(読み)つかれる

精選版 日本国語大辞典 「疲」の意味・読み・例文・類語

つか・れる【疲】

〘自ラ下一〙 つか・る 〘自ラ下二〙
体力が弱る。くたびれる。気力が衰える。
万葉(8C後)二・一六四「見まく欲り吾がする君も有らなくに何しか来けむ馬疲(つかるる)に」
※霊異記(810‐824)中「其の鬼、走り疲(ツカレニテ)、祭の食を見て(おもね)りて就きて、受く。〈国会図書館本訓釈 疲 都加礼爾弖〉」
② 飢える。
書紀(720)景行四〇年是歳(北野本訓)「峯(みね)に逮(およ)いて飢(ツカレ)たまふ」
③ 長く使ったために、その物の質や働きが低下する。くたびれる。「疲れた油」
[語誌](1)「万葉集」「古事記」に「羸」「疲」「労」を用いてツカルを表記したと推定される例があり、病気老い、飢え、疲労などによって人や生き物が衰弱することを表現している。これに対してオトロフは対象や程度を選ばないで用いられる。
(2)平安時代では漢文訓読語が上代の意味用法をほぼ引き継ぐのに対して、同じ意味領域を和文ではヨワル、コウズ、オトロフで表現し、ツカルは散見する程度である。
(3)中世以降はヨワル、ツカル、オトロフが用いられるが、病気や老いによるツカルは姿を消し、ほぼ現在のツカレルに等しくなったと推定される。

つかれ【疲】

〘名〙 (動詞「つかれる(疲)」の連用形名詞化)
① 疲れること。くたびれること。疲労。
散木奇歌集(1128頃)冬「夕まぐれはねもつかれにたつ鳥を草とる鷹にまかせてぞみる」
浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中「旅のつかれをはらそうぎゃてい」
② 弱ること。困窮すること。疲弊すること。また、飢えること。
太平記(14C後)三八「三子の飢を扶(たすけ)んと欲する也と、委(くはし)身上の羸(ツカレ)を侘て」
掛物に多数の小じわが生じていること。
④ 固体材料に弾性限界より小さな力を加えても、それが繰り返し行なわれると、ついには破壊する現象。力の一部により結晶内部の分子原子配列が乱れ、その乱れが蓄積されることによって起こる。疲労。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

つから・す【疲】

〘他サ四〙 疲れさせる。つからかす。
※文明本節用集(室町中)「労気 キヲツカラス」
日葡辞書(1603‐04)「セイ〈略〉セイヲ tçucarasu(ツカラス)

つからし【疲】

〘形シク〙 (動詞「つかれる(疲)」の形容詞化) 疲れた状態である。疲れている。
※続日本紀‐神護景雲三年(769)一〇月一日・宣命「然(さて)朕は御身都可良之久(ツカラシク)おほましますによりて」

た・る【疲】

〘自ラ四〙 つかれる。くたびれる。
今昔(1120頃か)一六「歩び極(こうじ)て只垂に垂居たるを」

づかれ【疲】

語素〙 (動詞「つかれる(疲)」の連用形から) 人の動作を表わす類の名詞について、そのことのための疲れ、また、それによって出た疲れの意を示す。「旅行づかれ」「看病づかれ」「気づかれ」など。

つか・る【疲】

〘自ラ下二〙 ⇒つかれる(疲)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「疲」の意味・読み・例文・類語

ひ【疲】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]つかれる つからす
体力や気力がなくなってぐったりとする。つかれる。「疲弊疲労

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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