療育手帳(読み)りょういくてちょう

精選版 日本国語大辞典 「療育手帳」の意味・読み・例文・類語

りょういく‐てちょう レウイクテチャウ【療育手帳】

〘名〙 知的障害者が一貫した指導と必要な援助を受けられるよう、都道府県知事が発行する手帳通称みどりの手帳」。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「療育手帳」の意味・わかりやすい解説

療育手帳
りょういくてちょう

知的障害と判定された人を対象に、都道府県知事または政令指定都市市長から交付される手帳。知的障害児・者に対する一貫した指導や相談を通じて、各種の援助措置を受けやすくすることが目的である。1973年(昭和48)に厚生省(現、厚生労働省)によって策定された技術的助言ガイドライン)に基づき、各都道府県によって療育手帳制度の実施要綱が定められた。地域によって別称を併記できるため、愛の手帳(東京都)、みどりの手帳(埼玉県)などの名称でよぶ自治体もある。2011年(平成23)における手帳所持者数は、65歳未満が55万9800人(男性32万2900人、女性23万6900人)、65歳以上が6万1900人(男性3万1900人、女性2万9000人)、年齢不詳の人が1000人。

 発行の際は、交付対象者が市町村窓口に申請し、18歳未満は児童相談所、それ以上の人は知的障害者更生相談所によって、知的障害の程度などが判定される。障害の判定は、知的障害の程度と生活における行動面から行われ、具体的な基準区分は自治体によって若干異なる場合がある。一般的な区分としては、重度(A)とそれ以外に分けられる。重度(A)は、以下にあげる(1)または(2)のいずれかに該当する者である。(1)知能指数がおおむね35以下で、食事や着脱衣、排便および洗面などの日常生活の介助を必要とする者、あるいは異食、興奮などの問題行動を有する者。(2)知能指数がおおむね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由などを有する者。また、上記の重度(A)に該当しない者は、それ以外として区分される。障害の程度は時間の経過などによって変化が見込まれるため、原則として2年ごとに再判定を受ける必要がある。

 療育手帳の交付を受けることで、国や地方、企業、団体などによって設けられた援助措置が受けられる。サービスの内容は各自治体によって異なるが、そのおもなものとしては、特別児童扶養手当、心身障害者扶養共済、国税および地方税の諸控除や減免、公営住宅の優先入居、日常生活用具給付、NHK受信料の減免、JRや航空旅客運賃の割引、生活保護の障害者加算、生活福祉資金貸付、携帯電話使用料の割引、公共施設の利用料割引などがある。

 近年は、知的障害を伴わない高機能自閉症や、コミュニケーションがうまくとれないアスペルガー症候群など発達障害の人が療育手帳を申請するケースが増えているが、その際、知能指数の高さが判定に影響して交付されないケースが問題になっている。このようなケースを考慮して基準を見直すか、別の手帳制度を設けることが求められている。

[編集部 2016年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「療育手帳」の意味・わかりやすい解説

療育手帳
りょういくてちょう

知的障害児および知的障害者を対象に都道府県知事が交付する障害者手帳児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害と判定された場合に受けることができる。一貫した指導相談を実施し,各種援護措置を受けやすくすることを目的とする。特別児童扶養手当の支給,ホームヘルパーの訪問援助,日常生活用具の給付などの福祉サービスや所得税・地方税の控除など税法上の優遇措置の適用を受ける際に提示が求められる。障害の程度により,身体障害者手帳を有する身体障害との重複障害を含めて,最重度~中等度の知的障害の場合は A1,A2a,A2b,A3,中等度・軽度の場合は B1,B2と区分されることが多い。1973年に厚生省から通知された療育手帳制度要綱に基づき,各自治体ごとに指導がなされた。判定方法や区分は全国共通ではなく名称や手続きなども異なる場合があるが,他県で用いることに支障はない。

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知恵蔵mini 「療育手帳」の解説

療育手帳

精神の発達遅延がある人に交付される手帳の一般名。知的障害児(18歳未満)及び知的障害者が、福祉サービスや援護措置を受ける時に必要となる。1973年に厚生省(現厚生労働省)が通知した「療育手帳制度の実施について」に基づき、各都道府県もしくは政令指定都市が資格判定と手帳の発行を行なう。そのため、地域によって障害者区分や申請の流れなどが異なったり、「みどりの手帳」「愛の手帳」など名前が異なったりする場合がある。療育手帳発行のための資格判定は、各地方の児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所が行い、原則として2年ごとに再判定が必要。手帳の交付を受けた人は、障害者区分に応じて身体介護などの福祉サービス・障害年金・各種手当てを受けることができ、また税金控除・医療費の助成・公共料金の割引などの制度を利用できる。

(2014-9-26)

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