症状によって手術を行なう(読み)しょうじょうによってしゅじゅつをおこなう

家庭医学館 の解説

しょうじょうによってしゅじゅつをおこなう【症状によって手術を行なう】

[治療]
 保存療法がおもに行なわれます。大抵はこれで改善しますが、長期にわたるものや症状の強いものには外科的療法を行ないます。症状がⅢ度以上のときには手術が適応されます。
●保存療法
 症状が軽度の場合は、薬物療法を行ない、日常生活の注意を守り経過をみます。たいていは2週間程度で改善されることが多いものです。
 治療薬には坐薬(ざやく)、軟膏(なんこう)、内服剤(ないふくざい)があり、いずれも出血や痛みを抑えるのに有効です。
 坐薬と軟膏には、殺菌剤(さっきんざい)、粘膜収(ねんまくしゅう)れん剤(ざい)、抗炎症薬、鎮痛薬(ちんつうやく)などが含まれているほか肛門を清潔に保つという点でも有効です。坐薬は体温で溶けるようになっています。軟膏、坐薬とも肛門から挿入(そうにゅう)して使います。最近は患部に長時間とどまり、効果の高いものも出ています。
 内服剤には、炎症をしずめる、毛細血管(もうさいけっかん)からの分泌(ぶんぴつ)を抑える、むくみをとる、傷の治りをよくするなどの作用があります。
 日常生活の注意として、過度の飲酒香辛料(こうしんりょう)などの刺激物の摂取(せっしゅ)、便秘(べんぴ)や下痢げり)、長時間の立ち続け、運転などで座り続けることなどが、痔核を悪化させますので避けるようにします。
 炎症にともなうむくみや、肛門に便が付着しておこる肛門括約筋(こうもんかつやくきん)の緊張をやわらげるために、肛門を清潔にしておくことがたいせつです。
 坐浴(ざよく)や入浴は、血液循環をよくして静脈のうっ血を改善し、症状をやわらげる効果があります。毎日欠かさずに行なうようにしましょう。
 症状が強くなってつらいときは、できるだけ安静にしていることが必要です。横になることが最適です。
 血栓性外痔核では、ゴルフ、登山などのスポーツも、悪化させる要因ですので、控えるようにします。
●外科的療法
 外科的療法には、つぎのようないろいろな方法がありますが、痔核の種類や程度によって適している治療法がちがってきます。
 治療は、直腸・肛門の病気を専門とする医師のいる病院や医院で受けたほうがよいでしょう。
●輪(わ)ゴム結紮法(けっさつほう)
 内痔核(とくにⅡ、Ⅲ度の内痔核)に用いられる治療法です。
 腫れ上がった痔核を、てるてる坊主のくびをくくるように輪ゴムを装着した機器でしばり、痔核に血液を通わせないようにして腐らせ、落としてしまう治療法です。内痔核ができる部位には知覚神経がないので、きつくしばっても痛みはありません。
●硬化(こうか)療法
 内痔核上縁の粘膜下に硬化剤を注入して静脈を固めてしまう治療法で、中程度の内痔核であれば、1~2年ぐらいは固めておく効果があります。Ⅰ、Ⅱ度および、手術ができないⅢ度の内痔核に適応されます。
●手術療法
 痔核を切除してしまう治療法で、どんなに小さな痔核でも確実に治ります。
 痔核に血液を送っている動脈をしばり、痔核を舟型に切除する結紮切除法(けっさつせつじょほう)を行ないます。
◎便通を整えるのが基本
[予防]
 痔核は、立って歩き、作業をする人間の宿命ともいえる病気で、根本的な予防法はありません。しかし、静脈叢のうっ血をおこさなければ痔核はおこらないわけで、そのためには、便通を整えることが第一です。
 とくに、高齢になると、腹圧(ふくあつ)をかけるのがへたになり、反応がにぶくなっているために、たまった便が直腸壁をノックしても便意がおこらず、便秘になることが多いのです。便意を感じなくても、朝食をとって20~30分たったら、必ずトイレに行く習慣をつけるようにしましょう。
 また、頻繁(ひんぱん)に下痢をしても痔核が発生しやすくなります。野菜などの食物繊維を摂取したり、刺激物を控えるなど、食生活に気をつけましょう。
 肛門を清潔に保つことは、痔核にかぎらず、あらゆる肛門の病気の予防にたいせつなことです。それには、毎日の入浴のほか、温水の出る洗浄器を利用するとよいでしょう(コラム「肛門洗浄器の効用」)。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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