発煙硝酸(読み)はつえんしょうさん(英語表記)fuming nitric acid

精選版 日本国語大辞典 「発煙硝酸」の意味・読み・例文・類語

はつえん‐しょうさん ‥セウサン【発煙硝酸】

〘名〙 二酸化窒素を多量に含む濃硝酸赤褐色透明な液体で、空気中で赤褐色の二酸化窒素の蒸気を発生する。強酸化剤有機物の酸化や分析などに用いられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「発煙硝酸」の意味・読み・例文・類語

はつえん‐しょうさん〔‐セウサン〕【発煙硝酸】

二酸化窒素を多量に含む濃硝酸常温で二酸化窒素の赤褐色の煙を出す。酸化力がきわめて強く、酸化剤ニトロ化剤などとして利用

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「発煙硝酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硝酸
はつえんしょうさん
fuming nitric acid

二酸化窒素を含む濃硝酸溶液。空気中で黄褐色の二酸化窒素NO2気体を発生するのでこの名がある。濃硝酸に二酸化窒素を加圧作用させるか、濃硝酸に有機還元剤を作用させてつくる。赤褐色の透明な液体。NO2含量7.5%の比重1.526(20℃)、12.7%の比重1.544(20℃)。酸化力がきわめて強く、ほとんどの金属を腐食し、木材、綿などをはじめとして多くの有機物と接触すると燃焼する。硫化水素ヨウ化水素は発火して酸化され、塩素酸カリウム過塩素酸塩となる。酸化剤やニトロ化剤として有機合成医薬品染料の合成に使われる。ロケットの推進薬となる。また、硝酸ストロンチウムの発煙硝酸に対する溶解度が小さいことから、カルシウムストロンチウムの分離定量に利用される。皮膚、眼(め)、粘膜などに触れると激しいやけどを生じる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「発煙硝酸」の解説

発煙硝酸
ハツエンショウサン
fuming nitric acid

二酸化窒素NO2を多量に含む濃硝酸.濃硝酸にホルムアルデヒドなどの有機性還元剤を少量加えてつくるか,NO2を加圧溶解してつくる.密度1.48~1.54 g cm-3.赤褐色の透明な液体.86% 以上の硝酸HNO3を含む.酸化作用のいちじるしい赤色のものを赤色発煙硝酸,ニトロ化する能力の強い高濃度の硝酸を白色発煙硝酸とよぶ.酸化剤,ニトロ化剤として有機合成,医薬品,染料合成に用いる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発煙硝酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硝酸
はつえんしょうさん
fuming nitric acid

普通の濃硝酸に,さらに二酸化窒素を溶かしたもの。密度は遊離二酸化窒素含有量とともに増減する。黄色ないし赤褐色の透明な液体で,発煙性。比重 1.48~1.54。酸化力が強く,腐食性が大。酸化剤,ニトロ化剤として重要である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「発煙硝酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硝酸【はつえんしょうさん】

二酸化窒素NO2を多量に含む濃硝酸。赤褐色透明な液体。比重1.48〜1.54。酸化力がきわめて強く,空気中では褐色のNO2ガスを発生する。ニトロ化剤,酸化剤。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「発煙硝酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硝酸 (はつえんしょうさん)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の発煙硝酸の言及

【硝酸】より

…反応式は次のとおりである。濃硝酸にNO2がさらに溶け込んでいるものを発煙硝酸という。
[用途]
 硝酸は強酸であり,酸化剤として用いられるほか,硝酸塩(工業用硝安など),ニトロ化合物(ニトログリセリン,ニトロセルロースなど),染料中間物,合成繊維(アクリロニトリル系),火薬,爆薬の原料,硝酸性窒素を含む窒素肥料または複合肥料の原料,めっき,酸洗用などの用途がある。…

※「発煙硝酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android