瘢痕(読み)はんこん

精選版 日本国語大辞典 「瘢痕」の意味・読み・例文・類語

はん‐こん【瘢痕】

〘名〙
切り傷やけど・潰瘍などが治ったあとに残るきずあと。瘡痕。〔医語類聚(1872)〕 〔趙壱‐刺世疾邪賦〕
② 心に受けた痛手などのあと。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉須永の話「二人共後悔の瘢痕(ハンコン)を遺さなければ済まない瘡を受けたなら」

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デジタル大辞泉 「瘢痕」の意味・読み・例文・類語

はん‐こん【×瘢痕】

切り傷・火傷やけど潰瘍かいようなどが治ったあとに残る傷あと。

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百科事典マイペディア 「瘢痕」の意味・わかりやすい解説

瘢痕【はんこん】

いわゆる〈傷あと〉のことで,肉芽組織が繊維化したもの。収縮する傾向があり,このため消化管などでは狭窄を呈したり,皮膚では美容上の問題を起こしたりする。腹部手術創では,腹圧のため瘢痕部が逆に伸展してヘルニアを形成することもある。皮膚の瘢痕には時に植皮術を行って目立たなくさせる。→ケロイド
→関連項目かさぶた梗塞水痘天然痘にきび発疹皮膚癌やけどよこねリウマチ結節

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「瘢痕」の意味・わかりやすい解説

瘢痕
はんこん

熱傷(やけど)、切り傷、交通事故などの外傷あるいは皮膚病によって、真皮ないし皮下組織に達する組織欠損が生じたあとの皮膚に肉芽組織ができ、その上を表皮が覆って治癒した状態をいう。形態上から、扁平(へんぺい)な瘢痕、盛り上がっている瘢痕(ケロイド)、ひきつれ(拘縮)を生じて変形や機能障害をおこしている瘢痕などに分けられる。組織学的には表皮は平坦(へいたん)化し、真皮には波状を呈する太い膠原(こうげん)線維がみられ、高度のものでは毛包や汗腺(かんせん)などの皮膚付属器が失われている。瘢痕形成術に際しては、ほとんどの瘢痕は10年くらいの間には自然にある程度目だたなくなる傾向があるため、やたらに手術を急ぐことは好ましくない。小さな瘢痕は切除縫合で治癒する。線状瘢痕では、術後の縫合を1本の直線にするよりは、ジグザグした線になるようにしたほうが傷あとが目だたなく、とくに顔面ではこの方法が用いられる。拘縮を生じている瘢痕には植皮術あるいはZ形成術が用いられる。広範な瘢痕には植皮が行われるが、3、4年もすれば植皮片がその部位になじんで植皮したことがわからなくなる。顔面の各部位に対する理想的な植皮片の選び方の原則は、皮膚の厚さ、皮膚のもっている機能(皮脂腺や汗腺、血管の特性)などを十分考慮することである。すなわち、上下眼瞼(がんけん)(まぶた)には耳の後ろや上腕内側の皮膚が、ほおやあごには鎖骨付近の皮膚が用いられるが、額にはどこの皮膚でもかまわない。

[池田重雄]

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普及版 字通 「瘢痕」の読み・字形・画数・意味

【瘢痕】はんこん

傷あと。〔後漢書、文苑下、趙壱伝〕(世を刺り邪を疾(にく)む賦)好むは則ち皮を鑽(き)りて其の毛を出だし、惡(にく)むは則ち垢を洗ひて其の瘢痕を求む。

字通「瘢」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「瘢痕」の意味・わかりやすい解説

瘢痕
はんこん
scar

外傷が治癒したあと皮膚に残る変性部分をいう。普通,結合組織が多く,細胞や毛細血管は少い。

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世界大百科事典(旧版)内の瘢痕の言及

【発疹】より

…(2)糜爛(びらん)erosion 皮膚の欠損が表皮内にとどまるもので,表皮内水疱が破れたあとのただれた状態をいう。欠損部は表皮が再生して,瘢痕(はんこん)を残すことなく治る。(3)潰瘍ulcer 皮膚の欠損が真皮にまで及ぶもので,治るときには欠損部が肉芽組織により埋められ瘢痕を残す。…

※「瘢痕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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