発がん性および抗がん性を有する植物毒(読み)はつがんせいおよびこうがんせいをゆうするしょくぶつどく(英語表記)Carcinogenic or carcinostatic plant toxins

六訂版 家庭医学大全科 の解説

発がん性および抗がん性を有する植物毒
はつがんせいおよびこうがんせいをゆうするしょくぶつどく
Carcinogenic or carcinostatic plant toxins
(食中毒)

 発がん性物質の代表として、TPAという有名な化合物があげられます。

巴豆(はず)

 トウダイグサ科植物の種子で、クロトン油巴豆油(はずゆ))の原料にされます。クロトン油は発がん性のジテルペンエステルであるTPAを含み、皮膚の発がんを促進します。

 クロトン油は最も激烈な下剤で、1滴内服しただけで口腔や胃の粘膜に灼熱感(しゃくねつかん)や嘔吐を起こし、やがて激しい腹痛を伴って下痢を起こします。クロトン油を外用すると皮膚刺激作用で発赤を起こし、膿疱(のうほう)壊死(えし)に至ります。工芸品などの制作にクロトン油を常用しているところでは、皮膚がんが多く発生しています。

 トウダイグサ科の植物は粘液が多く、そのなかに発がん性のジテルペン系化合物を含んでいることがあります。ナツトウダイ、ヒロハタイゲキなども毒性が強い植物です。

②ソテツ

 ソテツ科のこの植物に含まれるアゾキシ配糖体サイカシンは、β(ベータ)­グルコシダーゼによって加水分解されてジアゾメタンを生じ、このジアゾメタンがアルキル化剤として作用し、発がんさせます。

③ワラビ

 ウラボシ科ワラビは、湯通しをしないで食べると中毒を起こします。ノルセスキテルペン配糖体のブタキロシドが毒性本体であり、発がん性を示します。

④毒性が強く抗がん薬が開発された植物

 すでに臨床で用いられているニチニチソウビンカアルカロイドが有名です。インドール系のビンクリスチンビンブラスチンを含み、白血病性のがん(血液のがん)に有効です。

 ポドフィルム根に含まれるポドフィロトキシンリグナン一種で、抗がん活性も強いのですが、副作用も強く出ます。

 また、イチイの成分であるタキソールおよびタキソテレはジテルペン系の化合物で、卵巣がんに有効とのことですでに臨床に用いられています。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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