(読み)うたがう

精選版 日本国語大辞典 「疑」の意味・読み・例文・類語

うたが・う うたがふ【疑】

〘他ワ五(ハ四)〙
① はっきりしない事柄について思いまどう。本当にそうだろうか、これからどうなるだろうか、これこれではなかろうかなどと思う。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「汝、疑(うたがヒて)(おも)ふことを懐くこと勿(ま)な」
源氏(1001‐14頃)明石「夢の中にも父御門の御をしへありつれば、また何事かうたがはむとおぼして」
物事を悪い方に考える。怪しいと思う。うたぐる。
古事記(712)下「吾(あ)は汝(いまし)(みこと)の若し墨江中王と同じ心ならむかと疑ひつ」
※源氏(1001‐14頃)梅枝「あながちに、人の心をもうたがふなれ」
③ (「目を疑う」「耳を疑う」などの形で) 見たこと聞いたことなどに疑問を持つ。→みみ(耳)を疑うめ(目)を疑う

うたがわし・い うたがはしい【疑】

〘形口〙 うたがはし 〘形シク〙 疑いたい気持である。本当にそうだろうか、これからそうなるだろうか、だいじょうぶだろうか、おかしいのではないかなどと感じているさまにいう。あやしい。うたつがわし
書紀(720)神代下(水戸本訓)「天孫(あめみま)の曰はく、心に疑(うたがはシ)(か)れ嘲る」
伊勢物語(10C前)九〇「限りなくうれしく、又うたがはしかりければ」
うたがわし‐げ
〘形動〙
うたがわし‐さ
〘名〙

ぎ【疑】

〘名〙
※盤珪禅師法語(1730)「今時の人、古人も疑ふた程にとて、疑を生るは疑のまね也。実の疑にあらず」
② 確かでないと思うこと。あやしむこと。うたがい。語素として用いるのが普通である。
学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉一五「信の世界に偽詐多く、疑の世界に真理多し」 〔戦国策‐秦策・武王

うたがい うたがひ【疑】

〘名〙 (動詞「うたがう(疑)」の連用形名詞化) はっきりしない事柄について思いまどうこと。また、よくないことがあるのではないかと思うこと。不審。疑念。あやしみ。
※書紀(720)持統称制前(北野本訓)「朝(みかど)猜忌(ウタガヒ)を避(さ)りたまふ」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「世のうたがひ負ひ給ひぬべくものし給へば」

うたぐり【疑】

〘名〙 (動詞「うたぐる(疑)」の連用形の名詞化) 「うたがい(疑)」のやや俗な言い方。
※俳諧・うたたね(1694)「おうたぐり身は空解の帯の咎」
人情本春色梅児誉美(1832‐33)三「ふしぎなわけでうたぐりを請(うけ)るものだ」

うたぐ・る【疑】

〘他ラ五(四)〙 「うたがう(疑)」のやや俗な言い方。
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)一二月一五日「喜左衛門申分は、度々我をうたくり候と」
※人情本・英対暖語(1838)初「まだ疑ぐってお在(いで)なさるのかねへ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「疑」の意味・読み・例文・類語

ぎ【疑】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]うたがう
学習漢字]6年
ぐずぐずしてためらう。「遅疑狐疑逡巡こぎしゅんじゅん
疑わしく思う。「疑義疑念疑問疑惑疑心暗鬼懐疑嫌疑猜疑さいぎ質疑容疑半信半疑

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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