷管を起爆させ,その力で爆薬を爆発させる。爆破能率は空気に接する自由面の数が多い対象物ほど効率は高い。いろいろの種類があり,発破の目的や場所に適した方法がとられている。坑道やトンネルの岩石面に掘削の手がかりを造る心抜き発破,装薬孔の周囲に空孔を造り自由面効果を求めるバーンカットのほか,ミリセコンド発破,張付発破などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の発破の言及

【炭鉱】より

…坑道のうち,岩石中に設けられるものを岩石坑道,炭層中に設けられるものを沿層坑道という。坑道掘進は削岩機で孔をうがち,その中に爆薬を装てん(塡)して爆破するが,これを発破という。破砕された岩石や石炭は積込機や手積みで鉱車に積み込まれ,坑外に搬出される。…

※「発破」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android