病原性大腸菌(読み)ビョウゲンセイダイチョウキン(英語表記)pathogenic E. coli

デジタル大辞泉 「病原性大腸菌」の意味・読み・例文・類語

びょうげんせい‐だいちょうきん〔ビヤウゲンセイダイチヤウキン〕【病原性大腸菌】

大腸菌のうち病原性を示すもの。飲食物排泄物などによって媒介され人や動物に感染し、下痢などを引き起こす。→オーいちごなな(O157)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「病原性大腸菌」の意味・わかりやすい解説

病原性大腸菌
びょうげんせいだいちょうきん
pathogenic E. coli

大腸菌のなかでも下痢や腸炎などの原因となるものを特に病原性大腸菌という。グラム陰性で嫌気性の桿菌ブドウ糖を発酵によって分解して酸とガスをつくり,大多数の菌は乳糖を分解する。O,KおよびH抗原によって血清型で分けられる。腸管の粘膜細胞を破壊する腸管侵襲性大腸菌,腸内で毒素を産生する腸管毒素原性大腸菌などがある。通常,大腸菌はヒトや動物の腸内に存在する細菌であるが,なかにはO-157のようにベロ毒素をつくりだし,腹痛高熱嘔吐を引き起こすものもある。また発病後,1~2日後から鮮血を伴う出血性下痢となることもあるが,多くは発病後4~8日ほどで治癒する。まれに乳児幼児小児や高齢者では重症化し,溶血性尿毒症症候群となり死にいたることがある。 1982年,アメリカで起きたハンバーガー食中毒事件で初めて検出された腸管出血性大腸菌もその一種である。 1990年,埼玉県浦和市 (現さいたま市) の幼稚園で発生した集団下痢では,この菌による溶血性尿毒症症候群で園児2人が死亡した。このケースでは飲料用井戸水から原因菌が検出されたが,多くは食物から感染する。

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百科事典マイペディア 「病原性大腸菌」の意味・わかりやすい解説

病原性大腸菌【びょうげんせいだいちょうきん】

生化学的性質および学名大腸菌だが,食中毒を引き起こす菌種をいう。腸管侵襲性大腸菌,腸管毒素原性大腸菌,病原血清型大腸菌,腸管出血性大腸菌の4種類に大別される。発症メカニズム症状は多少異なるが,いずれも飲食物によって媒介され,通常,下痢,発熱,ときに血便を見る。
→関連項目O-157食中毒

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知恵蔵 「病原性大腸菌」の解説

病原性大腸菌

本来、大腸菌は腸管の中に生息していて、病気を起こすことはない。しかし、特に病原性が強くて下痢症の原因となるものがあり、これを下痢原性大腸菌という。さらにこの中には、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌がある。1996年夏、腸管出血性大腸菌O157による感染症が流行し、死者が出た。腸管出血性大腸菌に感染すると、菌が出すベロ毒素によって、血の混ざった下痢便が見られる。ウシ、ブタなどが保菌しており、その糞便などに汚染された肉類や、2次汚染された食品を介してヒトに感染するものと思われる。幼児や高齢者が発病しやすい。溶血性尿毒症症候群や脳症になると、致命的になることもある。この菌は75℃の熱で数分間で死滅するので、食品を十分加熱することで予防できる。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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